不穏な動き2 ーカロス視点
「ご苦労、下がって良い」
私の言葉で、目の前にいた文官調の服を着た男は、部屋から下がって行った。
机の上に置かれた、束になっている書類に視線を移すと、一番上に置かれた真っ白な用紙を外す。その下から出てきたもの。
「セルゲレン侯爵 調査中間報告書……」
十枚程の紙の束をペラペラと流すようにめくる。
トルス第一皇子の義父にあたるセルゲレン侯爵を、帝皇省の“影”に調査させている。
表には出せない情報だ。
「やはり主な財源は貿易での利益か」
セルゲレン侯爵は二十年近く前に、前身であるホーシャ子爵の名を冠した“ホーシャ商会”を設立して、地元の工房で作らせた美術品や工芸品を扱った貿易を始めて大きな収入を得ている。
大金を得た当時のホーシャ子爵は、資金難だった皇帝派の領地を助け、皇帝派の中心へと入り込む。
そして十年前には、砂漠化の悪化で立ち行かなくなったセルゲレン地方の地方統括を望み、皇后の父であるクリュスタロス侯爵の口添えで、前任であったラバラ伯爵と入れ替わるようにセルゲレン地方統括職に就き、セルゲレン侯爵を賜った。
帝国では地方統括職には同名の侯爵位が与えられる。
代々、その家が継いでいくことが多いから、それが家族名になっている地方統括も多いぐらいなのだが、地方統括職から離れるのならば、その爵位も返上することになっている。
ただ、地方統括侯爵は大貴族院には入れない。
侯爵は侯爵でも、皇族から枝分かれされた家門や、歴史的に名を残すような偉業を成し遂げて爵位を授けられた侯爵の家門だけが大貴族院の議員になれる。それと公爵位。
それを、娘が第一皇子の妃になったからだと言って、大貴族院に入れろと大騒ぎしたことは記憶に新しい。
父も娘も似た物同士だな。
だけどおかしなことに、ホーシャ子爵の頃から現在まで、記載されているようなホーシャ商会産の“美術品”や“工芸品”が国内に出回ったことはない。
それに思っていた通り、セルゲレン地方内の領地で、高価な宝石や大量の鉱石が採掘された記録もなければ、それが外から購入された形跡もない。
元々セルゲレン地方にも鉱山はあったのだが、そこも砂山と化してしまい、大した量の鉱石は採掘できなくなっていたために、前任のセルゲレン侯爵はその地を捨てて、管理地を半分にしたいと帝城に申し出たくらい困窮していたのだが。
だが、ホーシャ商会の美術品には一つあたり高価な馬車一台分ほどの大金が支払われている。
一体どこからそれを作る原料を仕入れたというのだろうか。
他に考えられるとしたら、木材をベースにした工芸品か、粘土で作られる陶磁器なのだろうけれど、そんな技術がセルゲレン地方にあるだなんて聞いたこともなければ、有名な巨匠が住んでいるとも聞いたことがない。
……秘密裏に存在しているとか?
