表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/16

VSゾンビ②

 俺の対面したゾンビの特徴だが……


 ……まず腐臭は、ない。


 助かる。


 耐性スキルでもなければ、死臭とかシャレにならん。


 死体も腐ってはおらず、遺体の損壊もそれほどでもない。


 つーか。

 実際問題、腐ってたら動けないと思う。


 動くには、筋肉だって必要だし。


 骨だけで動けるならスケルトンに近いし。


 魔法で外骨格のように死体を動かすなら、幽霊に近いだろう。

 

 では。

 今、俺を後ろから追いかけるゾンビはどんなかと言うと……


 顔面に大きく丸い目、体全体にガイコツ+黒いゼリー状の物体がガイコツを包み込んで……ぶっちゃけ、黒ゼリーはウェットスーツのようにも見え、ガイコツモチーフの仮面ライダーみたいだった。


 そんなゾンビだった。


 他に特徴がもう一つ。


 ガイコツヘッドの下には洋服を纏っていた……


 ……そう洋服だ!


 ……それも女子高生のブレザー制服!


 そんなんを着ている。


 ただし。

 へそ出しの胴体部はガイコツで、太ももや二の腕はガイコツ……で、えちえちな肢体ではまるでなかったが。


 ちなみに冬服でマフラーなんかしてる。


 このゾンビ、現代日本人のJKの死体が素材になってたりしないよね?



「なあ創造神?

 なんでゾンビが女子高生なんだ?」


「あ。

 鈴木さん、ようやく落ち着いた?」


「うん。

 女子高生でめっちゃ落ち着いたわ」



 冷静になれたので結果オーライでいいけれども。


 それはそれで突っ込みどころはある。


 

「おいおい。

 まさかこの世界のゾンビ、滅んだ現代の地球が素材になってたりとか言わないよな?」


「ゾンビの素体は、日本から死体を持ってきたわけじゃないよ。

 生前の彼らの心のおり……悪意が黒色ゼリーを生み出してるのは確かだけど」


「……(う~ん。

 やっぱそれ、素体になってねーか?

 むしろより魂的な意味で)」


「違うって。

 証拠に……

 ……殺してあげると、ちゃんと成仏するよ。

 不要な心の澱を洗浄して、本来の奇麗な魂となって天国行きさ」


「……ならいいけどさ」



 ちなみに天国はこの異世界ではないらしい。


 それだと創造神、清掃業者みたいだな。


 よその世界の汚れた魂を清掃し、いくらかお金をもらい、そのお金で娯楽にチート転生者ごっこのできる世界を作ったりか?


 ま。

 実際に掃除するのは俺なんだが。



「気になるなら、供養してあげるといいと思うよ」


「了解だ」



 覚悟を決めて振り返ると、JKゾンビを結構引き離せていた。


 黒色ゼリーの性能はそれほどでもないらしく、おっさんでレベル0の俺の走力でも逃げられる程度の速さだ。


 とはいえ。

 普通に徒歩程度の速度は出ており(ゼリーが筋肉の代わりとなっているのか?)油断はできないが。


 それも生身で戦うならば、といったところか?



「そろそろ試すことにする!」



 俺だって、ただ逃げていただけではない。

 

 強制転移の際にカウント0となっていたカウンターが、この草原に飛ばされてからと言うもの


 +(プラス)方向に!


 カウント加算されているからである。


 創造神は言った。


 異世界で過ごした時間だけ、無人世界に転移可能になると!


 俺は、転移可能時間を稼いでいたのだ!


 となれば!



「転、ぃ」



 ひゅん!



「ぃ移、うわわわ、うわっ!」



 転移成功!


