運命的で片付けていいわけない! ②
「当たられる方の身にもなってよねー!」
私は、嫌な気分を振り払うつもりで、校舎から生徒通用口である裏門に続く坂道を、一気にかけ降りた!
勢いが付きすぎて、気持ち体がフワッと舞い上がる。
そこに突然!
………!
「うわぁ! すみません!」
勢いよく裏門を飛び出そうとして、入ってきた人にぶつかってしまった……。
しかも。
思いきり、押し倒してしまった……!
「ごめんなさーい! まさかこんな時間に人がいると思わなくて!」
今日は新入生も正門から入ることになっていたし、運動部の人達は校庭側の通用口を使ってるから、まさか人が通るとは……。
「ごめんなさい! ホントにすみません!」
「……わかったから、どいて……」
「へ?」
「どけってば! いつまで乗ってる気だ!」
「……キャアアアァァ!」
私ってば!
思いっきり馬乗りになってる!!!
「……何でアンタが悲鳴をあげんだよ。襲われたのはコッチだよ」
「おそ! 襲っただなんて! 私! そんな!」
「いいから! ドケーッ!」
そこまで言われて、やっと私は立ち上がり……呆然としてしまった。
「ったく、新調したばっかりなのに……どこが伝統ある女子校の流れをくむ名門校だよ……」
新品らしいスーツについた砂埃を払いながら、彼は、ブツブツ呟いた。
…………。
う、うわあ……。
スッゴい美形!
くしゃくしゃに乱れてしまった柔らかそうな髪の毛は、黒髪なんだけど、陽が透けて少し栗色がかっていて。頬にかかる髪の毛や襟足にまとわりつく後れ毛は、少し跳ねてしまっているのが、何だか可愛い。
切れ長の目元は知的なんだけど、睫毛が長くて妙な色っぽさがある。
全体的には彫りが浅めの和風顔?
和服が超似合いそう!
同じ年くらい?
でも、学校で会ったことはない気がする。
全校でも500人に満たないんだから、こんなにカッコイイ男の子、見逃すはずがない。
だとしたら、新入生?
うーん、年下かあ。
ま、いいか。
年下でも。
「おい、アンタ! 迷惑かけたかわりに、案内しろよ! 職員室、ドコだ?」
勝手に妄想にふけっていると、彼は語気を強めて聞いてきた。
「職員室なら、ここ登りきれば、真っ正面にあるけど……新入生は午後からで、正門の受付に行くんだよ」
確か、去年はそうだった。
「新入生じゃねぇ!」
「あ、じゃあ、転校生? あ、だから新品のスーツなんだ。でも、男子は上着だけでいいんだよ。あ、ワッペン買うなら、今日購買午後からだよ」
謝罪の意味も込めて、私は一生懸命、説明した、のに。
「……わかったよ。自分で行くから……アンタもとっとと用事に行けば」
スッゴい疲れた顔して言うんだもん。
失礼しちゃう!
「あ、アンタ……」
腹をたてて彼に背を向けた私を、彼は呼び止めた。
「何ですか……!?」
振り向いた途端。
超至近距離に、彼の瞳。
グイッと襟をつかむ、指先が喉元に触れる。
その冷たさにゾクリとする。
そして。
唇の、柔らかい、感触。
「……クリーニング代がわりに」
離れた直後に、彼の唇が、紡いだ言葉を、私は、すぐに理解できなかった。
離れていく彼の背を眺めながら、何が起きたのか、だんだんと、わかってきた……。
!
今の!
……キス?
「……うそぉ……私のファーストキスが……」
突然現れた、名前も知らない転校生に、奪われてしまうなんて……!
こんなのって、こんなのって……!
ありえなーいっ!!!