閑話休題~ワタシの知らない先生の事情 遊園地デート編~②
初めて乗ったジェットコースターは、スリル満点で超面白かった。
サホも楽しんでいるし。
でも、ちょっと「きゃー! 怖かったよー!」ってしがみつかれるシチュエーションも期待してたんだけど、な。
最近、慣れてきたのか、ちょっとからかっても平気そうな顔されるし。
チェロス、平気で交換して食べちゃうし。恥ずかしがると思ったのにな。
で、見つけたのは、「お化け屋敷」。
これは鉄板だよな。
キャーキャー言って抱きつかれること必至!
最悪俺が抱きついてもオッケーだし。
……まさか、それがこんなことになるとは。
嫌がるのは想定内だったし、そんなサホをからかうのを楽しんでいる部分があったのも認める。
でも! 俺バカ!!
サホがホントにツラい時は、それを隠そうとするって、分かってたはずなのに!
泣くほど嫌なことに、強引に誘うなんて!
言葉を濁しながら、当たり障りなく避けようとしていた時の、青ざめた顔に気づいていない訳じゃなかったのに!
結果、サホをまた泣かせてしまった。
小さい頃のトラウマは、キツいよな。
俺だって、まだ事情をよく知らない頃に父親に冷たくあしらわれて、他の子供みたいに遊んでもらえないことにすごく傷ついた。
母親や、伯父さんがその分世話を焼いてくれたから、本当の意味で寂しいとかなかったけど。
っていうか、その伯父さんが実の父親だって知った時はさすがに人間不信に陥った。長くは続かなかったけど。
その前に散々遊んでもらって、すっかり伯父さん大好きになっていた俺は、不承不承現実を受け入れざるを得なかった。しっかり手玉に取られていた気がする。
今逆らうような言動するのは、その意趣返しもある。反抗期紛いのガキみたいな対応だって分かってるけどさ。
サホが家族が大好きなのはよく分かるし、お姉さんのことはよく話題に出るから、ホントに大好きなんだろう。
そのお姉さんとはぐれて、一生会えないかもって暗闇で絶望した出来事は、ものすごい心の傷だろうし。
おまけに、そのお姉さんまで大泣きじゃ、な。
何とかサホを慰めて、サホも逆に申し訳ないって謝って。
でも、俺、サホを泣かせてばかりだ。
最初の出会いのキスは、事故カウントにさせてもらうけど。
その次は、半分くらいサホの反応を楽しむつもりで、あと、サホを落とすのは簡単だ、俺だったら許されるって傲りもあったし。
「お前、すぐ泣くなよ」ってサホには言ってたけど、泣かせているのは俺、なんだよな。
………………猛省。
その後、またサホは楽しそうに遊んでいたけど。
サホの笑顔を見るたびに、チクチクと俺の胸は傷んだ。
予定通り観覧車にも乗ることになったけど。サホ、無理してないかな?
最近はサホが受け入れてくれるから、からかい半分にエロい話をしてるけど。
ホントはもっと先に進みたいって俺の欲望を紛らわせている、ってこともあるんだけど。
でも、軽く体を寄せることも恥ずかしがるサホにしたら、それだって負担なのかもしれない。
サホが可愛いのは変えられないし、サホが可愛いから触りたくなるのも変えられないし。
でも、それがまたサホを泣かせることになったら?
正直、首から下を触って、気持ちよくさせて、サホから「して欲しい」って言わせたいって下心もあるし。
でも! ここはガマン!
これ以上、サホを泣かせたくない!
俺は、婚約が整うまで、サホの体に触らない!
……手を繋ぐのだけは許して欲しい、けど、な。




