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4th esercito  作者: 赤石火飛
6/7

Rovine

それは何気ない一日だった筈だ。


司令に出勤報告しに行って、いつも通りに資料編纂室に行こうとした。


だが、司令付きの中佐に血掟都市(オメルタ)の情報更新を指示された。


これは年に一回やっている仕事で、去年もこれぐらいの時期にやっていた。


面倒だが仕事なのでやらなければならない。

この街は抗争が多く、建物が倒壊するなんて日常茶飯事だ。

だから、地図の更新が追い付かず、一年に一回まとめて更新されるのだ。


因みに実態調査は僕一人でやることになる。いじめかな?


資料編纂室から血掟都市(オメルタ)の地図と過去一年間の事件簿、写真機を持って基地を出る。

具体的に変更箇所は事件簿を見ながら探し、一年前の地図と見比べながら更新していくというしらみ潰しな作業なので多い時は一ヶ月かかる。

通常業務ももちろんある。いじめですね。



建物が建て替わってる場所は写真に撮りながらメモる。

んー、この間の倉庫、もう新しいのが建つのか。



以前の抗争現場から移動して次の場所へ向かう。


裏路地に入り、地図を見ながら事件簿も検める。

えーっと次はほぼ一年前の事件現場か。


探索者と弱小マフィアの殺し合いがあった酒場だ。

今は完全に廃墟になっていて、開けっ放しの店内には脚が折れた椅子と倒れたテーブルが散乱しているのが見える。


「うわぁ」


思わず声に出る。

外観を写真に撮り、何となく中に入る。

うわっ、まだ血痕あるし…。


何をしたらこうなるのか?天井にまで飛び散った血の痕が残っていた。

事件簿で確認すると弱小マフィア(半グレとも言う)は落ちぶれた探索者崩れだったようだ。

それが現役探索者と口論になり殺し合いになったと。


顔見知り同士だったのだろう。

探索者を脱落したことを揶揄われて頭に血が上ったか。


結果は弱小マフィアが敵味方を巻き込む自爆攻撃で全員道連れにしたようだ。


店のマスター、とばっちりで死んだのか。哀れな。

冥福を祈って、写真を撮り外に出ようとした。


出る直前、視界の端で何かが太陽光を反射した。

ガラス片か?


丸いな。


形は半球型。木の床に直置き…落ちてる。

割れた水晶玉かと思い拾ってみる。


…取れない。


どうやら床に固定されているようだ。

しかし、なぜ廃墟に水晶?結構、綺麗な水晶なので火事場泥棒が見落とすはずがない。



待て。


そもそも、入ってきた時にこんなものあったか?


入り口の位置と水晶(?)の場所を目測する。

外から見える位置だ。


写真機で撮った店の外観を見てみる。


ない。



僕は大きく飛び退いた。

水晶に謎の文字が現れた。

頭がガンガンする。


ヤバいヤバいヤバい!!


頭が割れてイカれそうになるを耐えながら近くにあった椅子を水晶に投げつける。

椅子が水晶に当たるが水晶は無傷だ。


出し惜しみしてる場合じゃない。生命の危機だ!!


「アアアアアアアアッ!!」


持てる全力で床を踏み砕き水晶に跳ぶ。

魔法で足を最大強化して帝国式軍用格闘術で水晶を蹴り抜く。


だが、これは悪手だった。


足が水晶に触れた瞬間、ガチンという音が聞こえた気がした。


僕の目に水晶の文字が入ってきて脳内でその文字が理解できてしまった。


“インストール完了”


僕は試練神の使徒となり、ダンジョンマスター になってしまった。



水晶はダンジョンコア。

コアとマスターは一心同体。

コアの破壊はマスターの死。マスターの死はコアの停止。

ダンジョンマスター はダンジョンコアを守りながらダンジョンを作成し、探索者を呼び寄せ攻略という名の試練を与える存在。

ダンジョンを攻略すると宝具が与えられる。



帝国の国教、ビショップ教が聖地とするダンジョン【神聖と騒霊の図書館】にある資料集の文章だ。


足に激痛が走り、鈍痛が頭に響くので、上記のことはしばらく悶えた後に思い出したことだ。


痛みが治まってきた頃、水晶を見ると床から外れており、まんまるとした形で転がっていた。

静観していても何も起こらない。そっと触れてみる。

淡い光を放ちながら文字が浮き出た。


ダンジョン作成、モンスター召喚、ステータス表示。


ダンジョン作成の文字に触れてみると塔型や地下型などダンジョンの形態が問われた。

上部にDP500とあり、このDPを消費してダンジョンの作成やモンスターを召喚するようだ。


マジでダンジョンコアじゃん。


ステータス表示を押すと僕のステータスが現れた。


ーーー

名前:ピエトロ(Pietro)ルーペ(Rupe)

