森羅の頂点 ー?視点
ーXX視点 ーXX回想 は本編と時系列が大小ずれます。
天井の高い洞窟を抜けるとキラキラと乳光のごとく光り輝く空洞にたどり着く。
地下ということを忘れそうな高い天井とどこからか入っている光が反射して幻想的な空間を演出するとともに、周囲には木々すら生い茂っていた。足元には一点の曇りも無い水が低い方へ低い方へと流れていく。空気は暑くも寒くもなく、そして苦しくもなかった。
ここは一体何なのだろうか。
ふと、何かが動いた事に気が付き、目を向ける。
あれは……生物なのだろうか?
俺は時々揺れる不思議な物に近づいてみる。
半透明の体を時々柔らかく動かしているそれは、俺の予想を遥かに大きく超え、そこに鎮座していた。
……こいつは。
柔らかく動くがそれ以上でも以下でもなかった。
逃げる気配もない。
手で触れてみる。
何度か小さなものには触れたことはあったが、大きくても似たような感じだった。
柔らかくもひんやりとする感触はどこか心地よい。
すると生物の中央にある黄金色の球体が少し輝きだす。
「人か…………?」
どこからか声が聞こえる。
耳からでは無い。手からだった。
この主の声だろうか。
「どこから来た」
俺は地上から来たと答えた。
「そうか。こんなところで人に会うとはな。
私はもう少しで地に還るのだ。
コアを纏ってからこの世の有りとあらゆるものと関わって来た。
それもそろそろ終わりだ。
もう少しで私のコアは止まるだろう」
彼の言うコアとは中央の黄金色の球体のことだろうか。
俺が目を向けると、それは柔らかく光っていた。
「どうだ、人間。私のコアを引き継がぬか。
この暗い世界よりも私のコアを地上に持って帰ってくれぬか。
私はもう一度太陽の光に会いたい。
今の私ではもうそれは叶うまい。
ここで寂しく朽ちるくらいなら人間である貴殿に渡そう。
どうだ?」
面白いことを言う。彼を触っている手は暖かくなる。
「そんな事ができるのか?」
「私達を誰だと思っている。ただの人とは違うのだ」
「へえ、興味は無いがそこまで言うなら貰ってやるよ、あんたのコアとやらを」
そう言うと急に黄金色の球体は光りを放ち、俺の手から急激に何か恐ろしい力が体に入っていく。
そしてコアの周りにあった全ての液体が俺を覆い尽くす。
体内に強い力が掛かり、耐えがたい負荷がのしかかる。
「ぐっ!」
体が自分のものでは無いものに支配される。
頭が衝撃を受けきれない。
意識が飛ぶ…
気がついたときには目の前には何もなかった。
真っ暗闇だった。
輝く光も俺に話しかけた半透明な丸い生物も。
暗い、明かりが欲しい。
そう思うと不意に周囲が明るくなる。
どこからともなく明かりが現れた。
目の前には消えてしまった主の存在を教えるかのように大きな大きな穴が開いていた。
体が重い。いや、苦しいのだろうか。
何があったのか頭で整理したかったが、どうにも頭にボヤがかかる。
良く思い出せない。俺は一体何を経験したのだろうか。
とりあえず一度帰らねば。
………村に。
<更新メモ>
2021/06/09 文法修正。
2021/04/25 文章の修正。