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努力の方向性  作者: 鈴ノ本 正秋
第一章 中学サッカー部編
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【第一章】 第六話

俺たち赤ビブスのキックオフで紅白戦が始まった。

渡辺がボールを後ろに蹴り、赤ビブスのボランチがボールを受ける。そのボールの受け方一つでわかった。この味方のボランチの選手は上手い。そして、そのボランチの選手は既に走り出している右サイドハーフの選手の少し前に目掛けて、大きく蹴った。


弧を描くような美しいロングキックは、白ビブスの左に少しだけ空いていたスペースを抜け、見事に右サイドハーフの選手に渡った。


おお、と思わず驚いてしまった。

いきなりあんな狭いところにパスが通るはずがないのだ。そして、それ思ったのは相手の白ビブスの選手も同じ。だからこそ、あの狭いスペースにパスを通すことができたのだと思う。


「俺だ、俺に寄越せ!!」


という渡辺の声がグラウンド内に響き渡ったと同時に、呆気に取られていた全ての選手が白ビブスのゴール前に集まっていく。

だが、流石は渡辺だ。白ビブスの選手たちがボールを持っている右サイドハーフの選手に視線が移った瞬間、裏を取り、誰も見えない左ゴール手前まで駆けて行った。


そして、それを見逃さなかった右サイドハーフの選手が、渡辺を目掛けて大きくボールを蹴り出し、それを受けた渡辺が見事にゴールを決めた。

試合開始からたった数秒のことだった。


「なんだ……今の」


とんでもないトリックプレーでも、とんでもないスーパープレイでもない。ボールに触った三人がやるべきことをしっかりと行っただけ。もし、今のプレイをもう一度やったとしても、白ビブスの選手に簡単に止められるだろう。


だからこそ、この一点には意味があった。


そこからの試合展開は全くの互角だった。不意を突かれたとはいえ、白ビブスの方にも経験者は多くいる。もちろん凌太もそうだ。サイドを駆け上がり、クロスを何本か上げていた。


俺も本職ではないとはいえ、しっかりと仕事ができていたと思う。だが、俺の心の中は靄が掛かったような気分だった。このままセンターバックとして紅白戦に出続けてもいいのだろうか。だが、それを思った刹那に試合終了のホイッスルが鳴った。


結果は渡辺が決めたゴールが決勝点となり、俺たち赤ビブスが勝利を収めた。だが、決して喜べる心境ではなかった。

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