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突然ファーストキスを奪った先生からいきなり溺愛されているんですが  作者: 清見こうじ


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20/85

どんなにカッコよくても恋人だらけの光源氏はゴメン!②

「それを行間で読ませるところがスゴいけど。平安貴族の妄想力、スゴいな。光源氏の養女の玉鬘の事件なんか、行どころか『帖』の間で、全部ことの成り行き説明無しで説明してるからな」


「え? そうなんですか?」


「『藤袴』の帖で冷泉天皇の元に妃候補として出仕することになっていた玉鬘が養父の光源氏のセクハラや義理の弟の夕霧のアプローチに戸惑ったり求婚者の一人の蛍兵部卿宮にちょっと心が動いたりしていたら、次の『真木柱』で、突然、一番嫌がっていた髭黒と結婚してるんだ。何があったか、具体的な説明もなく」


「え?」


「結婚したのに、玉鬘本人も義理の父親の光源氏も、それを喜んでいない。できれば広めないで、って忠告されても、髭黒は大喜びでペラペラしゃべって、源氏もあとには引けなくなる。真っ当な手段で結婚したわけじゃない、ってことは分かる。仲人をしてくれた女房、つまり召し使いの弁の御許に感謝します、っていう髭黒の様子に対して、彼女を疎んじる玉鬘の様子から、まあ、こいつが手引きして、無理やり、……だろうなって」


「……説明されなくちゃ、分からないですね。でも、先生の話、面白いです。授業とか、そういう感じですか?」


「さてな。授業では受験に役立つことをやれって言われているからな。文法とか、そっち優先だろ?」


「えー、絶対先生の話聞いていた方が、興味が湧いて楽しいのに」


「俺だってこういうこと話している方が楽しいさ。まあ、たまには、話してやるよ」

 そんな話をしながら、教室に入ると、まだクラスの三分の一くらいの生徒が残っていた。


「あ、ちゃーちゃん、大丈夫?」


 わらわらと皆が駆け寄ってきてくれる。


「うん。大丈夫。ありがとう」


「先生もご一緒に?」


「ああ、職員室に寄ったついでに様子を見に行ったから。念のため、な」


「何だか楽しそうですね。何のお話?」


「源氏物語。先生の説明、分かりやすくて面白いの。授業でもして下さいってお願いしていたの」


「わあ、私もお聞きしたいです!」


「私も!」


「また、今度な。今日はこの後、部活の打ち合わせもあるから。中沢、鞄取ったら行くぞ? 三年生待たせているんだろ?」



 いや、打ち合わせには先生呼んでないけど。


 と、言いたいところだけど、目をキラキラさせて先生を取り囲むクラスメート達の中に千野先生を残していくのも癪だったので、「はい」と素直に返事をして。


 言い訳代わりに煽っちゃったのも私なんだけどね。



 というか、私、すでにナチュラルに、千野先生を独占しようとしていない?


 色々お断りしておいて、先生が他の女子といるのにヤキモチ妬くなんて。



「中沢、お前、あの子達にヤキモチ妬いただろう?」


「な! 違います!」


「ふーん。あんなに目の色変えて元気よく返事しておいて。あんな素直な『はいっ!』っ返事を初めて聞いたぞ?」


「いつでも素直ですから」


「まあ、そういうことにしておいてやるよ。あんまり構って、六条御息所ろくじょうのみやすんどころみたいに生霊になられたら困るからな」

「だから、そもそも先生とは……」


「プライド高過ぎて素直になれず、正妻に取り憑いて呪い殺しちゃうんだぞ? 中沢は素直になれよ。まあ、俺の正妻は、中沢だから、大丈夫かな」


「嫌ですよ! 正妻って、それこそ葵の上、呪い殺されちゃう人ですよね?」


「葵の上は勘弁してよ。あんな死ぬ直前までデレ要素がないツンツンは俺もゴメンだよ。お前はもっと素直に紫の上……も意外と素直じゃないな。まあ、性格美人の花散里とか……足して二で割りたいな」


「だから、恋人だらけの光源氏に喩えないで下さいって! 私は私だけって人と添い遂げたいんです!」


「大丈夫。俺は中沢だけだから。だから、中沢も、俺だけにしておいてくれよ? 他のヤロー誘惑するなよ?」



 だから、どうしてそうなったの?



 何か反論したかったけど、作法室に着いてしまった。

 


 こうなったら絶対! 浮気は許さないんだから! 




 ……って、あれ? どうしてこうなったの?





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