 一瞬で先程の橋の上に戻る。


 それもパジェ〇のすぐそば。


 結構な距離を走ったにもかかわらず、元居た場所に転移可能だったのは……


 ……どうやら俺が移動した距離だけマッピングされるようで、そのマップ内なら自在に転移可能なようだ。


 直感でそうわかる。


 草原=異世界も。


 橋の上=無人の現実世界も。


 地図上で重なっているようなのだ。


 あ。

 それと転移は無詠唱でいけるみたいです。


 て・ん・い、と全部言い切る前にこっちに飛んできちゃって驚いちゃった。


 そして。

 今度はカウントが減算されている。


 異世界では、カウントが増え。


 無人の現実世界では、カウントが減る。


 異世界で過ごした時間だけ無人の日本に転移可能となる、創造神の言うとおりだった。



「パジェ〇起動!」



 オフロード車を起動させる。


 こんな大型車動かすのははじめてで、ちょい怖いが周囲に車の姿はない。


 何より生身でゾンビと敵対するのはシャレにならんし。



「パジェ〇発進!」



 運転も無詠唱で動かせるのだが、こういうのは気分である。


 異世界の草原へと舞いり、パジェ〇を加速させる。


 さすがはオフロード車。


 草原も普通に走れる。


 途中で思いついて走路上の草を『あちらの世界』に転移させると、より走りが快適になる。


 あっという間にゾンビに接敵だ!


 フロントグリルガードもあることだし、車体のへこみは気にせず、運動エネルギーをぶちあてるのみ……


  ……なのだが。





 ひらり←舞うマフラー(冬服なので)が視界に……





 ……見えてしまった。



「くそぅ」



 いや。


 無理。


 ゾンビとはいえJKの制服着た女の子を轢き殺すとかちょっと厳しいわ!



「それに見た目はあんなんだが、中身は心を持った異世界人だいいちむらびとかもしれん。

 治癒魔法で回復したら、エロエロの美少女の姿に戻って、ご主人様ステキ抱いて!ってことも」



 作戦変更。


 急ブレーキである。


 パジェ○はJKゾンビに数十センチというところで急停止した。



 キキ~ッ!



「鈴木さん。

 ゾンビに知性はないよ」



 いや。

 俺だって、そんなうまい話があるとは思っていない。


 このゾンビは心があるタイプには感じられない。


 動いてはいるが、意志ではなく、もっと単純な命令で動いてる……浮遊霊?みたいな存在に思える。


 というか。

 普通に俺を襲ってる。


 それは最初からわかっていたのだが……


 ……普通にビビってしまったのだから、仕方がないじゃないか。



  グイッ!



 フロントグリルガードをつかみ、足をかけ這い上がろうとするゾンビ。


 うむむ。

 やはり意志のある存在とは思えん。

 


 グオオ!


 

 ガイコツの口が開かれる。


 俺を襲ってどうするのか?


 食う気なのか?


