第3章 第15話
ラインハルト3人組はともかく、招集がかけられたであろう11人は、
顔を見合わせたり小声で話すばかりで動く気配が無い。
『やらないなら、もうすぐボスも復活するだろうし、
ボス戦に入らせてもらうよ。
そのままこのエリアもクリアする予定だけどいいかな。』
「な、なぁ。スピラーさんって呼んだらいいのか。
シンカーが手も足も出なかったってホントかよ。」
ラインハルトのすぐ後ろにいた男が聞いてくる。
『うーん、結構こっちもHP減らされてたしなぁ。
良い勝負だったんじゃないの?』
「はっ、良く言うよ!」
後ろでシンカーが笑いながら言う。
「俺とリックの奇襲で与えたダメージと、
後はリックを倒すためにわざと喰らったくらいだろ。」
『いやいや、俺の攻撃がリックに防がれて、
シンカーからもらった攻撃もあったはずだよ。』
「5発…いや6発か。
まぁ、俺らの武器でそんだけ攻撃喰らって死んでねーのも
恐ろしい話だが。」
11人がさらにざわつく。
どうやらシンカーは、この集団の中でも結構強い位置にいるらしい。
「ラインハルト、悪いが俺は抜けさせてもらう。
シンカーも冗談言ってる雰囲気じゃねーし…」
「俺もだな。やりたいようにはやるが、
売られた喧嘩でもなさそうだ。」
俺も俺もと声が続く。
結局ラインハルト3人組が残り、11人のギャラリーが増えた。
うーん…こうも観客が増えると、神速の効果を見せたくないな。
多少のズレはしょうがないにしても、硬直カウントしながら戦おう。
「…ちっ、どいつもこいつも腰抜けかよっ」
ラインハルトはまだ周りに毒づいている。
「な、なぁ、ラインハルト…やめねぇか?」
ザッキーがラインハルトにつぶやく。
「あぁっ!?
てめぇ、さっき真っ先にやられておいて何言ってやがる!
だいたいてめーがHP管理もできてねーから、
こんなことになったんだろうが!」
ラインハルトは怒り心頭と言ったところか。
「いや、さっきのはHP管理ミスじゃねーよ…
間違いなく一撃しかもらってねぇ。
あのシンカーが敵わねえと認める相手だぞ。
何かやべー装備かスキル持ってるに決まってるって。」
「俺もやめた方が良い思う…」
翔も俯いたまま声を出す。
「最後、あいつとタイマンみたいな形になったんだ。
まともに斬り合うこともできなかった。
攻撃が異常に早くて痛い。
違和感の塊みたいな攻撃だったよ。」
「翔…てめーもか…もういい…てめーらクビだ。
今後は見かけたら殺す。」
ラインハルトの怒りは沸点を突き抜けたようだ。
「おい、タイマンで勝負しろや。」
引くに引けなくなったのだろうか。ついにラインハルト1人で歩み寄って来る。
「いいわよ。」
俺が返事するより早く、Seregranceが片手剣を手に前に出る。
『セレがやるの?』
「うん。さっきので分かったけど、
やっぱり対人戦は本気のを経験しないとダメね。
だからせっかくの1対1だし、私にやらせて?」
「おいっ!俺の相手はテメーだろうが!
男にくっついてチンタラやってる奴が出しゃばんじゃねぇ!」
ラインハルト、俺に向かって剣を突き出しながら叫ぶ。
ガシャン
Seregranceが盾を落とし、たじろいだように後ろに下がる。
『セレ、替わ』
ろうか、と言いかけてやめた。
後ずさりながら、腕を後ろに回し剣を背中に隠したかと思ったら
「command equip wepon slot no7 end」
腕を身体に隠したまま小声で音声コマンドを入力し、装備を弓に変えた。
ラインハルトは、自分の一喝に気圧されSeregranceが後ずさりしたと思っているのだろう。
少し気が晴れたように、ニヤリと笑っている。
「おらっ、さっさとタイマン始めるぞ。」
「分かったわ。それじゃ始めましょう。」
Seregranceが弓を引き絞り、矢を放つ。
キィンッ
見事なクリティカルヒット。
第1エリア最後の対人戦の幕が切って落とされた。




