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Slime! スライム! Slime!  作者: 笹餅よもぎ
第三章
215/219

戻る日常と残る不安2

 

 案内された豪華でだだっ広い部屋の中央には、綺麗な柄の長椅子と、それに見合う花模様が描かれたテーブルだけが部屋の中央に置かれていた。その椅子に座るのは僅かに二人で、それを取り囲むように屈強そうな騎士が並ぶ。

 そんな居心地の悪い場所で、俺はさっきから面倒臭い相手に説得を続けている。

 その相手とは俺に似た顔で、目の前の椅子に座る彼女はこれでもかってぐらいに頬を膨らませている。不満を一生懸命表明しているのだろうが、そんな事をしたところで俺にダメージなど全くと言って良い程無いのだが。


「いつまでそんな顔をしてるんだ、ヒカリ?」


 そう問いかけるが、返事もせずにヒカリはプイッと膨らんだ頬のままそっぽを向く。

 ダメージは無いものの、どうやったら相手が納得してくれるのかとさっきから考えあぐねいている。早くこの精神拷問を終わらせたい。


「もう何度も説明しただろう? そろそろ納得してくれよ」


 普段は直球のヒカリがヘソを曲げてしまうと、なかなか元には戻らない。ヘソの曲げ方も直球……いや、直角だ。

 どうしようかと悩むものの、かといって下手な説明を続けて拗ねているヒカリを刺激してしまうのも本意ではない。

 カロスの言った事を気にしている訳じゃないが、ハメルーン城の二の舞だけは避けたい。あの城よりもここ帝城では大勢が働いたり暮らしたりしているのだから、今度こそ大惨事だ。


「どこが納得できないんだよ?」

「全部!」

「はあ?!」


 ヒカリの返事に、俺は椅子からズルッと落ちそうになってしまう。

 あれだけ説明を頑張ったのに、全部って何だよ!

 俺は口を曲げつつ、どこが納得できないんだよと、心の中でヒカリに説明した内容を反芻する。


 俺はしばらくの間、帝城ではなくライラにいた。

 どうしてライラにいたかと言えば、ヒカリが見舞いに来た初日の深夜に目を覚ましてしまったから。

 だけど当時は全快どころか、自力で防御すら出来ないぐらい魔法や魔素が出せずに、俺の暗殺を懸念したカロスが、周囲に気付かれる前に俺を帝城から逃がそうと今回の計画を企てた。

 ライラの準備が整うまでは、俺のことがバレないようにと食事などの生理的欲求以外はカロスの魔法で眠らされ、ヒカリがお見舞いに来ていた時はもちろんのこと、計画に加担していない人間が世話をしてくれている間も、俺は魔法でただただ眠らされていただけだった。

 ライラへ移動する際にはカロスが転移魔法で俺を送り出し、移動してから俺はテオドールとして身分を偽りながら、弱ってしまっていた体を慣らしていた。

 だから帝城での事件が起きた時には、帝城で寝ている俺は既に替え玉だったというワケ。

 まさかカロスが懸念していた俺への暗殺が再び起きるとは思わなかったから、事件を聞いた時には流石の俺でも驚いたさ。

 そしてライラでは俺が居ない内に、俺の名を語って好き勝手する人間がいる事を知って、これ以上は寝ていられないと帝城へ帰って来た。


 こちらの事情も交えながら説明したのだが、目の前の妹は膨れっ面を解除してくれない。俺を心配していたヒカリからしてみれば寝耳に水で、直ぐに理解しろという方が無理なのかもしれないが。


「俺の説明に納得してくれないと、ここにいる護衛達も帰れないんだぞ?」


 かわいそうに、進捗のない兄妹喧嘩を護衛達はただただ聞いているしかない。 

 妹に俺の近況を報告するだけなのだから大勢の護衛なんか必要無いのに、第二次兄妹喧嘩が勃発すると懸念したのか、楽しんでいるのか……、カロスの指示で見慣れない近衛騎士や上級騎士が、部屋やその周辺に集合してしまっている。

