家族も教育も恋愛も話し合いは大事!①
まあ、色々飛躍しながらも、無事お師匠さまと理事長は元の鞘に収まり。
というか、こっそり体で隠しながら手を繋いでいるとか(でもバレバレ)、ちょっと見ていて恥ずかしい。
20数年振りの再会と復縁だから、離れがたい気持ちは、まあ分かるけどね。
大和撫子の鑑のような、淑やかなお師匠さまが、少女の初恋のように頬染めて理事長に寄り添う姿は……まあ、微笑ましいというか、可愛いけどね。
でも息子であるリクは、理事長のニヤニヤと笑み崩れた様子が受け入れがたいのが、目をさ迷わせている。
……って言うか、そのくせ、私の手をしっかり握って離さないところとか、親子そっくりなんですけど!
「じゃあ、俺は学校に戻るよ。荷物置きっぱなしだし」
いたたまれなさと、あと苳子さんが私の家に突撃訪問すると再び言い出さないうちにと、リクが帰宅を宣言する。
「サホ、タクシー呼ぶから家まで送るよ」
「あ、うん、ありがとう」
リクの実家も家からそこまで遠くはないと思うけど、正直土地勘もないし、道も知らないので送ってもらえるのは助かる。
「いや、私の車に乗りなさい。ひとまず由利恵も帰らないといけないし。由利恵の家の近くなんだろう?」
「あ、はい」
「いや、いいよ。二人はゆっくりしていけば? ……母さんも寂しがっているし」
寂しそう、というよりは「まだ帰っちゃダメ!」とうるうるした目で無言の訴えをしている苳子さんを横目に、リクが理事長の申し出を断る。
「苳子、今日は我慢しなさい。それに、タクシーとはいえ担任教師が教え子をプライベートで家に送るのは、言い訳が難しい。由利恵が一緒ならともかく」
「だったら、由利恵さ……お母さんも一緒にタクシーで……」
ちょっと照れくさそうにお師匠さまを「お母さん」と呼ぶリク。
苳子さんが「母さん」だから、言い方を分けたんだと思うけど、なんだか呼び方が初々しくて、可愛い。
けれど、理事長の恨めしそうな眼差しを受けて、やれやれというふうに「……父さんの車に乗せてもらうよ」と答えた。
来た道を逆に辿って玄関を出ると、車寄せに黒光りする外車が停まっていた。
なんだっけ? エムブレムは見たことあるけど、あ、そうだ、ロールスロイス! しかも運転手付き!
「あの、学校から近いので、家じゃなくても……」
家族や従業員のみんなに、こんな車で乗り付けたところを見られたら言い訳しづらい。
「そうかい? だったら由利恵の家か、学校で降ろそう」
事情を察して理事長はうなづいて。
「あ、これだと狭いな」
え? 運転手さんいれても5人なら、乗れますよね?
そんな疑問を挟む間もなく、運転手さんはすぐに車を替えて……この家には何台車があるの?
っていうか、リクの実家だけど、理事長の家じゃないよね?
っていうか、何なの?! この大きな車!
エムブレムは……ベンツ?
でも、これって空港とかで見る、あれだよね?
「……学校で降ろしてもらうので正解だよ。さすがにリムジンは目立つだろう……」
「うん……」
ため息をついたリクに同意して、私もうなづく。
「でもこれ、リクの家の車だよね?」
「……父親の趣味なんだ。自分じゃ運転しないけどな。俺はこういうの好みじゃないし。もっとコンパクトなのがいい」
少しあきれたようなリク。その感性に、私はちょっとホッとする。
ちなみにリクの言う「父親」は、戸籍上のお父さんのことだろうな。
どぎまぎしながら車内に乗り込む。
座席は普通の乗用車と違って、前後で向かいあう、ボックス席になっていた。
前にテレビで観たリムジンは横向きのソファーみたいな座席にバーカウンターみたいにテーブルが設置されていたけど、この車は座席の間にサイドテーブルがついていた。
車によって内装は色々なんだな。
リクに案内されるまま、後ろ向きの前側座席に座る。
普通3列シートだと最後部に座るべきだけど、ボックス席なら前向きが格上だから、座り方間違ってないよね?
理事長もレディファーストでお師匠さまを後部の奥の席を勧めているし、多分大丈夫!




