第2話 初めての捕り物
おばさんが寝ぼけていたと言う事にして、シンに指図されるまでもなく、皆上空に上がり、あのおじさんたちが行っていた所に急いで行ってみた。そこはゴミの回収センターと取引している工場で、回収した鉄くずをリサイクルして、製品を作っていた。シンは大事な太刀の成れの果てを見つけた。何かしらの気配があるらしい。
「やれやれ、これは何かな」
工場の中に入ったシンが手にしているには、流れ作業の工程の挙句出来上がった、テフロン加工のフライパンだ。
「それ、フライパンと言って料理に使うの」
リラが説明すると、
「これではどうにもならぬ、何やら妙なものと混じった金属になっておる」
ため息をつくと、フライパンをリラに渡し、
「それではこれで料理でも作ってくれ。・・・おや」
工場の隅に目をやると、
「これは太刀の霊魂だな」
と言って、鉄が溶けて飛び散った、そこら辺一帯にある塊の中から、ひと固まりを拾った。
「さすがに料理の鍋などには、なりとう無かったと見える。さて、これを入れてもう一度刀を作らねばなるまい」
「駄目になったんじゃあ無かったとか」
翔は思わず興奮した声で言った。
「しっ、大きな声は出すな。人間に聞こえるかもしれぬ。今は霊魂だから姿は見えないが、人によっては声が聞こるらしいからな」
「そうなんですか。でも、どうやって太刀を作るのですか。
「うむ、この工場には太刀を作る技術は無い。せいぜい小刀だな。仕方あるまい。作ってもらおう。早くせねばの、奴に感づかれては不味い」
そう言ってシンは、工場に居た年配の作業員の側に行き、鉄の塊を見せながら、何か耳打ちした。作業員は今やっていた事を中断し、どんよりしたまま、鉄の塊を高熱で溶かしながら、ナイフらしきものをコチコチと形作った。しかし、せいぜい刃渡り20センチにも満たない、切れ味悪そうなナイフでしかない。翔は、これでは鬼と距離を縮めなくては打てない事が解って、恐怖で気分が悪くなって来た。
「うわあ、短すぎる」
小声で、呟いた。
「うむ、止めは私が刺すしかあるまい」
シンも呟いた。絶望的雰囲気が嫌で、リラは
「あたしはこのフライパンで、頭でも殴ろうか?」
と言った。
すると、シンから、
「それも良いが、声がデカい」
と注意された。そして、
「計画は変更だ。日の国に帰ろう。温泉にでも入りたくなったな。その後練習がてらあの辺の鬼の欠片からやっつけようか。ここはどうやら、本体に近そうだ」
「ひぇっ」
二人は声を殺して悲鳴を上げ、USBBを後にした。
帰ってくると、意外と時間が経っていない事に気がついた。せいぜい1時間ほどであろうか。
帰り着くと、シンは居なくなったので、温泉に入りに行ったのだろう。翔とリラは何だか不安で、内風呂に入ることにした。温泉を引いてあるそうなので、同じだよねと言い、部屋からは出るまいと決心した。シンは一晩帰ってこなかった。ほぼ新婚なので遠慮したのかもしれないが、翔は遠慮は無用だと、言っておけばよかったと後悔して、不安な夜を過ごした。随分臆病になった気がしたが、ある程度の技量があると、敵対する者の危険性が察せられる。リラを守るには自分だけでは無理なのが判っていて、翔にはそれが恐怖だった。
朝になってシンがふらっとやって来た。
「どうして泊らなかったんですか。こっちは、奴に嗅ぎつけられていないかと、ひやひやしていたんですよ」
翔はシンに思わず言った。
「しかし、我は予約していなかったぞ。満室とか、ゆうておった」
急に現代的な事情を知っているシンである。
「朝飯が終わったなら、例の男たちに喝を入れに行こう。白状させて牢に入れるのが筋だが、目立ちたくないし、鬼の気を始末した後、ちょっとした災難に遭う程度にしようかの」
