表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/38

私の寿命を悪魔に捧げる|百合ファンタジー

私は悪魔と寿命を共有している。


悪魔と付き合っている。

そんなこと言うと、おすすめの病院に連れていかれ、良く効くお薬を処方されるだろう。


「まあでも事実だし」


宙に浮かびながらポテチを食べつつ漫画を読むコスプレ女。

こいつを悪魔と言っても、おすすめの病院に――以下略。


「ちょっ、カス落とさないでよ」

「こまかいのー。余のようにおおらかになれ」


背中の翼が動くたびに埃も舞っていた。


「あなたは雑なのよ」


ここは神社の社務所であり、私は15代目の跡継ぎである。

なんでも太古に封印された、良くないものを抑え込むために作られたらしい。

それは古に人の魂を喰らい、都を滅ぼしかけたそうな。


「……都を?これが?」

「それは前に説明したじゃろが!」


大きく開けられた口から覗く尖った歯だけが、こいつを魔なる者と知らしめる証拠。

こっちは深夜まで残業をしているというのに、ダラダラとしているのが腹が立つ。


「でもこれ当たると痛いのよね」


歯を掴んで引っ張る。


「ちょ!おま!いたっ!」


悪魔が空中でもんどりうつ。

羽ばたいて部屋の隅、天井付近まで逃げていく。


「なんじゃお前!昨日引っかけて血が出たの怒っとるのか?」


大きく振りかぶって投擲。

とんでもない音を立てて木材が壁にぶつかる。


大麻(おおぬさ)を投げるやつがおるか!罰当たりめ!」

「罰当たり?あなただけには言われたくないわ」


私はなんでこんなやつを家にいることを許したのだろう。

悪魔は人から魂、すなわち寿命を吸わないと力どころか命の維持すらできないらしい。

長年封じ込められていたこいつは栄養が枯渇していて、人間以下のか弱さで、ついつい可哀そうと思ってしまった。


「25年物を貰ってやったのじゃからむしろ感謝を……」


手の届かぬ天井の角まで逃げて安心したのだろう。

絶対触れてはいけぬ事を口走った。

おもむろに白衣の胸元に手を差し込む。

引き抜いた手には、日本では場違いな小型拳銃が握られていた。

それは火こそ吹かなかったものの、大きなガス音を立て球を発射する。


「御神木の枝から作った特別な弾を使ってるの。あなたにはよく効くかなと思って」

「痛いってものじゃねえ!待て!まてええぇぇぇ……」


2発ほどあたった悪魔がボトリと落ちてきた。


「祓われちゃう。余祓われちゃうよぉ」


墜落した悪魔は全身から煙を上げながら痙攣をしていた。

人には言っちゃだめなことがある。

悪魔に理解させる労力に気疲れをした。

こいつと出会ったのは20年近く前の、まだ小学校にも通っていないころ。

突如目の前に現れたのだが、封印が弱くなっていたとかそんな話らしい。

魂を寄こせと襲い掛かってきたので、全力でグーパンチしたのをよく覚えている。

それ以降20年以上の付き合いだ。

早くに両親を亡くしてしまったので、こいつが人生で最も長く付き合っている生物かと思うと、人生リセットボタンを押したくなりそうだ。


「まったく。ほら今日のご飯よ」


起き上がらせ唇を重ねる。

薄っすらと喪失する私の深いところにある、寿命。


「別に手を合わせるだけで良いのにお主も好きよの」


ドカン。


「弾はまだまだあるのよ?」

「……撃つ前に言わぬか。家出するぞ」


腹を押さえ、涙を浮かべて見上げてくる悪魔。


「私が命をあげる代わりに他の人は襲わない。約束でしょ?」

「……その約束は自分の命を削ってまで守るものかの」


手を差し伸べて立ち上がらせる。


「私の命を半分こして一緒に死んでくれる、それも約束でしょ」


ご先祖様が守ってきたこのお社を私の代で潰すことだけが申し訳なかった。

それにあなたが人を襲うのなら、私は敵にならなければならない。


「何千年生きても人間はよくわからん」


終わらない仕事を明日に回そうと棚にしまい込む。


「自分の命で愛する人を助けられる。それだけよ」


こいつは両親が死んだ私を不憫に思ったのか、共にい続けてくれた

母のように、姉のように、恋人のように。

お腹がすいて苦しかっただろうに誰も襲わず。

きっと私が嫌がるから。

それだけで十分すぎるほど守るに値する。


「あ、でも私より1分だけ早く死んでほしいな」

「なんじゃその微妙なのは」


あなたには理解できないわよと笑う。


「悪魔の死に顔なんてそう見れるものじゃないしね」

「言ってることはお主が悪魔じゃが?」


意味がわからず呆れているようだったので、鼻で笑ってスルーした。

だってあなたは私の死に顔なんて見れないでしょ?

優しいから。


それにそのくらいなら一人ぼっちも我慢できる。私の寿命を悪魔に捧げる|百合ファンタジー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