国内に秘密にする必要なんてあるのだろうか。
それほどまで素晴らしい美術品や工芸品が自分の領地内で作れるのなら、自慢が好きなあの男なら、喜んで帝城や高位貴族達に売りつけてくると思うのだがな。
ただ商売なのだから、売る側と買う側の合意さえあれば値段はいくらだって問題はない。宝石類もそうだが、美術品と呼ばれる物の値段なんて、あってないような物だ。
他国での需要が高ければ、それだけで値段は吊り上がっていく。繊細で手間の掛かる生産品で数がすぐに揃えられない物ならば、尚更だ。
「納品先は“ルイアス商会”か」
ここがセルゲイン侯爵の財源の元となる商品を買い取っている商会だ。
報告書によれば“アトミス王国”を拠点とする商会となっているが、外患だと考えれば、帝国の書面上だけだと考えるのが妥当だろう。
ホーシャ商会から出された商品は、陸路ではなく、東の海に面しているノイア地方から航路でアトミス王国に運んでいるようだ。
少し遠回りのような気がするが、アトミスまで陸路で荷物を送るのならば、キツキ達が今いるレッドランス地方の他にも、二つの地方を跨いでいかなければいかないのだが、なにぶん街も道も無くなってしまった砂漠しかない地方を通っての輸送は、確かに現実的ではない。
でも、理由はそれだけだろうか。
頭の中で何かがひっかかる。
眉間に皺を寄せて、トン、トン、と指が机を叩く。
中間報告書ではこれ以上は見つけられそうにない。
次の報告を待つしかないか……。
おそらく、帝城内にある資料での調査は終えて、潜入調査を始めているはずだ。
「おーい、カロス。いるか?」
ガチャリと執務室の扉が開く。
入ってきたのは、銀髪銀眼の偉丈夫。
書類を睨んだままの顰めた顔で、入ってきた男をさらに眉間の皺を深くして睨みつけた。
「リシェル! ノックぐらいしろ!!」
「あ、すまん。しばらく雪山に囲まれた村々を回っていると、ノックなんて洒落た事を忘れてしまってな。入る時に大事なのは掛け声だ」
「山男か!」
「ははっ。ほぼそれだよ。今年は雪が多かったから、古い建造物の崩壊や備品の破損があちこちあったようで、予算立てに奔走したよ」
リシェルはそう言って、秘書が使う机に腰を下ろした。
書類の束を机に伏せて立ち上がる。
「ポプリーヌから戻ってきたのですか?」
「ああ。もう春になるから勝手に戻ってきた。補佐官の仕事もあるし、父を待っていたら夏になってしまうよ」
「へーリオス侯はしばらく大貴族院でしたよね?」
「ああ。だから地方は家令に任せてきたよ」
「もう冬は家令と管理官任せで良いのではないですか?」
「俺が行かないと、寂しがる山間の村長が多いからな」
リシェルはふっと笑う。
領主達だって山間の村まで滅多に行かないのに、地方統括代行が雪の降り積もる冬にそこまでいっているのだから、時々空いた口が塞がらなくなる。
リシェルの良いところだとしても、やりすぎな気はするが。
相変わらず、体力は抜きん出ている。
「おかえりなさい、リシェル」
「ただいま」
リシェルは家族に見せるような笑顔を見せる。
本来、リシェルも宰相補佐官なのだが、彼は冬だけは父であるへーリオス侯爵の代わりに、地方へ行ってしまう。雪と寒いのが嫌いなへーリオス侯爵は、冬だけは持病が発動すると理由を作って、嫡子であるリシェルに行かせているのだ。
そのおかげで、リシェルは本官扱いではなく、冬以外の季節に登城する兼官としてみなされている。
「リシェルもそろそろ、冬もこっちにいたらどうですか? あなたが抜けると、急激に仕事が増えて大変なのですよ」
「そうしたいのは山々だが、本格的に父は俺にポプリーヌ侯爵を押し付けようとしてきているからな。長子だから断ることも出来ん」
「面倒なら、ラシェキスに投げたらどうですか? へーリオス侯爵位だって継ぐのでしょう?」
「あいつは昔から騎士しか興味ないだろうよ」
「そうでしたね」
しかもうちの父の影響で、ラシェキスは子供の頃から騎士だけを目指していた。
「そう言うカロスは、まだ公爵位は継がないのか?」
「そんな話を父にしたら、年寄り扱いするなと家庭内戦争が始まってしまう」
「ぷっ、相変わらず公爵がお元気そうで何よりだ」
リシェルは快活に笑う。
「あ、そうだカロス。実はな、冬の間に変な話を聞いたんだ」
「変な話?」
「ああ、うちの北側にいる領主達からなんだけど、何やら最近、うちの地方でとある宗教が勧誘にくるそうなんだ」
「ほぉ?」
「宗教自体は、帝国では自由だからどこでもある話なんだけどな、ある日うちの地方の、とある領主がしつこい勧誘をする彼らを追い払ったそうなんだ」
特に変哲もない話に相槌を打つのが面倒になり、視線だけをリシェルに返す。
