表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
努力の方向性  作者: 鈴ノ本 正秋
第一章 中学サッカー部編
62/115

【第一章】 第六十一話

斎藤コーチが二軍に参加した紅白戦は一対三で二軍の勝利となった。

二軍の得点の全ては斎藤コーチのアシストからであり、細かいパスを繋いでからの攻撃がほとんどだった。


反対に一軍の得点は間中からのパスを渡辺が受け取り、斎藤コーチのディフェンスを退けながら決めたゴールだった。


「渡辺くん、間中くん。ちょっと来てください」


斎藤コーチは手招きをして、渡辺と間中を呼び寄せた。そして、タブレット端末を触りながら、何かを話している。

俺はそれを少し遠くで眺めながら、ストレッチをしていた。渡辺の声が大きくて、少しだけ会話の内容が聞こえてくるが、その度にその三人から離れた場所に移動した。


それを繰り返していく間に、俺の元に凌太が近寄ってきた。


「斎藤コーチすごかったね。現役の時はパスとかポジショニングとかで活躍していたけど、今日はドリブルが光っていたね」


「ああ」


元プロ選手が中学生相手に本気でやってくるなんて大人気ないけどな、という言葉を俺は飲み込んだ。


「そして、それを上回った渡辺くんと間中くんもすごかったね」


「そうだな」


上回ったのは僅か一瞬だろ。という言葉も飲み込んだ。運動をしたばかりで腹が減っているはずなのに、腹が一杯になっている。腹がキリキリと痛み、これ以上飲み込むと吐き出してしまう気分だった。


「じゃあ、俺ボール片付けてくるから」


今は誰とも話したくなくて、俺は足元に転がしていたボールを部室の方へと蹴り、ドリブルで逃げ出した。

血が滲むような努力を重ねているのに、結果が付いてこない。


あとは何をすればいいのだろうか。

部活動での練習の他に渡辺達との自主練習を通して実践的な基礎技術の向上。

後輩に撮ってもらった練習試合や公式戦の録画を見直して戦術の理解力の向上。

一人だけの自主練習を通して新たな技術の習得し、個人的な基礎技術の向上。


向上。向上。向上。

あとは何の能力を向上させればいいのだろうか。


もう努力の方向性がわからない。


目の前に転がっていくボールが、校庭にあった小さな石に当たってぴたりと止まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