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突然ファーストキスを奪った先生からいきなり溺愛されているんですが  作者: 清見こうじ


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お店のお手伝いをしていただけでヤキモチ妬かれるのはちょっと困ります②

「狭山さんは、茶道、全く初めてなんですか?」


「はい。あ、一応、体験だけはしたんですけど。専門学校の時に。でも、よく分かんなくて。……茶朋お嬢さん、俺の名前、覚えていてくれたんですね」



 なんだか妙に嬉しそうに言う。やっぱり、名前をちゃんと呼ぶって、大事なことだよね。


「お茶の産地だなって思って覚えてました」


「そうなんですか?! この名字で初めてよかったって思いました!」



 ……すごい感激の仕方。



「茶朋、ちょっと……」


 お姉ちゃんが呼びにきた。


 ヤバい、おしゃべりしててしかられるかな?




「お客さんよ。せっかくだから休憩にして話していらっしゃいよ」


 ちょっとニマニマして、お店の外に視線を送るお姉ちゃん。


 その視線を辿ると。



「例の彼氏でしょ? 写真通りのイケメンね。さっき柏餅、全種類3個ずつ買ってくれたのよ」



 ……予測してましたけどね。


 そういえば、買いに来るって言ってたし。


 でも、ピークの時間を避けて来てくれたのかな?


 そう言うところ、リクって気遣い完璧だよね。




「じゃあ、お言葉に甘えて。15分くらいで戻るね」


「もう落ち着いてきたし。もう少しいいわよ」



 そう言って、お姉ちゃんがお昼ごはん用に準備したおにぎりの包みを渡してくれた。


 今朝お母さんとお姉ちゃんで大量に握っていた。


 私も包むのだけ手伝ったけど。


 おにぎりを持って、私は裏口から外に出る。




「お待たせ」


「……悪いな。忙しいのに。顔だけ見たら帰ろうと思ったんだけど」


「どうせお姉ちゃんが引き留めたんでしょ? もうピークは過ぎたから大丈夫よ」


「それならよかった」



 今日も人目を気にしてか、高校生モードのリク。


 髪は下ろして、眼鏡なしの素顔。青いチェックの綿シャツに黒Tシャツ、濃いブルーのジーンズと言うありきたりな格好なのに、カッコいいな、やっぱり。

 


 一昨日会ったばかりなのに、昨日だって電話で話したのに……会えて嬉しい。



「……サホ、それ、可愛いな」



 私のお仕着せを見て、ちょっと顔を赤らめる。



「そう? 私も好きなんだ。うちのお店のお仕着せ。絣って素朴な感じでいいよね」


「うん。その格好で売り子されたら、なんでも買っちゃいそう」


「……それは、リクだけだよ」



 相変わらずの誉めっぷりで、こっちが恥ずかしい。



「そんなことないよ。……ところで、あの人、だれ?」


「あの人?」


「さっき、お店の中でサホと話していた人。秀さんじゃないよね?」


「ああ、狭山さん? 今年入った新人さんだよ。まだお店に慣れてなくて、フォローしたらお礼言われて」



 そのあと、茶道の基本も教えて欲しいって言われたことも話したら。



「ダメ!」


「へ?」


「そんなの、口実に決まっているじゃないか! あの顔は、絶対サホに気がある! こんな可愛い格好したサホに困っている時に助けられたら、絶対惚れる!」



 ……ヤキモチですか?


 もう、リクは私がそんなにモテないって言っても、全然聞かないんだから。



「もう話しちゃダメ!」


「お店の職人さんだもん。そんなわけにいかないよ」


「う……じゃあ、二人きりで話しちゃダメ!」


「お店の中ならいいよね?」



 どうせ言っても聞かないんだから、適当に妥協点を提示しておく。まあ、私が職人さんと関わることなんて、繁忙期ぐらいなんだし。



「いいけど。くれぐれも油断するなよ? 絶対二人きりにならないこと!」


 そんなリクのヤキモチ混じりのお説教聞いていたら、あっという間に休憩時間がなくなっちゃった。


 名残惜しいけど、また夜に電話をする約束をして。


 慌てておにぎりを食べて、お店に戻って。



「あ、茶朋お嬢さん、おかえりなさい」



 ニコニコ笑顔の狭山さん。


 少しだけ慣れてきたみたいで、お客様の対応に余裕がでてきたみたい。



「休憩ありがとうございました」


「いえ。それで、さっきの、お茶のことを教えてもらうことなんですが……」


「ああ、そうですね。せっかくだから、初心者用の本を貸しますね。私が中途半端に教えるより、いいかなって」


「いえ、できれば、直接……お店の休みの日にでも」


「あ、ごめんない。それはダメなの。彼氏がヤキモチ妬くから。心配しすぎで困るんだけど。さっきも、狭山さんと話していたのを見て、変な心配して。ただ茶道の話をしていただけなのにね。困った人なんだから」


「……茶朋お嬢さん、彼氏が……」


「あ、お父さんには内緒ね」


「……はい」



 工場見てきます、とフラフラとお店の奥に入って行った狭山さん。


 柏餅が品薄になってきたのに気が付いたのかな?


 慣れてきたみたいでよかった。


 





『と言うわけで、茶道の本を貸すことにしたから。もう、リクが変な心配するの言うの恥ずかしかったよ』

 

『……うん。それは、よかった、けど』


 今日はいつもより沢山お酒飲んでお父さんが寝ちゃったので、直接電話で話す。


 お母さんやお姉ちゃんは、もうリクのこと知っているしね。


『何?』


『ちょっとだけ、同情した。けど、その調子で、見事なスルーを、これからも頼むよ』






 ……なんのことだろう?

 

 よく分かんないけど、リクが機嫌良さそうなので、ま、いっか。

 




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