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突然ファーストキスを奪った先生からいきなり溺愛されているんですが  作者: 清見こうじ


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波瀾含みの茶道部講習会で責任者なんて荷が重すぎます!②

「それ、いいと思う。中沢は唯一の2年生だし、必然的に次の部長だろう? きちんと外部講師に対応しているしっかりしたところを見せるのもアピールになるんじゃないか?」


「……逆に普段の粗忽な所はみせられませんね」



 自虐的に呟くと。



「あら、中沢さんは、緊張しすぎると確かに小さな失敗はしますけど、慣れたことには落ち着いて出来ますし。意外と目端も利きますわよ?」


「そう、意外と。後輩が出来ると、こうも成長するものなのかと、驚きましたよ、実際」



 私の言葉を高村先輩が否定して、遠藤先輩も賛同してくれた。



 意外と、って繰り返されるのは、ちょっと気になるけど。



「そう? ですか?」


「本当は、当日も後輩の指導の方に入ってもらいたいくらいです。中沢さんの教え方は、みんな分かりやすいって言ってますよ」


「はい! ちゃー先輩……中沢先輩の説明は、聴いていて楽しいです!」


「はい!」



 先生がいるので、名字をつけて呼び直して、誉めてくれる一年生達。



 そう、最近、みんな私を「ちゃー先輩」って呼んでくれる。



 先生の前では言葉を改められるようになってきて、桜女の生徒らしくなってきたな、って思った。



 ……千野先生がやたら部活に顔を出すから、時々ごっちゃになっていてかわいそうだけど、いい訓練にはなっているよね。



「へえ? やるじゃないか、中沢。昼間、チョークの粉で真っ白になるほどがんばって掃除していただけあるな」


「ちょっ!? 先生! それ言わないで下さい!! ちょっとコケちゃっただけなんです!」



 今日、日直で黒板を拭こうとして、教卓の前でコケてしまったんだ。おかげで持っていた黒板ふきで制服が真っ白になってしまった。


 そのタイミングで千野先生が教室に来るんだもん。



 恥ずかしかったよ……。



「え? 誉めたのに」


「あら本当、よく見たら、スカートにまだ粉ついてますよ」


「まあ、そう言うところは相変わらずなんですね」



 高村先輩の生暖かい視線と、遠藤先輩のあきれた視線が心に突き刺さる。



「まあ、ともかく、来週の講習会の準備抜かりなくな」


 

 困ったような笑顔の千野先生……目は思い切り笑ってるけど!







『別にバカにしてないよ。いつの間にか成長していたんだなって感心していただけで』


『うそ! 意地悪だったもん!』



 恒例の夜のメッセージ交換。


 私は昼間のグチを千野先生……リクにぶつける。



『それはサホの気のせい。じゃないかも』


『どういうこと?』


『うーん、ちょっとヤキモチ。何だか、俺の知らない間に、ちゃんと先輩しているって思って。ちょっと悔しかった』


『感心していたのに?』


『サホは、いつまでもちょっとドジで、俺がついていないとダメなんだよって、思いたかったのかも』


『リクって、独占欲、強いよね。今さらだけど』


『だって悔しいじゃん? サホのいいところ、俺が一番知っていたいのに、人から聴かされるなんて。でも』


『でも?』


『矛盾してるけど、いい気分だった。俺のサホはすごいだろって。ホントはすごくしっかりしているんだぞって。まあ、堂々と言えないのも、悔しいけど』


『私だって、自慢したいよ。黒板ふきで真っ白になっていた時、リクは私がドジったことより、コケたの心配してくれていたよね。捻挫とかしてないかって訊いて』


『いやそれ自慢じゃないし。教師として当たり前』


『うん。そんな風に当たり前に生徒の心配をしてくれる優しい先生は、私の彼氏なんだぞって、自慢したかったの』


 しばらく返信がとまり。

 ブルブルと連続してスマホが震える。


『黙って、聴いていてくれるだけでいいから』


 リクが電話してきた。


「うん」


『今日ってもう一人の日直、休みだっただろ?』


「うん」


『今日は俺が授業なかったから、気がつくの遅くなっちゃったけど、一人で日直やってたんだよな?』


「別に。今日はそれほど忙しくなかったから」


 クラス運営も配布物もなかったし、2年になって選択授業が増えたから、日直の役割は少なくなっていたし。

 一人でも十分だったので。


『でも、教室に戻る度に、キチンと黒板をきれいに整えていてくれたよな? チョークの粉で真っ白になるくらい。休み時間の度に、掃除してくれたんだろう?』


「皆も日直の時は、やってますよ」


『うん。そんな、当たり前のことを当たり前に、きちんとやってくれているサホが、俺は誇らしいよ。だから、部活で、俺は誉めたつもりだったんだ。みんなの前では、まさか、休み時間の度にサホの様子を見ていたとか、言えなかったし、な。でも、見てたから、ちゃんと』


「……ありがとう」



 見えないところで、いつも私を見守っていてくれて。



『だから、大丈夫。講習会も、きちんと対応できるよ。次期部長として、腕の見せ所だな』


「……プレッシャーかけないでよ。またドジっちゃう」


『俺もフォローするから』


「ありがとう。お願いいたします」



『あ、でも、どうせドジるなら、俺と二人きりの時にしてよ。ドジっ娘シチュエーションも、萌えるかも。《コケっ! ドン! キャー! スミマセン! あん!!》とか。あ、これは初めて会った時か。リプレイする?』




『あん!!』って何よ? 妙に色っぽい声で……。




 ……って! あの時?!




「……そんな声出してないし! 出さないし! わざと出来ないし!」


『………………今、想像したろ?』





 ……コケて思わず抱きつくとか、そのままいきおいで……とか、絶対想像してないから!!




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