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2.これは夢です。

ブックマークありがとうございます。

※書き直して再掲載しました。一人称から三人称にし、加筆致しました。5月20日

ここは、三途の川。

目覚めた場所はそんな物騒な場所ではなく、天蓋つきの広い豪華なベッドの上だった。

病院の個室だろうかと考えたけれど、見渡した部屋はまるでテレビで見たホテルのスイート室以上だ。


控えめなノックの後に侍女が入室し、マリアお嬢様と声をかけてきた瞬間、春奈はぼんやりと現状を思い出した。"私"は、マリア・エリザベート・クラウディア・ボーフォート公爵令嬢だ。

すぐに手鏡を持ってくるよう侍女に頼み、手渡された鏡に顔をうつすと、特徴のない平凡な顔がうつった。赤みがかった茶髪、深い緑の瞳。

うん、確かにマリアだ。

死んだはずの春奈は、なぜかマリアになっていた。


マリア・エリザベート・クラウディア・ボーフォートは、春奈がプレイしていた乙女ゲーム「光神の乙女(ヘイムダルのおとめ)」略して「ダルおと」に出てくる悪役令嬢だ。

乙女ゲームにしては、ヒロインのライバルのくせに容姿があまりにも平凡で冴えないことで多少話題になった。

ただ、鏡にうつるマリアは春奈が知ってるマリアよりもずいぶん幼い気がした。


もしかして、本当の春奈(わたし)は死にかけてて、変な夢でも見てるのかも。

夢だとして、マリアが物心ついてからこれまでの記憶と知識は、ゲーム上のプロフィールに載っていなかった詳細な設定のため、自分の想像力の豊かさに少し感動した。


鏡を見ながら、微笑んだり変顔したりするが、うつってるのは変わらずマリアのままだ。月並みに頬をつねってみると、普通に痛い。

「・・・いや、ウソでしょ?!そんなの、ないない。超リアルな夢だな、きっと。ちょっともう一度寝よ」

とりあえず、掛け布団の中にまた潜り込んだ。

「お嬢様?!」

慌てた侍女に声をかけられて、その存在を思い出すと、布団から顔を出した途端に侍女はマリアの肩に手をかけて上半身を起こした。

「起床のお時間ですので、ご準備をさせていただきます」

侍女の有無も言わせない行動に従うしかなかったが、普通に生活して様子を見ることにした。

なんかの拍子に目が覚めるかもしれない。


侍女やメイド達に身を委せながら、今の状況を整理してみる。

春奈が中にいるマリアは6歳だ。逆算すると、今は「ダルおと」のスタートより10年以上前のはずだった。

「ダルおと」は貴族の子女が16歳から3年間通う王立学校が舞台になっている。平民だったヒロインは男爵の実父が市井から見つけ出し、一学年の途中から編入する。攻略キャラの1人、皇太子と悪役令嬢のマリアはヒロインより一つ上の学年だ。

公式設定だと、皇太子とマリアの婚約は10歳のため、未だ何にも始まっていない状況だ。

「お嬢様、準備が整いましたので、食堂へ」

「ありがとう」

顔を洗うためにぬるま湯の入った桶をベッドまで運んでもらい、寝間着を脱がされ、ドレスを着せてもらい、髪は丁寧にとかされてアレンジしてもらった。

貴族の令嬢は何もせずとも日常生活を周囲に委せていればよく、本当に楽だと思えた。少し恥ずかしい気もしたが、断ろうとはしなかった。

部屋を出る前に姿見を確認する。お洒落なドレスを着ても髪をアレンジしてもマリアの容姿は平凡だ。

春奈である自分も冴えない容姿なので、夢ならもっと美少女にさせてくれてもいいのにと口を尖らせた。


食堂にはすでにマリアの父親と母親が揃っていたので、淑女としての挨拶をした。所作はマリアの身体が覚えていたので、困ることはなかった。

「おはようございます」

席に着くと、父親であるジェラルド・マシュー・セオドア・ボーフォート公爵がオールバックにした赤みがかった茶髪を軽く撫でながら、切れ長の碧眼でマリアをちらりと見た。

「ああ」

ジェラルドはかなりの美形だが、愛想も言葉も少ない人だった。何代か前の王弟が爵位を賜り、公爵となったボーフォート家の血を受け継ぐ容姿は33歳の子持ちとは思えない美貌だ。

ゲームの場合、断罪イベントの最後にボーフォート公爵家がマリアのせいで没落することになるが、そのことについてマリアをただ酷く罵るだけのモブ扱いだったのをもったいなく感じた。

ボーフォート公爵に関する詳細はゲームではほとんどなかったけれど、あまりマリアには興味がないみたいに思える。

「シシィ、おはよう。今日は髪をアレアナ風に結ったのね。可愛いわ」

「はぁ。ありがとうございます」

侍女が結い上げた髪型のため、マリアには母親が言うアレアナ風がわからなかった。それよりもマリアを見て可愛いと言う、親の欲目に驚いた。

シシィは母親だけが呼ぶマリアの愛称だ。公式設定にはなかったが、そうだということはマリアの記憶で理解していた。

母親のダイアナ・キャロル・ヴィクトリア・ボーフォート公爵夫人は、かなりの美人。美しい金髪は腰まで長いストレートで、マリアと同じ深い緑の瞳なのに造形が違いすぎる。

マリアは、父と同じ色の髪、母と同じ色の瞳の設定がなければ、全く似てもにつかず、ダイアナの浮気を疑われかねないくらいだと思った。

ゲームに母親のことは全く描写がなく、存在が不明だったため、夢の中の設定にしてはリアル過ぎる気がした。


執事が用意した朝食を自然なテーブルマナーで食べるマリアの体に感動しつつ、早く夢が覚めないかと思う。

目覚めたところで、死んでいるかもしれないけれど、もし、短い時間でも生きてるなら、両親と弟に会いたい。

登場人物の名前は適当です。

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