茶道部と私の行く末を勝手に決めないで下さい!②
「……まあ、ちゃーに隠し事をさせようって時点で、先生、下手打ってますよ? この子、全部顔に出ますから。やたら先生を避けてみたり、かと思えば、うっとり見つめてみたり。ああ、この人が、ちゃーのファーストキスの相手だな、って、知っている人間なら、すぐ分かります。昨日だって、あんなに取り乱して、まるで暴漢に襲われたような様子で、なのに先生を必死で庇って。何かあったのは丸分かりでしてよ?」
「そうだよな……俺が下手打った。コイツをそのまま残していくんじゃなかったよ」
諦めたように、先生がうなだれる。
てか、全部バレていたの?
「でもまあ、ファーストキスのことはともかく、それ以降のことは、この子はこの子なりに、必死で隠そうとしてましたから。まさか、先生だったのは意外ですけど。一目惚れした相手とは言え、貞操を奪おうとした相手に操を立ててるんですから、そんなちゃーの恋は応援はしてあげたいと思うんです。けど」
キラリ、と遠藤先輩の目が光る。
「茶道部のためには、利用できるものは、全て利用させていただきたいんですの」
「……分かったよ」
大きくため息をついて、先生は承諾する。
「でも、こっちとしても条件がある」
「あら、条件なんて。有利なのはこちらなんですけど」
「君にも悪い話じゃないはずだ。可愛い後輩の恋を応援したいんだろ?」
「一応お聞きしますわ」
「俺は、中沢と、本気で付き合っている」
ちょ! 何勝手に宣言してるんですか?!「……ちゃーの様子だと、まだみたいですけど」
「もう八割方落ちてる。もう一押しだ。中沢が俺に一目惚れだって言うのは、今聞いたからな」
「余計なこと言っちゃいましたね」
「で、だ。教師の俺が生徒となんて、さすがに外聞が悪い」
「あら、外聞とか、俗なこと仰いますのね? それに、意外と聞きますよ? 先生とお付き合いされていた方のお話。こっそり婚約までされていた先輩のお話も聞きましたし」
「過去にはそれが認められていたとしても、今は時期がまずい。理事長が替わって、色々な改革が始まっている。とにかく経営を上向かせたい、その為には優秀な生徒と、金を落としてくれる生徒を集めたい。それには何より学校のイメージが重要だ。教師と生徒の恋愛なんて醜聞、一番避けたいはずだ。俺はともかく、中沢の経歴に傷が付くのは避けたい」
「……ちゃーを守るため、と仰るなら、協力することはやぶさかではございませんが。でも、私も今年度卒業ですし。それ以降はどうされますの?」
「それまでには、なんとしても外堀を固める。腐ってもお嬢様学校だからな。恋人はマズくても、婚約者ならイケルだろ? 中沢の家も、それなりに老舗みたいだしな」
「確かに、親の決めたお相手なら、風当たりは和らぐと思いますけど。大丈夫かしら? ちゃーのお父様、娘さん達を溺愛してますわよ? ちゃーの御姉様が、将来性ピカイチの若手職人さんとまだ婚約を許されていないんですのよ。もう五年もお付き合いされているのに。ぽっと出の先生が、許していただけますかしら?」
ホーッホーッホッホッホ! なんてお嬢様笑いの声がBGMで聞こえて来そうなくらい、遠藤先輩が意地の悪い顔で笑って見せる。
「そ、それは、努力する」
ちょっと顔をひくつかせながらも、先生は宣言する。
……あの、一応、私も当事者ですよね?
全然、話に入れていないんですが?
勝手に話を進めないでくださーい!




