和風喫茶で「あーん」するとか悶絶すぎる!②
「お待たせしました。白玉抹茶汁粉と抹茶パフェ、ほうじ茶です。あと、こちらはオーナーから」
オーダーしたものの他に、小皿に盛られたカットフルーツがテーブルに置かれた。
「ありがとうございます」
私はにっこり微笑み、店員さんにお礼を述べる。
「……なんで? オーナーからサービスって?」
「ああ、だって、ここ、遠藤先輩のおうちの経営だし」
そう、高村先輩が勧めてくれた時にピンと来たんだけど、お店の看板を見て、納得した。
遠藤先輩のおうちの……正確には遠藤先輩のお兄さんの、お店。
「え? ……ああ、そうか。タイム・エンド・ライフグループか」
「やっぱり知ってた? リクは詳しそうだもんね」
「なるほど。そりゃ、高級和服が仕事着になるよな」
いくつかの和食レストランや和風喫茶などの飲食店も経営してるけど、メインは人材派遣事業だって聞いた。
「和装で仕事が出来る人材派遣会社、だったもんな。ユニフォームのレンタル付で。そうか、遠藤のお兄さんだったのか」
「大使館相手のレセプションとかで引っ張りだこみたいですよ。茶道、華道、書道、香道と、和道は一通り人材確保してあるって。私も将来、就職させてもらおうかな」
「必要ないだろ? サホは将来は俺のところへ永久就職だ」
「えー、女性の社会進出を妨げる気ですか?」
「そういうわけじゃない。そうじゃないけど……心配すぎる」
「えー、私がドジだから安心できないって?」
「サホが可愛すぎるから」
「へ?」
「これから、サホはもっとキレイになって、男が放って置かなくなる。だから、目の届く範囲にいて欲しい……俺のわがままだから、気にしないで。サホがやりたい仕事をするのを、本気で邪魔はしないから、安心して? ほら、食べよう? パフェが溶ける」
「あ、うん」
可愛い、は今日散々言われたけど、「キレイになる」なんて言われると……恥ずかしいけど、嬉しい。
「ほら、あーん」
のぼせていて、うっかりリクの差し出したスプーンを口にしてしまった。
美味し……じゃなくて!
「いや、スプーンもフォークも2つあるよね?」
「だから、お互いに、あーん、しよ?」
「それは……」
「それとも俺にこのスプーンで食べろって? いいよ、サホと間接キッス、大歓迎」
「……あーん、してあげます」
もう今さらな気もしたけど、間接キッスって、何か言葉にされると恥ずかしい。
でも。
スプーンを分けても、やっぱり、あーん、は恥ずかしい!
目をキラキラさせて、スプーンが口に運ばれるのを待つリクの口に、ちょっと手が震えながら、パフェを一口分、近付ける。と。
スプーンが口に入る寸前。リクが目を閉じて。
パクッとスプーンを咥えると、とたんに頬が弛んで。
めちゃめちゃ美味しそうに、笑う。
……ヤバい、可愛すぎる!
目を閉じた顔って無防備すぎるから!
これは、恥ずかしくても、あーん、したくなる!
ちょっと、ムラっと来る、かも。
ついリクの気持ちが分かってしまい。
パフェとリクの笑顔を美味しくいただくことが出来ました。




