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努力の方向性  作者: 鈴ノ本 正秋
第一章 中学サッカー部編
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【第一章】 第四十三話

十二月になった。吐息が白くなってくる頃になってくると、日が出ている時間はかなり短くなってきており、サッカー部での練習時間はとても短くなった。

そのため、渡辺たちとの自主練時間は必然的に長くなっていた。


「はい、又抜き!!」


俺はチョンとボールを右足で触ると、ボールは権田の両足の間を綺麗に抜けて行った。


「あ、くそ」


権田は首を素早く動かし、背後に転がるボールを見つめていた。


俺たちは今、鳥かごという練習をしている。四人がパスでボールを回し、その四人の中にいる二人がボールを奪いに行く。そういった練習だ。


そして、この鳥かごという練習を一通り終えた後、俺たちの今日の自主練習は終わった。


「改めて惜しかったよね。新人戦」


凌太は荷物置きにしていたベンチに向かって歩きながら呟いた。


「いつの話をしているんだよ」


俺は笑いながらそう言った。

そして、俺は口から出た白い息を眺めながら、約一カ月前の新人戦の準々決勝の日を思い出した。


準々決勝で県大会優勝候補の中学校と戦うこととなった。

俺は唯一、一年生でスタメンを勝ち取り、試合に出場していた。サッカー部内での選考の経験を活かし、神田先輩や松本先輩との連携により先取点を得た。


しかし、相手のエース選手に強引に点を決められ、同点。

そして、そのまま六十分間では決着がつかず、PK戦となった。

どちらも順調にゴールを決め、俺たちの五人目の松本先輩のシュートが相手のゴールキーパーにギリギリ触れられてしまい、ゴールの枠外にボールが転がっていってしまった。


もし俺があそこで五人目に立候補していれば、勝っていたのではないかという雑念が頭に過る。

それは良くないと頭を横に振った。結果的に立候補しなかったのだから、そんなことを考える資格はない。


「俺が出ていれば勝っていたぜ」


という渡辺の自信過剰の発言を無視するように荷物置きに、波多野が駆け抜けて行った。数カ月間、一緒に練習を重ねてきたことにより、渡辺の扱い方を皆も理解してきているんだろう。


「本当に最近寒くなったよなー。寒いの嫌いだから勘弁してほしいぜ」


波多野が水筒を口に付けながら呟いた。水筒からはカラカラと氷の音が聞こえてくるため、本当に思っているかは不明だ。


「確かにな。着替えとか毎回地獄過ぎて困る」


身を震わせながら答えた権田に、渡辺はにやりと笑った。


「けど、今から着替えるんだけどな」


渡辺は一番乗り、とテンションを上げながら公園にあるベンチに横柄に腰かけた。


俺たちもそれに釣られるように公園にある二つのベンチに腰掛けた。前傾姿勢になり、履いていたサッカースパイクの靴紐を緩め、ランニングシューズへと履き替える。サッカースパイクから足を出す瞬間は、冷え込んだ外気に触れるため、寒さに耐えるための覚悟が必要だ。


俺も覚悟を決め、恐る恐るサッカースパイクから足を出すと、ほぼ同時に誰かのスマートフォンが鳴った。

間中のスマートフォンからだった。


「あ、やば」


間中はスマートフォンの画面を見ながらそう言うと、いつも以上の速さで帰り支度を始めた。

そんな様子の間中の隣に座っていた波多野が首を傾げた。


「どうした?」


「いや、そういえば忘れていたことがあって」


「忘れていたこと?」


波多野が眉を顰め、反対方向に首を傾げた。

そんな二人のやり取りを見て、俺を含めた四人は帰り支度の手を止めた。風の音しか聞こえなくなった時、間中は口を開いた。


「今日の夜、海外のリーグの試合だった」


あー、と俺以外の四人は声を揃えて叫んだ。まるでいきなりスイッチを入れられたロボットのように帰り支度をする手が早まった。


凌太に小声で聞いてみると、どうやら海外サッカーのリーグで有名なチーム同士が試合をするようで見逃せないらしい。現在の時刻は午後八時前で、試合は零時頃に放映されるようだが、色々と試合を観る前に家で明日の準備などをするようだった。


いつもなら十五分くらいかけて帰り支度をする俺たちだが、今日は三分もかからずに帰り支度を終えた。寒いの嫌いと言っていた波多野も、サッカースパイクからランニングシューズへと履き替える時は寒さを気にしていない様子だった。


「じゃあ、また明日な」


と、公園を出ると、蜘蛛の子散らすような勢いで俺たちは帰路に着いた。俺もそれに釣られて公園を出たが、どこか取り残されたような気分だった。


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