リシェルは気にせずに、話を続けた。
「話を一向に聞いてもらえず『門前払い』をされた彼らは、気味の悪い言葉を吐き捨てて帰っていったそうなんだ」
「気味が悪い言葉?」
「『我々を信じない者に天罰を。この地に災難を』と」
「……宗教絡みならどこでもあるような話ではないですか」
一体どこが変な話なのだろうか。
着地点の見えない話をするリシェルを、ジトッと睨んだ。
それでなくても今は大事な資料を読んでいる。
「あーもう、最後まで聞けって」
リシェルは短気な奴だなぁと、どこかの農民かと思うような侯爵息子らしからぬ態度で、楽しそうに私の肩をバンバンと叩いてきたので、さらに睨んでやった。
リシェルは地方から帰って来ると、いつも言動が田舎の平民化している。
帝都にいる間は、貴婦人なら誰でも振り返るほどの、所作も姿も美しい男なんだがな。
冬でリセットされて帰って来る。
「でな? 勧誘を追い返した一週間後。収穫前の大事な時期にも拘らず、予想もしていない場所から水害が起こって農作物が台無しになり、さらには領主の家族にも不幸が起こったそうなんだ」
「……だから、リシェルはその話のどこに、不信感を覚えたのだ?」
災害と不幸が重なっただけだろうにと、オチのない話を続けるリシェルに、関心のない顔を向けるが、そんな私にリシェルは人差し指を俺の鼻の前に突き出して、可笑しそうに口角を上げると、まあ聞けよとでも言わんばかりの視線を送ってきた。
「みんなが怖がるものだから、その領地を見てきたんだ。雪で隠されてしまっていたが、確かに変だった」
「どこがだ?」
「水害の発生した場所にはそもそも川がない。では、地下水でも上がってきたのだろうかとその場所を掘ってみたのだが、水は出てこなかった」
深い雪を掘って、さらにその下の土まで水が見えるまで掘ったのかと、思わずまじまじと顔を見てしまう。リシェルは時々侯爵公子らしからぬ事を始めるところがある。
そんな私の視線を、“はやく続きが聞きたい”と、勘違いしたのか、リシェルは嬉しそうな表情をすると、続きを話出した。
「なのに当時は急に地面から水が噴き出したそうなんだ。それも一箇所ではなくて数カ所ほぼ同時に。井戸も地下水も地割れもない畑のど真ん中に、だぞ? それとな、領主の家族なんだが……」
リシェルの眼光がすうっと冴えたのがわかった。
「狩りに出掛けていてた子息が、細く尖った岩に胸を突かれて死んだそうなんだ」
「岩?」
「ああ。木や藪はあったが、岩は全く見当たらない林の中だったよ。そんな林の奥に、一箇所だけ割れてはいたが細い岩が地面から飛び出ていた。その破片も近くにあった。」
「………」
「付き添っていた従者の話では、子息は馬を降りて獲物を追っていったらしいだがな、どうも状況がおかしいんだ」
「それは?」
「従者の話では岩の先は細くて、彼の身長ほど……俺だと顎の位置までの高さだったそうだ。岩が割れていたのは、子息を助け出すのに、岩を割ったからだそうだ。破片を持ち上げて高さを確認したが、少なくとも俺の首辺りまで確かにあった」
リシェルの背は私と同じぐらいで、帝国の男性の中でも背は高い方だ。その身長ぐらいなのだから、その岩が相当に高いことはわかる。
「従者が見つけた時には、子息の足は地に着いていなかったという。だけど、その岩に胸を刺さすのであれば、岩の先端よりも高い位置から飛び降りるか、もしくは……」
リシェルの銀色の瞳はぎゅっと細くなる。
「もしくは、その岩が地面から突如として突き出してきたぐらいしか可能性は考えられない」
「……な」
「な、驚くだろ? このぐらいの岩だぞ、このぐらいの。普通に歩いてたら刺さらんだろ? それに岩があれば避けて通るのが普通だし、獲物を見つけた狩りの途中で自殺するとも思えんしな」
「確かに」
「そして、その話を聞いた隣の領主が、今後は彼らの望むままに寄付金を出したそうなんだ。それがさぁ、請求された金額がなんとも言えないぐらいに高額だったらしい」
「宗教の寄付金なんて、個人の心付け程度ではないのですか?」
「と、思うだろ?」
リシェルがちょいちょいっと手招きして、私の耳を貸せと合図をしてきたので、耳をリシェルに向ける。部屋には誰もいないのに、リシェルは耳元でゴショゴショと小声にしたかった内容を喋る。
「はっ?! 豪邸が買えるではないか」
「小さい城とかもな。地方の一領主にそれを一口として請求してくるようだ」
「それは確かに“寄付”じゃなくて、“請求”って言葉になりますね」
「だろ? 俺も久しぶりに酒を酌み交わしに行ったら、そんな話を聞いて驚いたよ」
「……酒も飲んできたのか?」
こいつは仕事をしにいっているんじゃないのか?
