第3章 第5話
「くそっ、なんだこいつっ!おい、シンカー!
こいつの武器やべーぞ!威力が尋常じゃない!」
幽霊状態になったリックが叫ぶ。
「…見りゃわかるよ。仮にもレア防具で揃えたリックを、
たった3撃で倒すなんて冗談としか思えない。」
シンカーに振り返ると、いつの間にか距離を取り獲物が槍に変わっている。
しまった、出遅れた。今から斬りかかったとしても、おそらく5秒の硬直には間に合わないだろう。
相性を分かっているのかはともかく、大剣に対して槍を持って来られたのがまずい。
大剣よりリーチが長いうえに、攻撃も早い。
近接戦を仕掛けてくるなら、相打ち上等で当てれば良いのだが、そもそも当たる間合いに相手が居ない。
「まさか第1エリア、しかも2対1で
うちのタンクを倒す奴がいるなんてね。あんた何者?」
『…』
「まぁいいや。こっからは油断は無しだ。
言っとくが、この武器は遥か先、第9エリアのレア武器だ。
槍とは言え、この辺のプレイヤーなら4~5発で倒す。
避けられるもんなら避けてみなよ。」
ゆっくり間合いを詰めてきたシンカー。ふいに喉元への突きがくる。
ギリギリで躱す。
再び上段胸元への突きがくる。
身をかがめて躱す。
右下段に薙ぎ払うような攻撃を大剣でガードさせられる。
まずい、この態勢は硬直が長い!
弾かれた槍が反動で孤を描き、左中段からへの薙ぎ払いとなって襲ってくる。
硬直に間に合わないのは分かっているが、思わず大剣で守ろうとしてしまう。
ガキンッ
硬直中の金縛りのような感覚が無く、思った通りに身体が動いた。
シンカーの槍を受け止めるつもりだった大剣は、勢い余り槍を大きく弾く。
あれ?間に合った?
槍を弾かれ大きく態勢を崩しているシンカー見て、攻撃に転じようとする。
しまった、しゃがんだ態勢からのガードじゃ、まだ硬直が
意に反して大剣の横薙ぎが綺麗に来まる!
「なっ」
慌てて大きく距離を取るシンカー。
こちらを見ながらメニューを開き始める。
恐らくポーションでも使うのだろう。
その隙に、俺もさらに距離を取り装備を変える。
『command shortcut one end』
事前に登録しておいた短縮コマンド、そこには例のメイスと盾がある。
こちらの装備が変わったのを見ると、舌打ちしながらシンカーが駆け寄ってくる。
「5秒もやるかよっ!」
ちっ、やっぱり見逃してくれなかったか!
完全にクリティカル狙い、頭部への渾身の突きが飛んでくる。
硬直中だと分かっていても、つい身体が守りに動いてしまう。
そして金縛りのようなもどかしい感覚
…は、やはり無く盾が綺麗に槍を受け止める。
「さっきからなんなんだよ、それは!」
悪い、俺もよく分かって無い。
盾で受け止めた槍を思い切りメイスで殴って弾き飛ばす。
武器弾きの成功率に攻撃力が影響するのだろうか?
態勢を崩せば充分と思っていたが、槍はシンカーの手を離れ飛んで行く。
「…なんだよ、その訳わかんねー強さは。」
その言葉を聞きながら、俺のメイスが一撃でシンカーを消し飛ばした。