 気を回しすぎだと言いたいところだが、その気配が無いとは言い難い状況だ


「………よ」

「あん??」

「妹の私に一言ぐらい言ってくれれば良いのに! どれだけ心配したと思ってるのよ!!」

「だから悪かったって言っているだろ? だけどこの件はヒカリに言って仕舞えば、口に出さずとも顔や態度に出てしまうだろ? 周囲を騙すなんて事をヒカリには出来たのか?!」

「ぐっ! だ、だからって! ………ふん!!」


 図星だったのか、ヒカリは悔しそうにそっぽを向く。わかっていたとはいえ、その姿に俺はため息しか出ない。

 妹であるヒカリにカロスが教えなかったのは、ヒカリの言動一つでカロスの計画が台無しになってしまうからだ。だから今回の計画は極一握りの人間以外には秘密にされた。それは信用しているエルディにもシキさんにもだ。嘘をつけないヒカリなんか、到底無理だとカロスも判断したのだろう。


 それもヒカリに説明したのだけれど、目の前の膨れっ面は俺から顔を背けたままプリプリしている。

 これは俺が悪いのか?

 手強い相手に俺は腕を組みながら、椅子の背もたれに身を任せると大きなため息をついた。……まじだるい。

 どうやってもヒカリを納得させる事が出来る気がしない。ど直球のヒカリを容易に懐柔出来る人間なんて、希少種だぜ?

 どうしようと思っていると、ヒカリの側にいたシキさんと目が合った。


 ………いるじゃん、ここにも。


 俺は天の助けとばかりに、シキさんに助けてと目で訴える。シキさんも俺のアイコンタクトに気づいたのか、意味ありげに片目をパチパチと数回閉じると、流れるように近くにいたヒカリにゆっくりと身を傾けた。


「ヒカリ殿下。驚かれたのは無理もありません。ですがキツキ殿下は病み上がりのお身体で、ライラから戻って来られたばかりです。今はご納得されずとも、ここは一度腹に納めてみてはいかがでしょうか?」

「………シキもキツキの味方なのね」


 ヒカリはジロッと睨むが。


「私はお二人の味方ですよ。ご納得出来ないご心情も分かりますが、既に起こってしまったことでもありますから、ここは無理に納得されようと引き延ばされるよりかは、一度持ち帰るという形にして、必要があれば後日数度に分けてご不満を表明されては如何でしょうか?」

「………」


 数度も不満が来るのかよ……。

 自分から助け舟をお願いしたのだが、シキさんの提案に少しだけモヤっとする。


「数度か……」


 それなのにヒカリはシキさんの提案に納得をし始める。どうやら俺に数度文句を言える権利が発生して、“お得”だと考えているようだ。

 …………なんか嫌な流れだな。


 そう思っていると、ヒカリの近くにいた男が体を傾けて、シキさん以上にヒカリに近付く。

 そういや、この人誰なんだろう?

 俺は不躾にもジロジロとその男を観察する。

 近衛騎士の制服を着てはいないが、近衛騎士よりもヒカリに近い。こんなにも近衛騎士が周囲にいるのに、それを誰も止めようともしていないのが気になる。それに側にいるシキさんと気味が悪いほどに体格も髪色も、心なしか顔も似ている気がする。

