1.社畜の人生
あとはもう気が向いた時、更新になります。
23時52分。
目の前にはパソコンの画面。私は機械的にキーボードを打つ。周囲では怒号が飛び交い、若い女の子は泣いている。まるで地獄の阿鼻叫喚。こんな地獄に6年もいれば、嫌でも慣れた。
私、山本春奈は所謂ブラック企業に勤めている。大学在籍時に何十社と入社面接を受けたが、ことごとく落ち、就活浪人の単語が頭によぎった頃、卒業した先輩から声がかかった。
うちに来ない?それはまさに地獄に仏、渡りに船。
在学中に良くしてもらった先輩からの誘いだからと、よく調べもせずに面接し、合格通知を貰って喜んだあの時の自分を殴りたい。
入社後、先輩は会社から消えていた。
先輩とは連絡が取れない状態で始まった会社説明と研修は面接時に聞いた内容とはかけ離れていた。同期の一人が契約と違うから辞退を申し出たが、サインした契約書にはこのことが小さく記載があったし、更に辞める場合には解約金の支払いが必要とあった。
こんな酷い契約は無効だとわかっていたけれど、入社時の個人情報を盾に脅しのようなことをされ、泣く泣く入社した。
後から聞いたことだけど、先輩は私を売ったのだった。自分の代わり(生け贄)が入れば、退職できると言われて。
私は先輩のようにはなれなくて、結局、今日まで来た。
最初は散々泣いたし、体調を崩したけど、出勤しなければ、酷いめにあうと脅された。
今はもう感情をなくしたロボットみたいに働いている。
始発電車での出社。昼休みもなくカロリーメ○トをかじるだけ。終電で帰れたら御の字。逃したら会社に泊まるかタクシー。もちろんタクシー代は自腹。
その中でほんの少し自由時間がある時、スマホで乙女ゲームをプレイして、今の自分じゃない自分の人生を楽しんでいる。
現実とかけ離れた幸せな少女。彼女と自分をリンクさせ、妄想することだけが私の小さな幸せだった。
23時59分。
目の前のパソコンの画面が歪み、渦が見えた。あ、心臓苦しい。これって、過労じゃない?私、死ぬの?
私に向かって、誰かが叫んでる。
職場で倒れるな、迷惑かけるな、バカが!
こんなと会社で過労死したら、家族に迷惑かかっちゃう。
そう思っても、意識が渦巻きに吸い込まれる感じがしながら、私は死んだ。




