ドスミちゃん
私の名前は、のぶのぶ代。
やさぐれヶ丘中学校に通う14歳の女子中学生。
私は今日の昼休み、ガキ大将の鮫島武(通称:シャーク)と舎部川ヤル夫(シャブ夫)の二人に、おぱんつめくりされて、お気に入りのパンティを取り上げられてしまいました。
でも安心してください。つい先日、スナックで働いているママが血塗れで路上に行き倒れていた『チャカえもん』という中年男性を母子家庭の我が家に連れ込んで以来、困ったことがあれば、チャカえもんが道具を出して何でも解決してくれるのです。
「チャカえもん! チャカえもん! シャークとシャブ夫に取られたお気に入りのパンティを取返すから手伝ってよ!」
「のぶ代さん、またシャークとシャブ夫にいじめられたんですか?」
「赤いリボンがワンポイントの白いパンティなんだよ〜、小学校のときから履いてたやつで、ちょーお気に入りのパンティ〜、シャークたちからパンティを取返した〜い」
「のぶ代さんは毎日毎日、めんどくせぇな…」
私は部屋の襖を開けると、ママのベッドに腰掛けて煙草をふかしているチャカえもんに泣きつきました。
チャカえもんは本名ではなく、素性を語らない彼に私が付けた仮名です。
チャカえもんは室内でも外さないサングラス、青い派手なスーツ、ママに聞いたら背中から胸元に大虎の入れ墨があり、一見するとヤクザのような中年男性ですが、ヤクザではありません。
なぜならチャカえもん自身が、俺はヤクザじゃないと否定していました。
「うるさいわねぇ、そのメスガキは誰なの?」
ママのベッドから気怠そうに身体を起こした素っ裸の女性は、チャカえもんの肩越しに手を回して私を睨んでいます。チャカえもんは、ママが留守のとき、知らない女性を部屋に連れ込んでいたようです。
「あ、ああ……、こいつはのぶ代、居候先のお嬢さんだ」
「へえ〜、居候先のばばあの娘か」
「ばばあって、私のママのこと? チャカえもん、このエロババァは誰なのよ! あんた、まさかママ以外の女とも−−」
後頭部をかきあげたチャカえもんは、床に散乱していた服に手を伸ばすと、困惑している私を一瞥しました。
「のぶ代、勘違いすんじゃねえ。こいつはドスミ、俺と盃を交わした義兄弟だ」
「義兄弟? 義兄弟って、このエロババァ、どう見ても女じゃない!」
「こいつは一昨日、モロッコの技術で女になったばかりの俺の舎弟だ」
チャカえもんの目が泳いでいるので、たぶん嘘だと思いました。モロッコの技術は世界一だと聞いたことがありますが、いそいそと服に着替えたドスミちゃんは、どこからどう見ても女だし、そもそも身体が女だからって、ママのベッドで義兄弟と全裸プロレスするのは疑わしいです。
「もうどうでも良いから、早くいつもみたいに道具を出して解決してよ」
「おう、ちょっと待ってろ」
「ねえチャカさん、そんなメスガキに44口径のマグナムは扱えないわ。あんなメスガキには、私の道具で十分でしょう」
そう言うとドスミちゃんはスカートに手を入れて股間の辺りを弄ると、刃渡り30センチの得物を私に投げて寄越しました。何処にしまっていたのか気になりますが、チャカえもんの道具より、確かに扱いやすそうです。
「のぶ代ちゃん、そいつは柄を自分の体に引きつけて、相手の懐に飛び込むように使うんだよ。相手のどてっ腹に突き立てたら、すぐに引かないと抜けなくなるからね」
「ドスミちゃん……、ありがとう」
「これから、ときどきご厄介になるチャカさんの居候先のお嬢さんだもん、お礼はいらないわ」
「ん!」
ドスミちゃんはその後、義兄弟であるチャカえもんの居候先である我が家に遊びに来ることが増えました。最初は、単なるホテトル嬢かと疑っていましたが、どうやらモロッコの技術で性転換したというのは真実でした。彼女の後はトイレの便座が毎回上がっているので、下の工事はまだのようです。
次回『俺の物は俺の物、お前は俺の物』