 俺が品定めをしている間にも、シキさんよりもヒカリに顔を近付けた男は喋り出す。


「ラシェキスの言うこともごもっともです。せっかく兄上様のご体調が戻られたのですから、ここは一度場を収めましょう」

「うーん」


 ヒカリは二人の言葉に若干の抵抗があるようだけれど、しばらく考えると小さく頷いた。


「わかったわ。仕方ないから、一度引いてあげる」


 厄介な返事ではあるが、どうやら一度引いてくれるようだ。

 俺は心の中で安堵する。

 結果はどうであれ、なんとかヒカリには説明できたのだから自分の責務は果たした、………はず。


「じゃあ、シキさんのていあ……」


 俺はやっと解放されると思って身を乗り出したのだが。

 急に扉が小さく開く。

 目を遣れば、エルディが扉の隙間から上体だけを扉から出して近くにいた近衛騎士に小声で話かけていた。


「どうした、エルディ?」


 エルディの彼らしからぬ行動が気になった俺は、エルディに声をかけた。エルディは何かに迷うと、部屋へと入ってきた。


「お話中のところ失礼致します。皇帝陛下より、食事会へのご招待状をお預かりしております」

「……食事会? え、それって今日?」

「本日の夜です」

「……急だな」

「キツキ様も急にお戻りになりましたからね………」

「………」


 それを言われると俺は何も言い返せない。そういえば、陛下にはまだ帰城報告すらしていなかった事を思い出した。城門で足止めを食らっていた俺たちの前に現れたカロスの秘書達は、そのままカロスの執務室へと案内したのだから。

 とはいえ、部屋を貸してくださっている城の主に挨拶も無しのままだ。何とも不躾だ。

 バツの悪い俺は、髪をガシガシと掻きあげる。


「それで、廊下にてお遣いの方がキツキ様からの返事をお待ちになられていまして」

「そうか。その夕食会は俺だけ参加すればいいの?」

「いえ、キツキ様とヒカリ様、それとランドルフ様にもご招待が来ております」

「ランドルフ?」


 それは誰だと眉を顰めると、さっきまでヒカリに顔を近付けていた男が俺に低頭する。


「ご挨拶が遅くなりました、キツキ殿下。バシリッサ公爵の護衛を任されているランドルフ・クラーディと申します。どうぞ、お見知りおきを」


 ヒカリの傍らにいた銀髪の男性はそう言って改まる。


「護衛? そんな話は初耳だ。護衛を任されているって、誰に?」

「先代のリトス卿より、ご許可をいただいております」

「大叔父様から?」

「そうだった!!」


 ヒカリは思い出しましたと言わんばかりに両手をパンッと叩く。


「キツキは知らなかったよね。キツキが寝て………騙していた間、大叔父様から直接雇用という形で私の護衛をすることになったランドルフ」

「わざわざ騙したと言い直すな」


 顰めっ面で言い直しを指摘すれば、ヒカリはツーンとした顔でそっぽを向く。この様子では一度は引くものの、さっきの説明には納得をしてはいないようだ。

 厄介な。

 それにしても、シキさんに似た男が護衛とはね……。

 シキさんを横目で見れば、紹介をされている辺りから目を閉じて沈黙している。この様子なら、シキさんにとってはあまり良い状態ではないのかもしれない。だけど。


「大叔父様が許可を出されたのなら、俺に文句はない」


 そう答えれば、ランドルフと名乗った男は安堵した表情で再び俺に低頭した。

 文句はないが、一抹の不安はある。

 どうしたものかと、目の前の厄介な妹を凝視してしまう。


「……何よ? そんな怖い顔で睨んで」

「そういや、ヒカリ。セウスさんはどうしたんだ?」

「セウス? あれ、こっちに来ている事知ってたの?」

「……小耳に挟んだ」


 セウスさんの話題を出せば、ランドルフの表情は少しだけ硬くなる。それを見ればやっぱりかと落胆さえしてしまうのだ。

 そりゃ、シキさんだって良い顔はしない………よな。


「セウスね、ノクロスおじさんの養子になったから、一度ナナクサ村へ帰るって言ってたけど」

「ナナクサ村へ?」

「そう。ん、……あれ?」


 ヒカリは考えながら、折り曲げた指を一本ずつ持ち上げていく。


「そう言えば、もう三ヶ月ぐらい経ってるけど、まだ帰ってきてないなぁ。ナナクサ村で羽でも伸ばしているのかな?」

「羽、ねぇ……」

「ナナクサ村まで片道半月ぐらいはかかるから、仕方ないよね」

「仕方ない……」


 どうやらヒカリはセウスさんが密偵でカロスにこき使われているなんて夢にも思っていないようだ。それを伝えて仕舞えばヒカリに責められるとわかっているから、カロスも敢えてヒカリには何も言わなかったのだろう。