種族:人間→人間系使徒 レベル:42

眼の色:若草色 髪の色:茶色

性別:男

職業:ダンジョンマスター

MP:6189(50)

STR(筋力):250(50)

VIT(耐久力):242(50)

INT(魔法力):123(50)

MND(魔防力):331(50)

AGI(敏速力):100(50)

DEX(器用度):343(50)

LUK(幸運度):72(50)

スキル:土魔法Lv1 身体強化魔法Lv5 帝国式軍用格闘術Lv5

経済学Lv5 経営学Lv5 地理学Lv4

馬術Lv3 帝国式軍用剣術Lv3 交渉術Lv5

回避Lv7

称号:試練神の眷属 ダンジョンマスター 合金(レーガ)帝国軍中尉資料編纂室室長

館獲り アウトロー デイトレーダー

特殊装備:

ーーー


なんか無法者(アウトロー)扱いされてるし。


てか、僕、土魔法使えたんだ。

身体強化魔法だけかと思ってた。

回避スキルが一番高いってなんか悲しいな。


で、ステータスの(50)って何?と疑問に思っているとダンジョンコアに表示された。


ダンジョンマスター の称号効果によってプラスされた値か。



もう少しステータスを見ていたいが、仕事中なのでじっとはしていられない。

ダンジョンコアを懐に隠し、移動する。


ダンジョンマスター になってしまってしまったことは災難だが悪いことでもなさそうだ。

この力があれば進化もできそうだし、金儲けもできそうだ。


さっさと仕事を終わらして帰るようにしよう。




…。


無心で仕事をしてお昼になった。

適当に近くにあったバールへ入り、コーヒーとサンドイッチを頼む。


昼食を食べながらダンジョンについて考える。

僕はこの血掟都市(オメルタ)基地でも目立つ存在だ。

だから頻繁に街の外に出ると怪しまれる。よって外にダンジョンは作れない。

そうなると街中に作ることになる訳だが、ここがマフィアが蔓延る悪徳の街だ。表通りは論外として、裏通りも、路地裏も、貧民街も、地下水道もマフィアが幅を利かせてる。

こんなに死角のない街はここぐらいだろう。


では、どうするか?

簡単だ。領域(シマ)を乗っ取ればいい。シノギを掠め取るわけじゃない。誰も見向きをしていない地面自体をダンジョンの領域にして血掟都市(オメルタ)自体をダンジョンにしてしまえば、住民たちは侵入者扱いになりダンジョンは勝手に育つ。


ダンジョンコアの記録によるとそれと似たようなダンジョンが過去にもあったようだ。


当然リスクもあり、上級探索者の中にはダンジョンに入るとそれを感知する者がいるらしい。

もし、ダンジョンのことがバレたらダンジョンコアが狙われ、破壊されたら僕は死ぬ。


だが、リターンは大きい。ダンジョン内に二四時間、侵入者が居続けた場合、DPが一人当たり10加算されるようだ。それによりダンジョンは成長し、またダンジョンマスター も成長する。

つまり、進化できる。


これを逃さない手はない。



…。

待て待て待て!?


なんで普通に受け入れてる!?


具体案が出たところで冷静になった。

何故か僕はダンジョンを作ることに積極的になっている。たしかにメリットは大きいがデメリットの方が大きいんだぞ!?


何かおかしい。


まさか思考誘導?



そこまで考えたところで世界が止まった。



そこは世界が灰色に染まって僕以外の全てが停止した世界だった。



『やあ、こんにちは。今日はいい天気だね』


親しげな挨拶をしながら目の前に現れたのは中性的な容姿をした人?髪はショートカットで後ろで纏めている。服装も全体的にダボッとした男とも女とも取れる格好で判断が付かない。声も高すぎず低すぎない子供みたいな声だ。


こんな特徴の存在は見たことがない。見たことがないが、よく似た特徴を持つ存在が資料編纂室に記録されている。


「天災と試練の神」


『せいかーい!おめでとう!!ピエトロ君はボクに選ばれました!これから使徒としてダンジョンの運営に尽力してください!!


ち・な・み・に、思考誘導はダンジョン作成に関してだけだから安心してね☆

ただ、無視し続けてたら思考誘導が暴走して人前でダンジョンを作り始めちゃうから気をつけてね!


バイバーイ』


強制イベントですね。分かりたくありません。灰色の世界が色付き、世界が動き出した。

天災と試練の神はいなくなっていて、僕は食べかけのサンドイッチを持って椅子に座っていた。


………割とヤバい?



どうする?誰かに相談する?誰に?僕は窓際軍人だぞ。同僚にも民間人にも舐められているんだぞ。良くて搾取。悪くて死が待ってるだけだ。同期たちは?

カスト達はどうだ?いや、信用は出来るけど連絡が取りにくい。仮に取れたとしても継続して会うには目立つ。


では、どうする?




………。







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