「はい、はい」
「おや、帰り支度か、2,3泊予約していなかったか。何度も言うが目立つんじゃあないぞ」
「絶対もう目立ってますって。写真受け取って帰りたいです」
「そうかな」
写真を受け取りに行くと、随分綺麗なリラが写っていた。リラも少し喜んだが、内心不安でいっぱいである。旅行気分は吹っ飛んでいて、それから三人は村役場に寄った。例の二人は役場勤めだった。シンはつかつかと、カウンターに行くと、
「桂木康夫さんか、桂木博さんと言う人は居ますか。遠縁の者ですが、近くまで来ましたから、会いたいなと思って寄ったんですけど」
シンはすらすらと、出まかせを言っている。驚くほど現代になじんできた。
「あら、そうなんですか。生憎二人とも、昨日の大雨で、紅琉川に点検に行っています」
「そうでしたか、ではそっちに行ってみます」
シンは二人の所に戻ると、
「丁度良かったな」
と、ニッと笑った。また凄味が出て来て、翔とリラは涼しくなった。
紅琉川に行くと川岸に二人の男が居た。
「居るな。用意は良いか」
「って、どんな用意です」
シンはため息交じりに、
「構えておれ」
と言い置き、シンは二人の所へ素早く行き、何か言っていると思っていると、二人は倒れ、火の玉が二つ翔とリラの方へ素早く飛んで来た。翔は捕まえようとするが、動きは速い。取り逃がすわけにはいかないと思い、負けずに素早く蹴って見た。当たってふらっと落ちかけたが、落ちはせず案の定、逃げようとしている。そこでいつもポケットに入れているビー玉を投げると当たり、落ちてきたところを踏みつけたが、火は消えず、結構足の裏が熱くなって来た。往生際の悪い奴とばかり、踏み続けどうなるかなと思っていると、だんだん火の勢いは衰えて来た。しかし消えてはいない。で、どうしたものかとリラを見ると、リラは水鉄砲を何処で仕入れて来たのか手に入れていて、水をかけて火を消そうとしている。
「消えるのか、それで。何処で手に入れたんだ」
「ホテルの土産物売り場だよ。多分とどめって、火消しだと思ったんだけど、消えないねえ。普通の火じゃあないね」
「そりゃそうだろ」
康夫と博を川に落とし込んできたシンが、そんな様子をしげしげと眺め、
「お前達、闘気が全くないな。普通の人間でも闘気のあるやつが昔は居ったものだが、どうしたものかな。今更、修行してどうなると言うものでもなさそうだが」
「その点は、強烈兄弟はありそうだな。強烈に殺させよう。リラ、強烈のどっちか呼んでよ」
「何であたしが、水鉄砲で忙しいのよ。かけ続けていないと勢いが増しそうな気がするの。あんたは手が空いているでしょ」
「いや、これでも睨みながら踏んでるんだ。気を抜くと逃げられそうだ」
「と言う事は、呼ぶ役目は私かのう」
シンが、申し出て来た。
「そうなりますね。でも手っ取り早くしたいなら、ご自分で殺してください」
「しかし始めの打ち合わせでは、君達で何とかする事になっていなかったかな」
「いえいえ、打ちのめすだけです。とどめの話は無いです」
「私の役は本体の止めだけだったはず」
「とにかく、こいつらの止めは決めていないです」
「もう、ごちゃごちゃ言わないで、さっさとやってよ、腕がだるいし、水ももう無いんだけど」
「はいはい」
シンはさっさと闘気で殺した。
「強烈を呼ぼうかのう」
「それじゃあ、俺らは用無しって事で、帰らせてもらえませんかね」
「しかし、役には立たぬが、私と別れて大丈夫かな」
「やだ、大丈夫なはず無いだろ翔、あたしらもせいぜい小物捕まえながら、一緒に居させてもらわなきゃ」
「そうだね。すみませんが、雑用などしますから、居させてください」
「ふむ、それで決まりの様だな」




