世界樹の始まり方
世界樹っていつから存在するのだろうか。
そんな事を考えている内にできたお話。
小さな小枝だった私は、今ではもうこの世界の無くてはならない大樹に成長していた。
天界で創造主に大事に育まれ、立派な樹になった親樹から引き裂かれてしまった。
創造主の子神である乱暴者のくしゃみ一つで簡単に吹き飛ばされたのだ。
あの小僧は許さない。
とはいえ、どこまで飛ばされてしまったのか分らなくて、私はそのまま暴風に吹き流されてしまい、天界の創造主の下に帰りたくても帰れなくなった。
時空も次元も何もかも飛び越えてしまったのは確実だと思う。
私がいた世界とはまるで違うのだから。
そんなとんでもない体験をしてしまっている私は泣きそうになった。
ていうか、もう泣いているのだけど、小枝なので声がない。
誰か私の存在に気づいて拾ってくれないかな……。
どれくらいの間流されたのか気持ちの中では泣き叫び続けて疲れてしまうほどには時間も経ち、暴風の勢いがなくなってきて、親樹の側を流れていた小川のように、ゆっくりと速度が遅くなってきた。
≪おや……。知らない子がいるね……。どうしたの?≫
誰かが話しかけてきてくれた!
嬉しいなぁ。
私はホッとして声のする方を見た。
けど、誰もいない。
≪そんなことはないよ。僕はいるよ?≫
どこ?
≪ほら。分かったかい?≫
わぁ。
見えない何かに流れから救い出された。
暖かい誰かが私を包んで助けてくれた。
貴方は誰?
≪僕はこの世界の管理者。皆からは神さまって呼ばれているよ≫
神さま!
私は驚いてしまった。
創造主と似たような方が他にもいるなんて……。
≪創造主?≫
そう!
≪僕と同じようなことをしているものが他にもいるんだね。僕も初めて知ったよ≫
私も。
≪ところで君はなぜ泣いていたんだい?≫
私は事の顛末を管理者さまにお話しした。
≪へぇ、そんな世界から君は来たんだね。僕が見つけるまで誰にも会う事がなかったのかい?≫
ずっと一人ぼっちで寂しかった。
私は素直に自分の思いを吐き出す。
≪なら、僕の世界においでよ≫
あ……いいの?
≪遠慮しないで。それともまだどこかに流されていく? 僕は君が望むようにしてあげられるよ≫
是非! お願いします!
私、もう一人ぼっちはイヤなの!
こうして私は管理者さまの世界に行くことになった。
≪まずは、君がどんな場所なら良いのかを一緒に考えよう。君はどんな所にいたのかな?≫
私は、……創造主のお庭に居ました。
≪その庭はどんな所?≫
お庭は優しい光がいつも降り注いでいて、いつも暖かかったです。
そして、創造主と一緒に生き物たちを見守っていました!
≪ふぅむ……。創造主の庭はとても良い環境になっていたんだねぇ。そういうところが良いよねぇ。……似たような場所があったかな?≫
管理者さまが私がどこなら住めるのか考えてくれている。
≪あぁ、あそこはどうだろうか≫
そう言って管理者さまは私をそこに連れて行ってくれた。
そこは見慣れない動物が少数の群を作って穏やかに生活していた。
小高い丘の上に管理者さまは降ろしてくれる。
あぁ、ここはあのお庭の雰囲気に少し似ていると思う。
≪じゃぁ、ここでも良いのかな?≫
はい。
≪そうかい。良かった。では、ここで君は暮らすとよいよ。僕も時々様子を見に来るから、頑張って生きるんだよ≫
分かりました。
≪この場所は生き物が生きる事に適しているんだ。だから君もそうであってほしいし、生き物たちを見守り続けてほしい。あ、そうだ。君に便利な力をプレゼントさせてくれるかい?≫
便利な力?
≪そう。僕の力の一部を君に加護として授けよう≫
加護?
≪そう。聖属性の魔力を君の命の中に授けることにするよ≫
そうしたら何か起きるの?
≪何も。……でも、君の周りに生き物たちが集まってきて、君は寂しい思いはしなくてすむ。……どうだろうか?≫
嬉しい。
一人ぼっちはイヤだもの。
ありがとう!
そうして私は管理者さまから加護をもらって、この場所で生きる事になった。
ある日ぽつんと小高い丘の上に小さな小枝がやってきたかと思えば、その枝は驚くほど速く根を張り、枝を延ばし、幹は太り、葉を広げ、若々しい樹になった。
聖なる魔力を漂わせ、生き物たちの憩いの場所となり、私は寂しいなんて片時も感じる事もなく、日々を過ごしている。
後に大木となって『世界樹』と呼ばれるようになるまでの、まだまだ未熟な私がこの世界にやってきたときのことだ……。
小枝が思っている事なので、とても幼稚な思考。
ふわっとした甘々設定なので、どんな生き物がいるのか……とか、たどり着いた世界がどんな世界なのか……とか、いつものように(?)読者様がイメージして補完してくださるとたいへん助かります。
あわよくば何方か二次創作をしてくださって、しっかりとしたお話を書いてくれたら嬉しいのですが……。
ダメですかね?
丸投げです~。
『男神の涙』を書いてる時に衝動的に思いついて、勢いのままに書き綴りました。
読者様の貴重なお時間を、私の拙い文章で少しでも楽しんでくださったなら幸いです。