【第一章】 第五十話
八月。高円宮杯の県予選が始まり、俺たちは順調に勝ち進んだ。
そして、高円宮杯の県予選の準々決勝。俺たちサッカー部は再び県大会優勝候補の中学校と戦うことになった。
「お前ら、去年のリベンジ果たすぞ」
肩を組んで円陣を作り、互いが互いの顔を見て、「俺たちが勝つぞ」「球際激しく行け」「チェレンジしてこうぜ」「ぶっ潰すぞ」と言葉を交わし合い、覚悟を決めていく。
このチームで、このメンバーで、昨年の雪辱を果たす。俺たちが勝つ。
「よっしゃ行くぞ」
富澤先輩の掛け声と共に、円陣を作っていた全員が右足を前に出した。そして、円陣は解かれ、俺たちは自分たちのポジションへと散っていく。
円陣を作っていた位置は自陣の中心だったため、俺はほとんど移動する必要がなかったが、全員がポジションに着くまでの間、その場で軽く足を動かして、ホイッスルが鳴るのを待ち構える。
そして、ちらりと俺の隣を見た。そこには間中が立っている。新一年生と戦った時と同じで、俺と間中の二人でこのチームの中心の位置を任されている。
背負っている重圧に負けないために、大きく深呼吸をした。そして、ホイッスルが鳴った。