「もう少しセウスさんの心配をしてやれよ」

「心配? どして?」


 ヒカリはキョトンとする。本当にこいつとセウスさんは付き合ってるのかよ。


「……時々、お前が妹で嫌になる時があるよ」

「カッチーン。それはこっちのセリフよ! 人が心配しているのに、ライラの街で遊んでいたんでしょ? 本当、無神経な兄で嫌になりますぅう!!」

「なぁっ! 遊んでたわけじゃねぇ! 静養だ、静養!!」

「どうだか!」

「こっちだって死地を彷徨ってたんだぞ?! もっと優しい言葉はないのか??」

「ライラの街を出歩けていた人間が?? あっちで可愛い女の子とでも遊んでいたんじゃないのぉ?」

「!!」

「ん??」

「………」

「ねぇ、今の間は何?」


 ヒカリの眉はピクッと反応する。


「な、なんでもない」

「はっは〜〜〜ん。本当に可愛い子と遊んでいたわけねぇ?」

「……そんなわけないだろ」

「ふ〜〜〜ん?」


 ヒカリは舐めるように俺を観察する。


「なーんか、怪しいなぁ〜〜」

「くっ」


 本当、変なところだけ勘が良くて嫌になる。その勘をどうしてセウスさんに向けてやることが出来ないのか。カロスに良いように使われて、ナナクサ村ではなくてライラにいたんだぞ?


「いいか、ヒカリ。セウスさんはな……」


 そう言いかけた瞬間だった。扉が音もなく開く。そこには冷めた顔のカロスが。

 こいつ、廊下でずっと聞いていやがったな。


「お二人とも、そろそろ本日の食事会のご準備を始めなくてはなりません。これ以上の進展はなさそうですので、本日の会談はここでお開きにされましては?」

「お前……」

「リトス侯爵、特にあなたはお体がまだ本調子ではないのですから、食事会までお休みになられた方が良いでしょう」


 カロスは微笑んで優しい言葉をかけてくる。

 この野郎。誰がそんな罠に引っ掛かるかよ。


「あ、そうね。キツキは少し休んだ方がいいかも」


 だけど目の前の(ヒカリ)はまんまとカロスの策に引っ掛かってしまっていた。

 どう見たって、さっきのセウスさんの話題を止めるための方便だろうが。カロスは本気でヒカリにセウスさんの状況を教えないつもりだ。


「おい、カロス!」


 カロスに噛みつこうとすれば、カロスはパンパンッと軽く手を叩く。


「近衛騎士は殿下方をお部屋へお連れしなさい。衣装は用意させてありますから、準備については部屋にいる女官達から指示を仰ぎなさい」


 カロスは部屋にいた近衛騎士達に向けて指示を出す。ヒカリ側の護衛等はカロスの指示で動き出したのだ。


「あ、こら、カロ…………」

「殿下。補佐官に遮られてしまいましたので、今日は諦めましょう」

「あ、アデル! お前もライラでセウスさんを見たよな?」

「いえ、私はセウス殿は見ておりませぬ」

「なに?」


 そういえば、あの時に一緒にいたのはエリーとサリーだった。俺だけの証言では、今のヒカリには到底信用してもらえない。


「ぐぬぬぬぬ」


 これもカロスの策なのか。

 俺の睨みに気付いたのか、カロスはこちらを向いた。


「そういえばリトス候。大事なご依頼をバシリッサ公爵になされましたか?」

「大事な依頼?」


 何だそれはとカロスに不躾な目を向ければ、奴はどこか勝ち誇ったかのような顔をする。俺の気のせいかもしれないが。


「おや、ラシェキス卿とのお時間が欲しかったのでは無いのですか? 良いのですか、今お約束をお取り付けにならなくて?」

「はっ!」


 そうだ。俺はシキさんとゆっくり話がしたかった。

 シキさんの大事な試験が終わるまでは邪魔にならないようにと自制していたが、自由になったと思った時にはシキさんは既にヒカリに取られていたのだ。

 それでなくとも今はヒカリの専属だから、ヒカリの許可も取らなくてはいけない。

 ああ、もう!


