閑話休題~ワタシの知らない先生の事情 遊園地デート編~①
茶道部では色々問題も持ち上がっていたが、サホが活躍してくれて、ひとまず落ち着いた。
そそっかしいと思っていたけど、こういう時に素早く対応できるフットワークの軽さはさすがだよな。サホ、えらい!
でも、あのお師匠さんにまた会えるのか。ちょっと嬉しいな。
サホに言うとまたヤキモチ妬くから言わなかったけど。
あの人を思い出すと、ちょっと胸がキュッとするって言うか、せつないような懐かしいような気持ちになる。
美人だとか、サホに雰囲気が似てるから、とか、そういうドキドキした感じとは違うんだよな。
義理の母とはいえ、俺は母親のことは、実の母以上に大切に思っている。
とはいえその母とも、ちょっとタイプは違うし、だからマザコンっぽい感情を抱いたってわけでもない。なんなんだろなあ。
まあ、20年前の姿を想像すると、かなり好みのタイプかもしれないけど。
あの人もサホみたいなそそっかしい少女だったのかな? それはそれで、アリ、だな。
でも、俺にはサホがいるし。
想像するのは楽しいけど、やっぱりサホだよな。
声が響くからって、夜に二人で話すのも文字中心だけど。
でも、最後は必ず声を聞かせてくれる。
『リクだよ』
『サホだよ』
って分かりきってるのに、つい名乗って。
ホントはビデオ通話でサホのパジャマ姿とか見せて欲しいなぁ、とか思うけど。
でも、夜に耳元で響くサホの、ちょっと鼻にかかった可愛い声を聴きながら目を閉じて、色々想像するのも悪くない。
色々、が何なのかは訊かないように。
さて。
待ちに待った遊園地デート。
サホに観覧車乗りたいって言ったけど、そもそも俺は、遊園地そのものがほぼ未経験なんだ。
とりあえず地元でもわりと大きくて有名な、観覧車のある遊園地を調べて。
GWは混雑するみたいだけど、そのくらい混んでいる方が目立たないだろうし。
今回も高村が服装をプロデュースするって言ったので、遊園地のアトラクション向けに考えてもらった。
今回はサホも込みで。
ついでにミニスカ希望も伝えた、のに。
何で生足じゃないんだよ?
超ミニにニーソで絶対領域なんて、そこまで期待はしてなかったけどさ。
スカートはわりと短めだったけど、代わりにスパッツ履いてるし。
まあ、ふくらはぎは見えているから、完全防備じゃないけど、できれば、上の方も晒して欲しかったな。
と思ったけど、そうすると他の男の得になると言われて、前言撤回。
生足は別の機会に。できれば二人きりの時を強く希望!
1時間ほど電車に乗って、予想通りの混雑で人気のアトラクションは行列だったけど。
サホといると、移動時間も待ち時間も楽しい!
普段直接話せない分、高校生気分でおしゃべりが止まらない。
和菓子の話とか、本の話とか、最近観たテレビの話とか、俺の好きなものはもちろん、そうじゃないものも、サホから聴くと、とっても興味深くて面白い。
俺って、高校生の時もこんなに話しなかった気がする。
男子校で女の子に免疫なかったし。もしその頃サホに出会っていたら、ちゃんと話せなかったかも。
そう考えると、今のこの年でサホに出会ったのって、やっぱり運命的な気がする。
話の流れで俺の高校生の頃の話とか、気がついたら家族の話になってて。
いや、いずれは話すことだし、別に隠すほどのことじゃないんだけど。
さすがに実の父親については、まだ話せないけど。
やっぱり話題が重かったのか、サホがシュンとなってしまった。失敗したかな?
「教えてくれたのは、嬉しいよ。家族の話題振ったの、私だし。……へんな反応して、私こそゴメンね」
そんな風に気遣いしてくれるサホが、ホントに愛おしくてたまらない。
サホのお父さん攻略が大変そうなのも実感しちゃったけど。
でも、そりゃそうだよな。こんな可愛い娘、俺が父親だったとしても簡単には手放せないよ。
いや、無理かも。でも、サホのお母さんは味方になってくれそうなので、頑張るしかない!
そういえば。
サホに話しながら思い出した。
昔、母親が俺をランドに連れていってくれた思い出。確かに、あの時、母親以外に、もう一人女の人がいたんだよな。誰だったんだろ?
俺がまだ小さかったし、サポートのために付いてきた家政婦さん、とか? 思い当たる人がいないけど。
実家の家政婦さんはあの頃とは半分くらい入れ替わっているので、今は働いていない人かな?
なんとなく、きれいな人だった、ってのは、思い出せるけど。




