ひとりで何でも解決しようとするとすれ違いを生むのでホウレンソウが大切ですね③
「きちんと事実関係を確認なさいませと、あの時もご忠告申し上げました。ですのに、ナイーブな問題だから、とうやむやにされて。それに由利恵ちゃ……いえ、由利恵さま、あなたも一人で思い悩んで何も言わずここを出て。何事も相談なさいとお教えしたはずです。男の私に言いづらかったのは分かりますが、せめて、みやこさんにでも伝えて欲しかったと思いますよ」
滝本さんにお説教されて、理事長も苳子さんもお師匠さまも、みんなシュンとしてしまった。
みやこさん、って言うのは、今は引退してしまったけど、ずっとこの家で勤めていた、滝本さんの前任の使用人頭だってリクが教えてくれた。
滝本さんがじいやさんなら、みやこさんは、ばあやさんみたいな存在らしい。
「ここまで申し上げましたから、もうひとつ。明久さまは、確かにフラフラ落ち着きもなく、決して誠実な方とは言えませんが、決して嘘つきではありませんよ」
「だって、あることないこと、由利恵さんや、他の方に……」
ちょっと口を尖らせて、苳子さんが言いかけるけど。
(というか、そういう仕草がすねてるリクにそっくりで、ちょっと笑えるし、とってもかわいい)
「ええ。事実無根でございます。ただし、明久さまにとっては本当なのですよ。血が繋がらない云々は、半分しか、という言葉が抜けておりますが。……ずっと、苳子さま、あなたに恋されていたのですよ、明久さまは」「そんなハズないわ! だって、結婚する時に、お前はどうせこんな家に嫁ぎたくなかったんだろう、久弥兄さまに頼めば破談になったから、頼めばよかったのに、って」
「ええ。明久さまは、ずっと久弥さまに嫉妬しておられましたから。容姿も勉学もスポーツも、ありとあらゆる面で敵わないことを、ずっと僻んでおられましたから。苳子さまが久弥さまのことを自慢げにお話しされる度に、この滝本に八つ当たりされましたからね。大奥さまが強引に縁談をまとめたこともあって、世間一般のように苳子さまが望まぬ結婚だと、思い込んでおられましたから」「そんな……。それは自慢したけれど、それは出来ないからってすぐに投げ出してしまう明久さんに発破をかけていたつもりだったのよ? 兄さまだって、こんなに頑張って結果を出していらっしゃるんだって、努力が必要なのよって」
「ええ、確かに。もっとも苳子さまらしく、遠回しでしたので、明久さまには伝わっておりませんが」
あれ? もしかして。
ここにも行き違い? 今の感じだと、実は相思相愛っぽかったのかな?
「……それに、由利恵さんにもちょっかい出していたじゃない?」
「あれは、苳子さまの気を引きたかったようです。どちらかというと、苳子さまが由利恵さまばかり構うのに、ヤキモチを妬かれていたと思いますよ」
何だか、ホント、リクには申し訳ないけど。
何だか、高宗さんちも千野さんちも、めちゃくちゃ立派な家系なのに、妙に一途で、なのに思い込みで突進してしまって、すれ違いで。
そして、確実に、リクにはその血が流れていると感じるよ。
思い込んだら話を聞かないとことか、よく考えたらそのままじゃない?
「……あの、なに考えているか、分かるけど。これからは、ちゃんと、相談するから。今までのことは、まあ、ごめんなさいってことで」
何か言う前に、先にリクに謝られてしまった。
うん、報連相は大切だよね、やっぱり。