 それはわからないが、少なくとも獲物を襲う動物まものにしか見えぬその姿は、間違ってもご主人様ステキ抱いて展開になりそうな内面を持っているとは思えなかった。


 残念だ。



「つーか。

 フロントグリルガード裏目ってるし。


 ……て・ん・そ・う!」



 慣れてないこともあり、念のため声を出してはっきりと言うと、活舌ばっちりの詠唱とともに、JKは『あちらの世界』へと消えた。



「やはり、自分以外の魔物も転移=転送可能か」


「正解。

 その通りだよ~」



 だよね。


 そうでないとこの状況を突破できないし。


 しょきそうびの中にいれば、今のように一撃で殺されるのは防げる。


 即死さえしなければ転移を使って魔物を倒し、レベルを上げて……



「って仕様なんだろう。

 転移の使用にMP消費がないというのも助かる」



 今のところ転移、転送やり放題。


 HPMP表示もない簡単ステータス表示も、この使いかってのよさなら、むしろ歓迎だ。



「ま。

 JKをぶっ殺すのは心理的ににちょっとアレなんで、そこは問題だが」



 ゾンビとはいえ、服装はJK。


 これではパジェ〇で轢き殺すプランAは使えない。


 ……やむおえん。


 プランB開始である。


 プランB……


 ……ようするに能力チェックしつつ、この異世界のルールを調査しつつ、JKゾンビの処遇を考えましょう作戦。


 アドリブとも言うが、結構何とかなるものだ。


 ブラック企業勤めで上司の無茶ぶりを振られ慣れてたせいかもしれん。


 泣き言を言う前に体を動かせ……動かしたぶんだけ成果があるといいな、という行動が身に沁みついているんです。


 結果でた成果がこれだ。





①魔物に転移=転送の制限時間はない





 これ重要。


 せっかくあちらの無人世界に飛ばしたのに、俺自身のように、制限時間制で戻ってこられては気が休まる暇もない。


 JKゾンビの他に、あちらへ飛ばした草や土もそのままである。


 となればひとまず転移さえしておけば時間は稼げる、ということだ。


 心のメモ帳にメモをする。



『敵、物体は時間無制限に転送可能』



 ちなみに。

 あちらに転送させただけではレベルは上がらなかった。


 討伐とは加算されないらしい。



「そりゃそうだ。

 JKゾンビまだ死んでないしね。

 向こうでウロウロしてるしね」



 あとは、世界を隔ててもえものの位置が感知できるらしく、俺の方へ向かってきている。



「う~ん。

 となるとずっと放し飼いとはいかないか。

 俺の位置がわかるなら、あちらの世界での安全が担保されなくなってしまう」



 今は午後3時前。


 せめて夜は安全な『無人の現実世界?』で睡眠をとりたい。



 寝こみをJKに襲われるのは歓迎だが……ゾンビはダメだ。

 それまでに討伐方法を考えないと。

 





②転送発動の射程距離は10メートル





 これは実際に計測しながら土を飛ばして確かめた。


 時間カウントを稼いだ後『無人世界』のホームセンターに転移。


 計測用にメジャーを『買い物』して、それで射程距離を測ったのである。


(ちなみにときめき橋のすぐそばには郊外型の商業施設街がある。

 車移動の渋滞緩和ため郊外に立派な道路を作る→商店も郊外に→中心市街地の空洞化と言う問題は地方の宿命なのである)


 買い物というか……


 ……入手可能な商品メジャーは普通に持ってこれたんだけどね。



「すみません。

 いただいていきます」



 無人のホームセンター。

 コ○リだ。

 何度かきたことある店舗で品ぞろえがいい。



挿絵(By みてみん)



 無人だが。


 メジャーが周囲の商品の中で光って見えた。


 というか、不要な家電なんかは、グレーに反転して見えている。


 創造神に聞いてみた。



「これって欠品?」


「そう。

 異世界に持っていかれては困るものもある。

 例えば音楽や映画を持ち込まれたら、未発達な異世界の文化は完全に日本文化に取り込まれてしまうだろう。

 なのでCDや雑誌なんかは欠品となる。

 コンビニに行くと雑誌の棚だけ欠品になっているから。

 同様に鈴木さんへの支給品もなんでもとはいかない」


「了解した……ていうか。

 そりゃそうだ」



 創造神だって俺に無人世界でニート生活を堪能させたいわけじゃないしな。

 

 欠品は了解として、目的のメジャーは大丈夫だ。


 俺の内心の、転移射程を計測したいという意思を、テレパシー的な何やらで創造神が読み取ってでもいるのかもしれん。


 不要なもの……例えば家電なんかいらんだろ、ということなんだろうか。


 だったら。

 お腹が空いた~、と祈れば食べ物もいけるのか?


 しかし。


 今は確認する時間が惜しい。

 速攻、メジャーを確保(万引きみたいでちょっと気分がモヤっとした)すると異世界に戻らねば。


 転移直前の視界にはホムセン=コ○リの駐車場が見えた。




挿絵(By みてみん)




