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拠点テントで自己紹介「自炊天ざる」

 時間カウントがゼロになったところで、拠点であるテントに帰還する。


 実際に体験したことで、アルシアちゃんと白夜ちゃんにも転移システムがわかってもらえたように思う。


 二人のテンションが上がっている。


 話には聞いていても、実際に神の世界に転移すれば驚天動地→好感度上昇、ということだろう。


 よきかな。



「私が食事の準備をします。

 お昼を食べながら、時間カウントがたまるのを待ちましょう」


「はい。

 ありがとうございます、無一郎さま」


「無一郎様、私が何かお手伝いを」


「いえいえ。

 異世界の料理をお作りしますので、私にお任せくださってかまいません。

 お二人はくつろいでください」



 手伝いを申し出たのは白夜ちゃんだ。


 ネトラレは面白くないはずだが、俺が詐欺師ではなく、ガチで神様から遣わされた能力をもっているとわかり、敵対はやめたのだろう。


 表面的にはだが。


 今はそれで充分だ。


 気持ちは嬉しいのでフォローしておく。



「代わりに夕食はパーラ王国の食事をお願いできますか」


「そういうことなら、おまかせください。

 ね。

 白夜」


「はい、アルシア様」



 俺としては、パーラ王国の食の事情を知っておきたい。


 こちらがよいとオススメしても異世界人のニーズとはずれている可能性もあるからな。


 そのためにも異世界のことを知りたい。


 出来れば、俺は異世界料理メイン。


 二人は日本食メインだと都合がよい。


 ……と。

 そんなプランを話すと二人は賛同してくれた。


 それらをとっかかりとして、話を進めていく。


 アルシアちゃんたちはエルフ領を拠点にしているらしい。



「エルフ領には、立派な『宿』があります。

 無一郎さまのご期待に応えられるかと」



 宿……迎賓館のようなものかもしれない。


 エルフ領まで30キロはあるが、オリンピック選手並の運動能力を考えれば、2時間。


 充分、活動範囲。


 その距離も転移すれば一瞬だ。


 そう伝えると、ほうっと溜息を上げ、感嘆していた。


 よしよし。


 さらに好感度上昇。


 俺が役に立つ存在と知らしめねば。


 次の一手は、食。


 日本食チートだ。



「昼食は『お蕎麦そば』を考えています。

 エルフのおそばは有名ですが、異世界のおそばが、食べなれたお二人のお口に合うといいのですが」



 謙遜しておくが、醤油だしは衝撃なはず。


 やはり。

 そばには醤油だしがあうので、塩味でしか食したことのない二人がそば好きであるほど、感激するに違いないのである。


 創造神の太鼓判ももらっているし。


 というわけで、お湯を沸かす。


 油の方は、まだ熱が残っているので先に温まりそうだ。


 天ぷらを作りながら待とう。



「天ぷらはおそばに合いますよ~」



 興味深げな二人に説明。


 やはり。

 揚げ物も異世界には存在しないらしい。


 これは勝てる。


(ちなみに調理道具、食材は自宅から持ってきている。

 さすがに天ぷらのネタはスーパーで調達したが)


 見た目のインパクトを考え、拠点のテント前にガスコンロを設置するのは成功だった。


 時間カウント待ちの間、退屈しないし、ちょうどいい話題にもなってよかった。


 イケメンに生まれ変わったとはいえ、童貞コミュ症気質がすぐ変わるというものでもないからな。


 ガスコンロは、魔道具ですか?などと感心された。


 お約束だが、いい気分。


 ゆであがったそばを水で洗うのはさすがに一旦、自宅へ戻る。


 二人の目の前で転移するのもイベントになるはずだ。


 完成。



「どうぞ。

 めしあがれ」



挿絵(By みてみん) 




「「おいしい♡」」



 まず。

 乾麺に驚いていた。


(なるほど。

 異世界ではすべて打ちたての生そばというわけだ。

 それはそれで豪勢な気がする)


 保存食として便利そう……と最初は思ったのだが、実際食べてみると味にびっくり。


 醤油だしも見た目の黒さに違和感を感じたが、とんでもなく美味しい!との感想。


 野菜はまだわかるが、天ぷらも衝撃で……すごく高級な料理なのでは?と尋ねられた。


(ん~。

 王族であるアルシアちゃんにキャンプ風の野外調理の食事……どうかとも思ったのだが、気にする風もない。

 異世界の調理は薪を使用して……現代でいう、キャンプやバーベキューのようなものだから、違和感がないのかもしれない。

 むしろ高級と喜ばれるとは……)


