【第一章】 第七十話
アスファルトの地面を紅く染められている。その上を一歩、一歩と進めていく。白色の運動靴が紅を踏みつける。
下駄箱へと続く数段の階段を昇り、運動靴を踵で踏んで靴を脱ぎ、下駄箱に揃えて入れた。そして、上履きを履き、教室へと向かった。
教室の戸を開けると、まだ誰もいない。黒板の上にある時計を見ると、七時十五分と示されている。教室の窓の外からはサッカー部や野球部、テニス部の朝練習を開始する挨拶が聞こえてくる。
秋ごろになると、皆部活動の朝練習がないため、朝早くに学校に来る三年生は少なくなる。だが、それでもいつもは数人が教室で高校受験の勉強をしているが、今日は違ったらしい。
俺は背負っていた登校用のリュックサックを机に降ろし、自分の席へと座った。今の俺の席は窓際の一番端の場所であったが、ベランダが邪魔をして校庭の景色は立ち上がらなければ見えることはない。
俺にとってはありがたい構造だった。なるべく校庭で活動をしているサッカー部の姿は見たくない。
あの夏。俺たちサッカー部は高円宮杯の県大会一回戦で全国中学サッカー大会の優勝校と戦い、見事勝利を収めた。その後は順調に勝ち進み、県大会準優勝という結果を残した。惜しい結果となったが、皆の顔は満足げだった。
俺はその光景をスタンドから眺めることしかできなかった。
だが悔しさはない。
自分の机の上に英語の教科書とノートを並べ、俺はひたすら問題集を解いていく。サッカーを忘れるために、勉強に没頭する。
小学生の時に掲げていた夢も
歪んでしまった人間関係も。
外から聞こえる活気ある部活の掛け声も。
全部。全部。全部。
全部忘れて、俺はシャーペンを握り、机にかじりつくように勉強をした。




