表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/35

40歳の課長と20歳のインターン(3分で読める百合ショートショート)

会社の喫煙室できつめのタバコを浅く吸う。

若いころは肺までしっかり煙を入れていたが、40歳を超えるとさすがにそれもきつくなった。

それでも軽いものに逃げないのは意地か何か。

今日は比較的早く帰れるかなと、机に置いてきた残業を思い出す。

「課長くさいー」

「吸わないなら出ていきたまえインターン君」

「私の名前は君江ですよ」

うちから内定が出ている比較的優秀な女子大生。

3カ月間のインターン生の部下として配属されてきた。

地頭も良くて機転も利かせられる。

5年も会社で学べばきっと貴重な戦力となってくれるはずだ。

ただし、

「この可愛い君江ちゃんといつご飯に行ってくれるんです?」

驚くほど空気は読めない。

「残り1週間のインターンを終わらせて無事大学に返す。それしか考えてないわ」

煙がかからないように吐き出す。

内定が出たからか、黒から戻した明るい髪。

脱色しているのに、なぜあれほどに艶があるのだろう。

メイクも流行りなのか私とはやり方が違う。

ここまで差があると女として嫉妬心すらわかない。

「だいたい年が倍くらい違うオバちゃんと遊んで何が楽しいのよ」

「できる女!って感じで先輩人気ですよ?」

「本当に人気ならとうに結婚してるわ」

体型くらいは気を付けているし、恋愛もそれなりに重ねてきた。

私は誰かと添い遂げる、恐らくそういうことに向いていないのだろうな。

「君みたいに若く素敵な女性が声をかけてくれるのは光栄だけど」

タバコを水バケツに放り捨てる。

「君は年の差というのを軽く考えすぎだ」

「そんなことーー」

煙の臭いがする指を彼女に向けて制止する。

「即答できるという事がその理由だよ」

未来への怖さを知らぬ若さとは、かくも眩しいものだな。

喫煙室の扉に手をかけた。

「君が出世した時には上司として食事くらいはご馳走するよ、お祝いだ」

自分でもわかる嫌味な表情で、

「早く帰りなさい、君江インターン君」

そう告げて残業へと戻った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