「待て! ヒカリ!!」


 俺は部屋を出て行こうとするヒカリを追いかけ、廊下で散々くだらない言い合いをした結果、ようやく一日だけシキさんを貸してもらえる権利を手に入れたのだった。







 俺は延々と続く長い廊下を数人の騎士を連れて歩く。

 俺を見るなり、仕事中と思われる官吏達は皆道を開けていく。

 その光景がいまだに慣れない。

 俺の真横には無機質のようなアデル。ライラから帰って来てからこの男の態度は変わらない。

 俺はそんなアデルに問いかけた。


「そういやアデル」

「何でしょうか」

「アデルはライラでエリー達の正体は知っていたのか?」

「ええ。近衛騎士でしたら、皇位継承権が上位のお方のご家族は全て把握済みです」

「そうか……」


 最初から知っていたのか……。


「そのとーっても高位の公爵家のご令嬢に、お前はあの扱いをしていたの?」


 毎日のようにエリーを揶揄っていた。


「任務中である“ケント”でいる間は、いかなるご無礼もご容赦いただけるとの確約を補佐官よりいただいておりましたので」

「いかなる………ね」


 それは俺の正体を隠し続けられるのなら、例え俺を殴ったとしても責任を問わないという話なのだろう。だが、その中に公爵家のご令嬢を揶揄ったり、こき使ったりする事も含まれるのだろうか。


「何か問題が発生すれば、全てクシフォス宰相補佐官が責任を取られると」

「………お前、まさかそのためにエリーを揶揄っていたのか?」

「何の話でしょうか?」

「だってエリーのお兄さんって、家族愛の強い人なんだろ?」

「ええ。特に妹であるシェリー嬢に関しましては、相手が誰であろうと遠慮しないと有名な帝国最強のシスコンです。兄であられるモーラ侯爵は、荒れ出すと誰にも止められません」

「いくらライラ出向への仕返しだったとしても、少し陰険なんじゃないのか?」

「陰険とは何の話でしょうか?」


 アデルはサラリと答える。


「娘さんの4歳の誕生日に今回の任務が重なってしまったのは申し訳なく思っているよ。だからって、その仕返しにエリーを利用する事なかったんじゃないのか?」


 そう聞けばアデルは横目で俺を一瞥する。その目がちょっと怖い。


「私事など関係ありません。任務のためですよ。表向きにはケントは店主なのですから、雇っている給仕の娘に遠慮している方がおかしいでしょう」

「そりゃそうだけど……」

「私は大事な任務を遂行したまでです」


 アデルは素知らぬ顔でそう答えるが、俺は納得していない。

 だって一緒にライラへ来ていたバートから聞いた話では、アデルは娘の誕生日前後数日を休日申請し、沢山のプレゼントと誕生会を催すと約束をしていて準備まで整えていたのに、急遽今回のライラへの出向が内密に決まり、極秘任務だったために家に戻る事も任務を話す事も許されずに帝城から直接ライラへと移動したようで、娘さんには急にいなくなる理由すら説明する事が出来ずに、もう口すらきいてもらえないかもしれないと、ライラへの移動中はずーっと半泣きの恨み節だったとバートは鬱々と話していた。


 この計画を立てたカロスを絶対、ぜーったい恨んでいると思うのだ。


「……俺も回復しつつあるし、無理せずにしばらく休んでいても良いんだぞ?」

「ふっ、娘に無視されている私が休む場所など、この世にはありませんよ」


 どうやら家庭内は最悪の事態のようだ。


「そうか……。近衛騎士も大変だな」


 そう答えれば、アデルからは鼻を啜る音が小さく聞こえた。


<人物メモ>

【ランドルフ(クラーディ・ランドルフ)】

帝国の名門貴族の出身。実家の騎士団の副団長をしてたが、とある事情からヒカリの直属の護衛となったのだが、北城へ避難してきた際にヒカリに告白をしてしまう。


<更新メモ>

2025/03/06 加筆

2025/03/05 加筆(主に誤字の修正)

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