おみくじ『待ち人すでに来てます』 (3分で読めるショートショート)
お正月、おみくじを引きながらイチャコラするショートストーリー。
「はえー」
私のおみくじを楽しそうに友達が覗き込んでくる。
3月にある高校受験に向けて、ふたりで初詣に来ていた。
近所の小さな神社だけど、今日だけはたくさんの人で溢れてる。
少しめかしこんだ私と、いつも通りラフな彼女。
いつもの私達。
「大凶なんてほんとにあるんだね。お正月から珍しいものが見れたよ」
ひらひらと自分の大吉を振っている。
嫌味なのかな?
これは嫌味なんだよね?
心配してないよね??
「勉学も悪いか。でもそれは元からだよね?」
良し!喧嘩だな!お正月から殴り合いだね!
てか偏差値そんなに変わらないじゃない!
「しかも恋愛は”待ち人来ず”」
よほど可笑しいのか良く通る声で笑っている。
「でもいいじゃん」
「なによ私にひとりぼっちでいろって?」
違う違うと大きく手を振る。
「私がいるから追加なんていらないよね?」
ばきゅーん。
っと右手を拳銃にして撃つ真似をしてきた。
いやいやいや、いまさらそんな事されてもね?
何年前からって話で。
「……ばか」
私に向かってくる見えない弾を手ではたき落とす。
「ばきゅーん」
今度は左手で撃ってきて命中してしまった。
けらけらと笑ってる。
「ほらほら屋台見に行こうよ。あったかいもの食べよ」
いつものように私の手を取りひっぱっていく。
……手袋ごしなのがもどかしい。
「それともふたりであたため合いたいかな?」
ちょっと不満げな私の顔を見抜いてくるのがなんか腹が立つ。
神様、今度の受験でお願いがあります。
合格するけど発表までちょっと不安になる点数にしてください。
こいつだけ。
「……たこ焼き食べる」
後ろからの呼びかけを無視し、ゆっくりとした歩調で私は歩き出した。