【第一章】 第三十九話
チームDに勝利を収めてからのチームAは圧巻だった。全てのミニゲームで大差を付けて完勝した。これで一軍と二軍を分ける選考は幕を下ろした。
そして、全てのミニゲームを終えた後、俺たちサッカー部は選考開始前と同様に横一列に整列させられた。俺たちの前には武井監督が手に持ったバインダーに目を下ろしたまま立っている。
風が土を攫い、巻き上げるような音が、中学校近くにある公園で遊ぶ小学生の声が、遠くを走るバイクのエンジン音が聞こえてくる。それほどまで学校の校庭は静まり返っていた。
そんな息が詰まる状態の中、武井監督はようやく顔を上げた。
「ミニゲームお疲れ様」
武井監督の言葉に、お疲れ様でした、とサッカー部全員が返した。ようやく校庭に音が戻った。
「初めに言っておくが、時間短縮のために二つのコートでミニゲームをやってもらっていたから、各選手の全てのプレイを見ることは難しかった。だから、俺はお前たちの実力を完全に知っているわけではない」
それはそうだ。
そもそも俺だってサッカー部の練習試合の録画を何度も見返して、技術を盗んできた。だから、こんな数回のミニゲームを一度見ただけで実力を測るなど難しいのは当然だ。
「だが、一軍と二軍に分けなければならない。二軍になってしまった者はこれからも努力を怠らず、一軍になった者は二軍になってしまった者に恥じぬように日々の練習をこなしてほしい」と武井監督はここまで言うと、一呼吸置いてから口を開き、「それでは発表する」
と続けた。
そして、武井監督は再びバインダーに視線を落とした。
「まずは背番号一、ゴールキーパー。富澤武」
はい、という富澤武先輩の野太い声が響き渡る。
「お前は引き続き主将として、サッカー部を率いていってほしい」
はい、という富澤先輩の低い声が再び響いた。武井監督は頷くと、後ろに用意してあった段ボールの中からゴールキーパー用の黄色のユニフォームを取り出し、富澤先輩に手渡した。
今回の選考では一軍と二軍に分けるだけと言われていたが、実はそうではない。近いうちに新人戦という大会があるのだ。そのためユニフォームを手渡される。
「続いて、センターバックだ。背番号二、朽木和男。背番号三、伊達ひでき」
はい、という朽木先輩と伊達先輩の声が聞こえた。そして、二人も武井監督からユニフォームを受け取った。
「次はサイドバックだ。背番号四、関慎吾。背番号五、飯塚悟」
少し意外だった。
関先輩と飯塚先輩の本職のポジションはサイドハーフだ、しかし、今回はサイドバックとして、名前を呼ばれたのだ。
はい、という二人の声が聞こえた。顔ははっきりとは見えなかったが、特に不満がある様子ではなかった。選ばれない人がいる中で、不満を漏らすのはその人たちに悪い。
「続いてボランチ。スタメンには一人だけだ」
全身に電気が駆け抜けたような気がした。
俺は静かに息を飲んだ。そして、俺は走馬灯のように今回の選考を振り返っていた。
チームAの一員として、二得点二アシスト。先輩たちと遜色ないプレイをし、神田先輩の全力を引き出した。大丈夫。俺は絶対選ばれるはずだ。
武井監督が口を開いた瞬間をスローモーションのように感じた。そして、名前が呼ばれる。
「背番号六、若林透真」
「はい!!」
俺は飛び跳ねるように答えた。そして、内側から噴き出そうな嬉しさを噛みしめながら、俺は武井監督の元へと足を進め、真っ赤なユニフォームを受け取った。背中の部分に大きく『6』と書かれている。
俺は嬉しさでそのユニフォームを両腕で包み込むように持った。もうこの背番号は離さない。