「管理官みたいに淡々と義務的な話だけを聞いてたら、そんな話題は出てこないだろ? 情報交換は大事なことだよ。それにちゃんと現場も見てきた」
確かに他人の不幸話なのだから、表面上だけの付き合いだけなら出てこない話だったかもしれない。
リシェルは、久しぶりに山奥の雪の深い林まで見に行ってきたから、遭難するかと思ったよと、楽しそうに語る。
「リシェルが遭難なんかしたら大事に発展するから、笑えませんよ?」
「はは。やっぱりそうか?」
「ラシェキスでわかったでしょう? 更にリシェルは宰相補佐官なのだから、何かあれば事件や陰謀に巻き込まれたって大騒ぎになるのは必然ですよ」
「でも、夏近くまで帰ってこなくても、きっと雪で帰れないんだろうなって、思われていそうじゃないか?」
「……確かに、可能性はありますね」
「一昨年は雪で帝都に戻れずにいたのに、父が残った雪が嫌だからといって、俺が戻ってくるまでのんびり帝都でゆっくりしていたろ?」
「そうでしたね……」
へーリオス侯爵は真面目な方なのだが、寒さと雪が関係すると、どうも子供じみた行動をとるのだ。
昔のトラウマが原因らしいが、誰も咎めないからそれがずるずるときている。
被害者はリシェル一人だが。
「……それで、その薄気味悪い言葉を放った彼らの名は?」
「それが一度きりしか言わないらしくて、どの領主もうろ覚えだったんだが、スーラン教だかスーラ教と名乗ったらしい」
「スーラン……、スーラ………」
どちらも聞いたことはない。
「そういや、カロス。さっきなんで怖い顔で書類を見てたんだ?」
リシェルは私の執務机に近づいて、裏返していた書類をヒョイッと持ち上げる。
「待て! それは……」
「いや〜、早く頭を切り替えたくってさぁ、急ぎの仕事なら俺が手伝って………」
緩んでいたリシェルの顔は急に真顔になり、書類を鋭い目で見始める。
バサバサっと他の書類にも目を通した。
「これはこれは」
リシェルの口からは軽快だった口調は消えて、低い声が漏れた。
リシェルはバサッと影からの報告書を持ち上げる。
「カロス。こんな面白そうなものを何故一人で調べているんだ。私も混ぜてくれ」
リシェルは愉快そうに笑みを浮かべ、いつの間にか山男から宰相補佐官への顔に代わっていた。
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ー サウンドリア王国某所 石作りの建物 ー
灰色の石を積み上げただけの、質素な建物の中は薄らと暗い。
貴族の別邸大の建物に窓はあるのだが、あらゆる窓に板が填められ、外からの光を遮っている。建物の中には外からの光は届かず、壁や台に置かれた燭台の細々とした明かりだけが、暗い廊下や所々に掛けられている絵画を照らしていた。
そのひんやりする廊下を、頭からローブに身を隠した二人の男が奥へと歩いて行く。双方とも、闇夜に溶けそうな深い色のローブを羽織っているのだが、先頭を歩く男のローブには金の刺繍が縁取られている。
彼らが向かう廊下の先には、貴族の邸宅にあるような個室や談話室とは違った空間がある。
壁も柱も、白く美しい漆喰で整えられ、広さは貴族の屋敷にあるようなホールに近いため、廊下との合間には両扉がついているものの、部屋と表現するにはいささか大きすぎる。
そんな空間の最奥には、金で出来た丸い飾りが、壁の高い位置に飾られている。
その下にある小さな天蓋からは、更にその下に置かれている銀色に光る椅子の左右を隠すように、白く美しいカーテンが床へとしな垂れていた。
先頭を歩いていた男が、最奥にあるその椅子にゆっくりと腰を下ろすと、後ろをついてきたもう一人の男は足を止めて、その場で跪いた。
