好きな人と共有したいこと|恋愛ショートショート
SNSが嫌いな私。
それでも好きな人と共有したいことがある。
あなたとだけは。
日曜日の朝。
涼しい気候の中、私は鼻歌混じりで散歩をしていた。
朝の透明な空気と世界の始まりを告げる鳥のさえずりが好きなんだ。
でも、最高の気分のはずだけど、少しだけすぐれない。
ピコンピコンと、さっきからスマホが震えているから。
私はSNSが苦手だ。
自分のどうでも良いことを人と共有する意味がわからない。
嬉しいことも悲しいことも、自分と大切な人だけが知っていれば十分。
付き合いで入れてるSNSで友達が、おはようとか写真を投稿する時間。
……どうでもいい。
友達は好きなんだけど、だからこそ会ったり通話したりしたいな。
その時、線の雨が降り出した。
空は雲一つ無い晴天。
狐の嫁入りってやつかな?
寒くなるほどではないかと私は散歩を続けた。
青空と雨。
こんな素敵なこと、文字や写真じゃ伝えきれない。
私の鼻歌が少しだけ大きくなった。
雨は予想通り大地を湿らすくらいで止んだ。
楽しかっただけにつまらないなと思ってしまう。
けど、空はかわりに大きなプレゼントをくれた。
「うわぁ」
驚かせたことを謝るように、空に大きな虹がかかっていた。
世界の端から端をつなぐ色は私の心を叩いた。
さすがにこれは共有したい。
焦ってスマホを取り出した。
朝早く、私は歯を磨いていた。
外からは雨の音。
天気予報アプリは晴れとなってるし通り雨かな。
友達からの通知に適当にイイネをつけて顔を洗う。
人と会う予定はないし化粧はやめておく。
鏡のつまらなさそうな自分をちょっと嫌いになってから部屋に戻ると、友人から着信が。
嬉しいことがあると電話してくる友人だ。
「おはよ。え?外?ちょっとまって」
カーテンを開けると大きな七色の橋。
「うん、綺麗だね。うん、そうだね。教えてくれてありがとうね」
通話を終了させ、一枚写真を撮った。
AIに補正され、本物より鮮やかに切り取られた偽物の虹。
本物のほうがきれい。
ふと自撮りをしてみると、つまらなそうな自分はいなかった。
ぼそっと届かないお礼をあの娘に言った。
短い電話が終わった。
嬉しいことがあると共有したくなる大切な人。
私が綺麗だと感動したものを見てほしい。
だからわがままを言うと、できるだけ近くにいてくれたら嬉しい。
でもそれはまだ贅沢だから、こうやって繋がりを求めてる。
嬉しいを、幸せを共有したい。
「うん、これが私のSNSだね」
結局私も繋がりを求めてることがくだらなくて、声に出して笑って散歩を続けた。
君だけへの一方的な通知だからこれからもハートをつけてほしい。




