閑話休題~ワタシの知らない先生の事情 初めてのデート編~➁
サホに、俺がまだ、「付き合って欲しい」とも「好きだ」とも言っていないことを指摘されて。
俺自身、ショックだった。
色々必死だったとは言え、いくらなんでもそれはない。
サホが怒るのも無理ない。
俺は、必死で弁明し。
「俺は、サホが好きだ。大好きだ。愛してる。もう、昼も夜もサホのことばっかり考えている。だから……」
付き合ってください、そう言うつもりだったのに。
思わず「結婚してください!」って言ってしまった。
今でさえ、ちょっとおしゃれをしたら、行き交う男が注目するような可愛さなんだぞ?
付き合ってとか言ってる場合じゃない!
確実に、サホを手に入れるには、プロポーズしかない!
そうだ、デートするだけでこれだけ大変なのに、学校じゃ隠しておかなくちゃいけなくて、誰かがサホにチョッカイ出しても立場上止めることができない。
……いや、そうならない状況なら、作れるか?
とりあえず、同じクラスの男どもがサホに近付けないように、防衛策を講じることは出来るかもしれない。
出来れば一切の接触を絶たせたいが、さすがにそれは難しいだろう。
それをつい口に出したら、妄想がどんどん膨らんで、ちょっと口喧嘩っぽくなってしまったけど。
最後はほぼ泣き落としに近い感じで、俺がどれだけサホを好きで、不安なのか訴えて。
そうしたら、サホも受け入れてくれた。
それは、まるで聖母のような、温かい笑顔で。
何だか、とっても神聖な気持ちになった。
神様に、誓いたくなった。
「サホ……愛してる。一生、添い遂げるから。俺は、千野利久は、病める時も健やかなる時も中沢茶朋を生涯愛すると誓います」
この時、俺は表向きに使っている「センノ」ではなく、本来の「チノ」の名前で誓ったんだけど。
この時だけは、嘘偽りなく、誓いたいと思ったから。
それに気が付いていないのか、それとも結婚式めいた誓いの言葉に面食らったのか、そこには追求せず。
サホも、誓ってくれた。
そして、初めて。
強引に奪ったものでなく、サホが口付けを受け入れてくれて。
いつもの貪るような激しい思いはなく、神聖な、誓いのキス………………ゴメン、ちょっと嘘。
つい舌を入れちゃったら、最後はやっぱり興奮してしまった。
いや、だって、相変わらずよすぎるんだ、サホの唇は。
だんだんムラムラとしてきて、このまま人目を避けたこの空間にいたら、耐えきれない感じで。
それに、抱き締めた訳じゃないのに、キスすると、当たるんだよ、サホの胸の膨らみが。
その弾力が。
いや、これは、ラッキーだけどな。
正直に話したら、サホは怒るし(胸のことは隠したけど)。
誓いの言葉を撤回するとか言い出すし。
あー、記念にと思って、スマホのボイスレコーダー、セットしておいて良かった!
あと、ヤキモチ妬かせる他に、泣き落としも効くみたいだ。
いざとなったら、目を潤ませて説得しよう。
目薬買っておくかな?