椅子に座った男は、目を伏せてしばらく黙考すると、跪いた男に視線を送る。
「あれだけの落影を賜っておきながら、やつらの首を一つも落とせなかったのですか?」
「申し訳ございません。将軍と帝国の狂剣がその場にいたようです」
縁のある上質なローブを着た男は、トントンと指で肘掛けを叩き始める。艶のある琥珀色の瞳は、目の前の男から床へと視線を流した。
「皇帝が来ていたのですから、その二人がいてもおかしくはないでしょう。それにいたとしても、まとまった帝国軍はいなかったと聞いています。彼らと数人の部下だけで、あの数を消し去ったとは思えませんが?」
「その場にいたアフトクラートが大部分を消滅させてしまったようです」
「アフトクラート……。それは女の子?」
「いえ、少年の方です」
その返事を聞くと、琥珀色の瞳は細くなる。
「………例の兄ですか」
「はい」
「厄介ですね」
椅子に座る男の視線は、床から跪いている男へと戻る。
跪く男は、ごくりと唾を飲み込むとぎゅっと口を真横にする。目の前の男の機嫌が悪いことは、ここに入ってきた時からわかっていた。
「彼らの名は?」
「兄がキツキで、妹はヒカリ、と」
「ふっ。どちらも変わった名ですね。……そう、ヒカリというのですか。」
兄を気にしていたはずなのに、椅子に座る男は妹の名を聞くと、可笑しそうにクスッと笑う。その弾みでローブからは金色の髪がふわりとこぼれた。
上質なローブのフードから見え隠れするのは、暗い色には不似合いなほどの美々しい顔をした青年。さらに顔を引き立てるような金色の髪が、フードの中で揺れ動く。
青年の指は、肘掛けをトントンと再び叩き出した。
「帝国の皇位継承順位はどうなりましたか?」
「アフトクラートの兄が一位になったようです」
「やはりそうなりましたか……」
美しい青年の眉間に皺が寄る。
「計画の邪魔になり得る要素は排除させなさい」
「はい」
「ああ、それと」
椅子に座る青年は、目の前にいる男に冷ややかな視線を向ける。
「帝国内で粗相をした愚か者はどうしましたか?」
「すでに浄化を終えています」
「帝国中央にこちらの動きが伝わるような行いは避けさせなさい。ましてや貴族への危害など以ての外です」
「はい」
「御当主の家にもご家族にも、絶対にご迷惑をおかけしないように」
「勿論です」
「では、使徒達にこれを伝えなさい」
椅子に座った男性が手を軽く払うと、目の前にいた男は立ち上がる。足を少し引き礼をすると、暗闇の中へと下がっていった。
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<用語メモ>
・偉丈夫・・・からだが大きくてたくましい男。また、人格のすぐれている男。
・落影・・・造語。
<連絡メモ>
タイトル変更しました。orz
この回は本来は“潔白の証明3”の下についていたのですが、文字数が多くなって分けたら「あれ?」となりまして。以前のカロス視点の続きにしました。
<人物メモ>
【カロス/黒公爵(カロス・クシフォス)】
魔力が異次元な筆頭宰相補佐官。将軍の愚息で皇帝の甥っ子。
【リシェル(リシェル・へーリオス)】
銀髪銀眼のシキの兄。へーリオス侯爵嫡子。背がカロスと同じぐらい。カロスは彼に対して一目置いているので雑に扱わない。寒がり父の代わりに地方統括代理として、冬はポプリーヌ地方へ出向いている。父のわがままにより、季節限定の宰相補佐官に就いている。
【セルゲレン侯爵】
10年ほど前に前任と交換した。トルス第一皇子妃の父。ホーシャ子爵でもある。
砂漠化しているセルゲイン地方の地方統括職。
今回カロスが標的にしている調査対象。
※添え名は省略
<更新メモ>
2022/03/10 タイトル変更、用語メモの追加と修正、加筆