 考えたら店内からでも転移可能だったんだが、習慣で外にでてしまった。


 駐車場に止まっている車は少なく、数少ない車両もいずれもグレーに反転していた。


 パジェ〇と違って、俺が入手するのは不可ということなのだろう。


 もちろん異論はない。


 今はそれどころではない。


 減算される時間カウントも惜しいし、JKゾンビが接近してくるのも地味に怖い。


 ぶっちゃけると俺の家もすぐそばなんだが、ゾンビに自宅バレしたくないのもあり、今は回避。


 メジャーも家の工具箱にはあるのだが、今はあえてホムセンに行ったというわけ。


 この世界の商業ルールの確認がしたかったのもあるし、まずは能力の確認が最優先……


 ……というわけで10メートルの射程が確定したわけなのである。





③魔物の生態。





 どうやら魔物には魔物同士の縄張りがあるようだ。


 JKゾンビを転移後、異世界の草原で一息ついていると、


 もう一体。


 ステータス画面の地図上に現れる魔物の姿があったのである。



「ゾンビ2号か?」



 目視で確認。



「うむ。

 目標をリーマンゾンビと呼称する」



 2体目のゾンビは女の子ではなかった。


 背広姿だ。


 おっさんのゾンビなら気にせず倒せるような気がする。


 いっそ、もうっちゃうか?


 だが。

 しばし待て。


 リーマンゾンビを倒した後、次の魔物もゾンビとは限らない。


 攻撃力に優れた魔物にパジェ〇の装甲が破られる恐れはある。


 速度に優れる魔物を俺が目視でとらえられるのか?


 となれば。

 確実に対応可能なゾンビを残しておくべきだ。


 少なくとも俺自身の能力とこの世界のルールを確認するまでは。


 確認。


 俺は、JKゾンビを今一度こちらへ(無人世界→異世界)と転送させた。


 リーマンゾンビとの距離は数メートル。


 離れる二人。


 およそ100メートルまで二体が離れた。


 獲物オレの優先権はJKにあるらしくリーマンは俺から離れていく。



「JKに近づかないとは……なかなか紳士なおっさんじゃないか」



 冗談だ。


 だが。

 この性質が不変ならば使える。


 今後、ゾンビを上回る強力な魔物に遭遇した際、転移でゾンビの側に移動すれば、魔物は逃げていく。


 優先順位を再度確認。


 



 JK    俺   リーマン




 この現状では……




    JK→俺      リーマン→JKから100メートル離れる。




 ……と移動する。


 第一発見者優先のようだ。


 ということは、やはりJKゾンビを残しておくのはアリかもしれない。


 もっと強力な魔物に狙われた際、JKを盾にすることで比較的安全が確保できるからだ。

 

 2体の間を行き来し時間カウントを稼ぐ。





④異世界→異世界および無人世界→無人世界の転移は不可。


 



 JKゾンビをリーマンの側へ転送させる際、俺が異世界、JKが無人世界に別れたままでは、転送が発動しなかった。


 これは予想してた。


 生前に読んだ『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』という小説もそうだったんだが、間に世界間の転移を挟む必要がある。


 つまり。


 異世界→無人世界→異世界


 と、こんな感じ。


 慣れれば問題ない。


 MP制限ナシが効いてくるね。






⑤転送後は地面に接地する。






 う~む。

 これは致し方なし。


 異世界の草原→無人世界の橋の上から、川面へ……と、草や土を転移させようとしたのだが、キャンセルされて橋の上に積まれてしまった。




              魔物

               ↓

              落下

               ↓

俺×魔物 →転送→     ぐちゃ!




 これは禁止ということだ。



「そりゃそうだ。

 これがアリだったら無双しちゃうし」


 

 だがしかし。

 問題は水面がNGなのか高さの変更がNGなのかということである。


 確認。


 無人世界の河川敷へ。


 幸い、高速の降り口からすぐだ。


 さっき入手したメジャーを岸から川の水面へ落とす。


 時間を気にしながらの作業で気が焦る。


 だがこの確認は超重要。



「やった!

