第1章 第9話
人懐っこい感じの喋り方だったな。
このよく分からない状況で、少しだけ気が和らげてくれたのがありがたい。
さてと…ドリッピーが問い合わせをしてくれるとは言え、いつ返事が来るかもわからない。
腹が減るくらいならいいけれど、トイレとかどうなるんだ。
しかも、俺はたしか病院のロビーで座っているはず。
…冗談じゃない。考えなくても分かる惨劇だ。
とりあえずやれそうな事をやってみよう。
ここまでNPCとの会話もせずに来てしまっているのが悪いのかもしれない。
ゲームならば、NPCとの会話でフラグが立ったりするのはよくある話だ。
まずは道場から外に出て、入口にいるおっさんに話しかける。
『あのー、ちょっといいですか』
シュワン
[ここはカカシ道場だよ。色んな技術の熟練度を上げるための、様々なカカシが揃ってるよ。]
[閉じる]
…声かけちゃったじゃないか、恥ずかしい。
NPCとの会話は文字だけなのか。
リアルにできてるから、てっきり会話するもんだと思ってたが、味気ないな。
音声認識とか解析とかさせると大変だから、簡略化としてはしょうがないところか。
広場を通り入口の門まで、かたっぱしからNPCと会話して回ったが
これといってフラグが立ってそうな会話は無かった。
さて、困ったな。
使えるようになったばかりのフレンドメニューを開きフレンドリストを見てみるが、
まだドリッピーは戻ってきていない。
…とりあえずスキルでも上げるか。
左手でフレンドメニューを消す。裏に隠れていたシステムメニューが表示される。
『あれ?』
[ログアウト]が黒く表示されていた。
そっと触れてみる。
[ログアウトしますか?]
[はい][いいえ]
…どういうことだろうか。
やはりNPCと会話することでフラグが立ったのか?
それっぽい会話は全然なかったんだが。
だがログアウトできるなら文句は無い。
そのまま[はい]に触れる。
すーっと景色が遠のき…
薄緑の天井を見上げていた。
『…はぁ』