表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dance with The Weapon  作者: まっしー
18/133

第1章 第17話

「あのー、すいません。」

声を掛けられ振り向く。

「初心者クエストのクリアを

 手伝ってもらえるって聞いたんですが。」

5時半じゃ、ログアウト後の1時間を有効活用するには若干早い。

あと30分くらいは時間を潰したいところだし、付き合おう。

『ああ…闘技場ね。いいよ。

 一緒に行って、好きに倒してくれれば良いから。

 熟練度は足りてるの?』

「はい。カカシ道場で上げてきました。」

『じゃぁ行こうか。』


**********


際限なく強制ログインさせられる日々に嫌気がさしていた。


買い物に行けば、商品の棚に向かって倒れこんだ。

レジの並びで倒れて、辺りが騒然となった事もあったらしい。


風呂場で倒れたこともあった。湯舟に入っていないタイミングで本当に良かった。

しっかりと風邪を引いたが、強制ログイン中は自然と大人しくなるからか、快復も早かった。

皮肉なもんだ。


散歩に出たりもしたが、途中で倒れる事が何度かあった。

おかげで辺りじゃ、しょっちゅう倒れる人ということですっかり有名人だ。



そして、段々と出歩くことが怖くなった。

たまたま事故は起きていないが、いつ倒れるか分からない。

となると、とてもじゃないが街中を歩けない。

横断歩道で倒れたら、車に轢かれやしないか。

車やバイクに轢かれなくとも、打ちどころが悪いとどうなるか分からない。


家から出られなくなると、段々と精神に影響が出てくる。

ネガティブな考えが先に浮かぶようになってしまう。

元の日常生活に戻ることが段々と想像できなくなっていた。

陰鬱な精神状態でも容赦なく強制ログインはやってくる。


明日が見えない。それどころか今日すら見えない。

どうやったらこの強制ログインが止められるのか。

強制ログインと付き合いながらどうやって過ごしていくのか。

どうやって生きて行けば良いのか分からない。

仕事も、小夜香のことも、全て諦めて屍の様に生きるしかないのか…



そんなどん底の気分の時のことだ。

いつも通り強制ログインさせられ、何をする気もおきず、ぼーっと人の流れをみていた。

[観察眼の熟練度が上昇:8.44 → 8.48]

[瞑想の熟練度が上昇:6.52 → 6.56]

こんな精神状態では、熟練度の上昇メッセージにさえも苛立ちを感じる。


作り直しのプレーヤーが大半だが、たまに本当の初心者がいる。

そんな初心者と思われるプレーヤーから声をかけられた。

「すんません。

 闘技場で対戦するクエストあるんすけど、やりません?」

『俺?俺は…』

真面目にやる気はないからいいや、と言いかけてふと考えた。


確か初心者のクエストに、対戦で勝てってのがあったはずだ。

作り直してる連中は、ある程度慣れてるから良いだろうが初心者はどうなんだろう。

ここで何度も負け続けるプレーヤーもいるんじゃないだろうか。


どうせ俺はやる気のあるなしに関わらず、3時間は囚われの身なんだ。

同じぼーっとしてるだけなら、少し誰か助けになってるほうがマシかもな。

『…いや、やろうか。闘技場で対戦するんだっけ。』


闘技場に入り、受付で対戦手続きを取る。

対戦者リストからお互いに相手の名前を選択するとマッチング完了。

決闘場の対戦者ポータルに転送された。

システムメッセージが説明してくる。


カウントダウンが終わると移動ができるようになり、5分間で対戦を行うこと。

先に相手のHPを0にした方が勝者となること。

5分で決着がつかなかった場合は、残ったHPの割合が多い方が勝者となること。

初心者エリア以外の闘技場では、違ったレギュレーションの対戦が存在すること。


説明を聞き流しながら、どうやって負けるか考えていた。

全く構えもしない、武器を振りもしないんじゃ、さすがに相手に悪いだろうか。

かといって全力でやってみて、間違って勝ってしまってもしょうがない。

とりあえず、いい感じに武器を振り回して負けてみるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