 成功だ!」



 川面にはブクブクと沈んでいくリーマンゾンビの姿。


 俺が手にしたメジャーが水面に振れたことで川面がマップに登録され、転送可能となったわけだ。


 効果範囲は俺の移動した部分に限られる=高速道路上で川の上を通った部分も含まれる=ただ高さの変更がNGだっただけだ。



「うまくすれば……水面から釣り糸を垂らせば水深ふかくも可能なんじゃないか?」



 さすがに水深数10メートルに落とされれば魔物も無事ではすむまい。


 少なくとも陸上で暮らす魔物に関しては無双できるんじゃね?


 も一個お試し。


 ブクブクと沈んでいくリーマンゾンビ。


 ぽい。

 

 川底から異世界へと転移できた。


 どうやら手で触れていなくても、釣竿みたいなもんと認識されるようだ。


 これはラクチン。


 釣り糸を用意する手間が省ける。



「というか。

 最初の攻撃時は射程10メートルだが……

 一度異世界→無人世界へ転送させたあとが、射程無制限と言うことか!?」



 まとめ。






⑥いったん魔物を無人世界に転送させる(射程10メートル)


 →無人世界から異世界へ再転送(射程関係なし)


 =無人世界に転移した時点で透明な釣糸で俺とつながれている状態と考えられる。


(ただし異世界にいる俺が、無人世界に放った魔物を異世界に再転位はできない、あくまで俺が一度魔物と同じ世界に移動しなければならない)






 といったところだ。


 再び、ドボン。



「JKじゃないリーマンのおっさんの生前は気にならんし、いや~ゾンビ2体目がおっさんで本当助かった~」



 まったくだ。


 二人目も女の子だったらメンタルがやられるところである。


 が。

 これで希望が見えた。


 というか、無双確定じゃね?




「ピコン、レベルUP!


 鈴木無一郎

 異世界の紳士

 レベル0→1」


「あ。

 ゾンビも水死するんだ!?」



 この世界のゾンビ、どうやら水死するらしい。


 ガイコツを纏う黒いゼリー状の本体が呼吸をしてるってことなのかね?


 深い考えはなく釣糸代わりにしただけだったんだが、結果オーライだ。


 おっさんの生死とか気にならない。


 おまけに魔物だ。


 せいぜい生前おっさんが素体に流用されてる程度のただの魔物……俺が気を病む筋合いはまったくないのだ……フハハ!



「レベルUP効果で精神耐性スキルでもついたのかね~ハッハッハ」


「それはないけどね。

 いや~。

 鈴木さんが慎重に攻略を進めてくれて、製作者の僕としても嬉しいよ~」



 創造神が喜んでくれたようで何より、頑張った甲斐があったというものだ。


 レベルUP効果の精神耐性はないようだが、それでも明らかに若返っているのが実感できる。

 

 何だか髪もフサフサして異世界の風にそよいでいるようじゃないか?


 さて。

 ひとまずレベルUPは達成。


 髪だってフサフサ。

 神様との仲も深まった。


 若返った身体の性能を試したいところが、それだってリーマンゾンビの尊い犠牲のおかげとなれば、まずは供養が先だろう。


 というわけで、イマココなのがのゴミ処理場である。


 以前、引っ越しのゴミ出しの際に来たことがある。

 

 時刻は午後4時。



「入り口のゲート開いてるな。

 でもゴミ処理場でいいのか?

 火葬場の方がよくないか?」



 地元の火葬場が、ちょうど現在地と反対側である。


 火葬場に比べると焼却場はやはり汚い気がするんだが……



「大丈夫。

 まかせて」



 と、創造神に言われるままに、処理場内のゴミ捨て場に。


 ポイする手前まで車で入れるのでラクチン。


 引っ越しの際は、係の人が誘導してくれたが、今日は俺一人。


 そもそも無人世界は俺だけしかいない。


 それでも。

 何とか記憶に従って、ゴミ捨て場にたどり着けた。



「おおっ!

