Super
思うところがあったので今朝は探索者ギルドに寄ってから出勤した。
目的はギルド内で売られているゴシップ誌だ。
ダンジョン探索者を勝手にランキングしたり、世界中のダンジョンの情報や探索者のスキャンダルなんかが載っているので意外と面白い。
【A級探索者ラウロ氏、マフィアの抗争に参加か!?】
なるほど、昨日のマフィアの抗争現場にいた記者の記事はこれか。
日付も抗争のあった日だし間違いないだろう。
それにしても、断言していないのにまるでラウロ氏がマフィアの抗争に参加していたのが確実かのような内容だ。上手いなぁ。
…あ、ラウロ氏は魔人じゃないのか。
じゃあ、報告書にあった魔人はマフィアか。いいなー。
さ、仕事仕事。
ポストに入っていたモンスターの大量発生についてを該当地域の資料に記録する。
こうしておけば次にこの地域で生態系に変化があったときにモンスターの大量発生の兆候か目安になる。
まあ、資料編纂室は軍属だから今回の記録を一般人は知ることができないだけども。
ここにある資料が使われるのは軍部の活動時のみだ。
機密書類が多いので仕方ない部分もあるが、意味がない気もする。
コンコン
ノック音だ。伝令か?
「どうぞ」
「失礼します」
入ってきたのは基地所属の軍曹。ちなみに僕より年上。
「中尉に速達便が届いています。
こちらへ運びますか?」
ここで頷いたらこの軍曹は嫌な顔をしながら渋々と雑に運んでくるのがこの二年で理解した。
僕、一応、上官なんだけどなぁ。
「ああ、取りに行くよ。伝令室でいいのかな?」
「はい。
では、失礼します」
「ご苦労様」
軍曹は僕がご苦労様の“ご”を言った時には扉を閉めていた。
舐められてるなー。
まあ、いいや。それよりも速達便か。
なんだろ?
資料編纂室を出て地上部へ上がり、正面入り口近くにある伝令部隊の一時保管室に入る。
「すみません。資料編纂室のピエトロ・ルーペです。速達便があると聞いてきたんですが?」
「ああ、ルーペ中尉。こちらの封筒です。
こっちの紙に受領のサインをお願いします」
「はい」
差出人は軍本部人事管理部か。
ヤベーとこから届いてるけど解雇通告かな?
封筒を受け取り資料編纂室へ戻る。
さて。
封筒を開ける。出てきたのはきれいに折り畳まれた白い紙。
開くと内容を確認する。
………。
資料編纂室室長になりました。
やったね。
階級相当の給料プラス管理職手当が出るようだ。
仕事内容はほぼ変わらないので給料がアップしただけだった。
え、じゃあ今まで業務外業務をやってたってこと?
…あの基地司令いつか殴り飛ばしてやる。
ぐー。
お腹が空いた。
「お昼、行ってきます」
「おー」
そろそろ切れる頃なので守衛に煙草を渡して街に出る。
少し奮発するか。
着任一年記念や二年目記念を祝った大衆食堂に入る。
数回しか来てないが落ち着いた雰囲気の店で結構居心地が良い。
店に入り、ラザニアと軽めのワイン、つまみにブルスケッタを頼んだ。
早々にワインとブルスケッタが出て来たので、一人だが軽く乾杯する。
昇進おめでとう僕!
ブルスケッタとワインを交互に楽しんでいるとラザニアも出てきたので、ワインと料理に舌鼓を打ちながら血掟都市について考える。
この街はマフィアを中心に栄えたといっても過言ではない。
初代皇帝のパーティが【合金と甲殻の廃聖堂】というダンジョンを攻略し、その跡地に合金帝国が建国された。そんな帝国の建国時に世界中から探索者が集まった。世界中から探索者が集まったのだ。中には素行の悪い者も当然いて、帝都周辺の住民はその悪意に晒されたのだ。
ここまでくれば後は誰でも分かる。帝都周辺の住民を粗暴な探索者から守るために組織されたのが血掟都市のマフィアたちだ。
マフィアたちは建国期から今に至るまで吸収、分裂、合併、離反、新興、崩壊を繰り返しながら生きてきた。
そんな歴史があるからか、この街には独自の文化がある。
最も顕著に出ているのは料理だろう。
パスタやピザはこの街の名産だし、ワインもそうだ。どんなに安物でも飲みやすくて美味い。
よその町ではオメルタ料理と呼ばれ、一種に特産物になっているそうだ。
個人的にはオメルタ料理も美味いが軍事学校時代に学食で食べた唐揚げが恋しい。
ここでは豚や牛は出るけど鶏は滅多に見ないのだ。
卵料理はあるのなぜなのか。
おっと、少し飲みすぎたかな?
脳内でヒートアップしてしまった気がする。
「戻りましたっ」
「お、おー?」
少しテンション高めで基地に戻る。
仕事中だが多少酔ってても仕事ができればこの基地の連中は何も言わない。
自分たちも人のことを言えないからだ。
ポストには警備隊の報告書のみ。
昇進しても変わらずだらだらしながら定時を待つ。
……なんか無いかな?
資料室をガソゴソ。
魔物図鑑[人類編]を手に入れた!
魔物とは!
動植物が高濃度魔力を吸収することによって進化した存在である。
これは人も例外ではない。
進化した人を魔人と呼び、その種別は多岐に渡る。
帝国内にあるどこかの地方都市には村が丸ごと魔人に進化したケースもあるらしい。
なお帝国では進化することは良いこととされ、軍部でも推奨している。幹部候補校時代に進化できた者は出世街道に乗ることができる。だから僕の同期のカストやイーヴォも魔人だ。
帝国軍の中でも魔人種は少なく全帝国軍三十万人中千人程度しかいない。
帝国の人口は確か最新の資料だと二億二千万人だったかな?つまり二十二万分の一人しか魔人に進化できないエリートオブエリート!
カーンコーン
あ、定時だ。
帰ろ。
牛肉のワイン煮込みを買って帰った。
先にシャワーを浴び、晩酌をしながら窓を見下ろす。
よく考えたら、領兵とか帝国に永住してる探索者とかの入れたらもう百人くらい増えるか。