 それより一番驚かれたのが……


 ……海老えびである。



「驚きました。

 神の世界では、海の食材が自由に手に入るとは」


「というかまあ。

 普通に海に行けますからね」


「信じられません!」

 ↑

 アルシアちゃん


 白夜ちゃん

 ↓

「こくこく」


「魔物もドラゴンもいませんしね」



 ドラゴンが守る異世界=パーラ王国。


 海に自由に行き、漁で海産物が取れるというのが、どうにもしっくりこないらしい。


 アルシアちゃん白夜ちゃんはともにレベル8だというが、その二人でも絶対に顔も見たくないほど、ドラゴンは絶対強者というのだ。


 ……運よく勝ててよかった。


 というか。

 水流ウォータードラゴンを倒したから、この近辺の海は安全地帯となっているんだが。


(さすがはドラゴンのなわばり。

 半径10キロ程度は、空白となっている。

 その向こうは別の個体のドラゴンの生息地なんだろう)



「食後の散歩に海にいってみます?」


「「ええええええええええ!!!!」」

 ↑

 これが一番の驚きっぷり。


「信じられません。

 ドラゴンの討伐なんて」


「ありえません。

 ドラゴンを倒すなんて」


 と二人、声を合わせる。


 おずおずとアルシアちゃんが、たずねた。



「む、無一郎さまのレベルは……

 たいへん失礼なことをお尋ねしますが……

 ……いくつなのでしょうか?」


「18ですが」





「え!ええええ!」


「ええええええ!」






 なんて感嘆符が連呼するような悲鳴を上げるアルシアちゃん、白夜ちゃんなのだった。



「姫様、ご無礼は承知ですが私が鑑定を」


「そ、そうね」



 そんなことを言い出した。


 これまで気を使っている風情だったが、素が出ている。


 ん~。


 結果オーライ?



「無一郎さま、失礼ですがレベル18というのはにわかには信じがたく……

 まことに失礼ですが……

 無一郎さまの能力を鑑定で確認させていただくわけには」


「いいですよ」



 いや。

 転移能力を見せつければ、二人に俺の力を信じさせるのは簡単だが、二人以外にも異世界人はいる。


 たとえば。

 今晩うかがうエルフの宿の住人に、レベル18マジだってよ、と理解してもらうには、鑑定がてっとりばやいだろう。


 ちなみに。

 簡易鑑定だが、ゾンビの出現(一か月前だそうだ)と同時に顕現した能力で、白夜ちゃんはその1回を未使用で残しておいたらしい。


 昨日ちゃちゃっと作った能力が、一か月遡って異世界で施行されてるが、創造神の人外の能力なら驚くことじゃない。


 むしろ当然だろう。



「ほ、ほんとうに……れ、レベル18!

 あわわわわ……」


「無一郎さま、もはや神?」



 二人が物理的にもひっくり返って、食べ終わっていたからよいが、おそばをひっくり返しかねない驚きようだった。


 仕方がない。


 時間カウントもたまったことだし、二人に海を見せて納得させてあげようか。



「いえいえいえ」


「無理です。

 ありえないです」



 何だかもう、海=恐怖を超えた禁忌……となっているようである。


 仕方ないので、彼女らにとっての異世界=無人世界の海から徐々に慣れさせていくことに話はまとまるのだった。


 何とか頑張って説得した。


 何故って、ヤリ部屋ならぬアルシアちゃん名義のマンションは、河口に面している。


 そこまで海を怖がられては、ヤリ部屋に転移することすらはばかられるのだから。



「う、うみ。

 本当に、うみ」


「うっそ。

 ひろ。

 広~」



 完全に素に戻った二人は、もはや上流階級なふるまいも脱ぎ捨て、普通のお嬢さんであるが、そっちの方が俺も接しやすい。


 結果オーライだ。


 この異世界では、限られた能力(竜人の持つ、ドラゴンの探知をかいくぐる隠ぺい能力だそうだ)をもつ特定種族以外は、ドラゴンの生息地には近寄れない。


 海を見ることもなく生涯を終える。


 それを鑑みるに二人の反応は致し方ないのかもしれない。


 何にせよ、二人が海に慣れてくれてよかった。


 きっと子孫まなむすめタワマンをプレゼントした創造神おとうさんも胸を撫でおろしていることだろう。


 異世界人とのカルチャーギャップはかように激しいのだ。


 

 もっとも。

 

 それはそれで。


 意外性があって面白いと俺は思うのだが。


 二人……アルシアちゃんと白夜ちゃんの本性も見れたし。


 キャーキャーと歓声を上げる後部座席の二人を背に、パジェ〇の海沿いドライブは続く……





 

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