 ピカピカの新品じゃないか!?」



 建物=というか焼き場が完全に新品になっている。



「ふふん。

 この無人世界は、鈴木さんが以前住んでいた日本からコピーして持ってきたものだ。

 コピーの際に建物の記憶も読み取れるので、そのデータを元に新品に戻すも自由自在というわけさ♡」



 そりゃそうだな。


 わざわざ古びたものをコピーする意味がない。


 というか。

 あらためて無人世界=コピー世界というのを実感したぜ。



「これなら火葬場=葬儀場としても申し分ないか」



 納得した俺は、リーマンゾンビの遺体を転移させる。

 

 創造神のレクチャーは続く。



「無人世界の設備は3時間おきに更新可能。


 0時、3時、6時~という具合に。


 お好みで設備の年代を変更も出来る」



 ということで、ゴミ処理場を新品から、築うん十年にも変更できるらしい。


 やらないが。


 設定の仕方は、ステータス画面から行けた。


 ゴミ処理場の場合は次の3時間~午後6時に火を入れて燃やしてしまえるらしい。


 夜中にもゴミ捨てにこれそうだな。


 便利だ。


 他の施設はどうなんだろう?



「食べ物屋なんかもいけるんじゃないか?」


「その通リ。

 ただし注文は3時間おきだ。

 そこは僕がずっとつきっきりというわけにはいかないから、許してほしい」


「充分だ」



 懸案だった食料だが、外食は可能らしい。


 よかった。



「鈴木さんが自分で調理する分には、3時間しばりはないよ」


「そうか。

 自動で作業内容=調理レシピがインストールされたりとかは」


「それは……どうしようか。

 鑑定魔法の変形で……ここをこうして……え~と……」



 言ってみるものである。


 創造神が新たな魔法を作成しはじめた。


 これなら、自在に色々なお店のレシピを習得できるんじゃないのか?



「ただし、限定された能力とする。

 レベルUPごとに一回かぎり、お好みの能力を鑑定インストール可能というのはどうかな?」


「ま。

 そんなところか。

 最初から何でも出来ちゃったら、攻略の楽しみがなくなってしまうし」


「そういうこと。

 僕も鈴木さんが丁寧に攻略してくれて嬉しかったし。

 ゾンビや魔物の性質をあそこまで逐一丁寧に調査してくれるとは」



 性分なんだ。


 ビビリとも言うが。


 ともかく。

 リーマンゾンビの供養も終わってひとまず安心。


 あとは異世界へ戻って時間をチャージといこうか。


 何とか夜までには時間を稼ぎたい。


 魔物におびえながら寝るのもしんどいからな。


 今が午後4時過ぎ。


 季節は7月だから、日の入りは午後7時、日の出は朝の4時半ってところ。


 となると……



「あ。

 言い忘れてたけど、夜は魔物はお休みだから」


「え。

 そうなん?」


「魔物の勤務時間は9時~5時。

 夜は魔物が人間を襲わないから、安心してゆっくり休めるよ。

 そのへんは福利厚生っていうかね」



 どうやらこの異世界は、異世界人にとっても暮らしやすい世界らしい。


 夜は安心して寝られるとか、福利厚生がちゃんとしてる。


 創造神の子孫が暮らす世界のせいもあるのかな?


 それに魔物だ。

 魔物のくせに9時~5時なんて生前の俺より人間らしい生活じゃないか。


 俺が以前勤めていたブラック企業なんて……



「さて。

 じゃあ。

 また聞きたいことがあったらいつでも呼んでね」


「ああ。

 頼りにさせてもらう」



 スマホの着信履歴には創造神の電話番号が残っている。


 味気ないが便利は便利だ。


 実際。

 創造神と話したのはこれだけじゃなくて、他にも色々あるのだが、そこは一つづつ実地で確認していけばよいと思う。


 夕食の注文が可能となる午後6時にはまだ時間がある。


 さて。

 どうしようか?



「やはり。

 魔物狩りでレベルUPかな?」


 時刻はまだ午後4時半。


 ホワイト企業に勤める魔物たちも勤務時間内とあれば、俺に付き合ってくれてもよいというものだ。


 元ブラック企業勤めの若干の私怨もあるが。


 そんなわけでモチベも充分な俺は、草原に再び立つのである。


 次回は魔物との戦闘だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