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光と闇の少女たち  作者: 飛騨仇義
第二章 狂いだした歯車
7/41

2-1

 全人類の二分の一が昏睡状態に陥り、めまぐるしく世界は変わった。

 ガス・電気・水はこれまで通りに使えるが、交通に関しては“絶望”と言わざるを得なかった。

 一日に何十億と大地を走る車は、その大多数が次々と他の車を巻き添えにし、凄惨な事故を引き起こした。

 飛行機など、一度に大量の人を乗せたまま、地上や海上に墜落した。

 ある人物はそれを「雨が降るようだ」と例えた。

 むごい話である。

 残る電車でさえ、踏切で立ち往生した車と衝突を起こし……ともかく、交通系は再起不能だった。

 控えめに言っても、今回のそれはわたし自身の生活に大きく影響することになった。

 交通事故を起こした車の残骸で道が通れないだとか、それで火災が起きただとか、あるいは交通事故に遭った死傷者の亡骸がそこかしこに散らばっているとか、そんな生易しいものではない。

 昏睡状態に陥った父がそのまま交通事故を起こし……挙句の果てに、そのまま亡くなったのだ。

 その訃報を母からのメールで知っても、車の残骸に人の亡骸、火災やらで道が通れないという事態に出くわした。

 わたしは両親揃って昏睡状態に陥った載鐘くんの自宅で、一週間……仲間との生活を余儀なくされた。

 年頃の男二人、女二人の生活はストレス地獄であり、それに耐えかねたわたしは自宅へ戻るため、死臭のする街を駆け出すところだった。

 やっとのことで帰宅した頃には、すでに父は火葬場で骨となっていた。

 大人の都合、というのだそうだ。

 ともかく、わたしはよき理解者である父を失った。

 人類史上、最大の超常現象よりも、その事実はわたしの中で一番の不幸な出来事であった。

 その事実を忘れようと、いつしかわたしは母に当たり散らすようになった。

 そして今日の深夜、ついに母から勘当を言い渡された。

 わたしは荷物をまとめ、母の目の前で父の遺骨を廊下にばらまくと、興奮状態のまま家を飛び出る。

 行くあてもなかった。

 それに、まだ車の残骸や人の亡骸もある道を通るのだ。

 不気味でたまらなかった。

 そのため、コンビニから盗んだジュース缶を片手に、あえて陽気な振りをして、歌まで歌うことにした。

 案外、それは愉快なものだった。

 けれど持ち歌がなくなり、静寂へと変わった途端、わたしは大声で泣き出してしまった。

 そうしていると、ふと誰かに名前を呼ばれた。

 ふたたび、呼んだ相手がわたしの名を呼んだため、わたしは泣くのをやめた。

「光凛?」

 振り返った先に、誰がいただろうか。

「久しぶりじゃない、光凛。元気にしていた?」

 あぁ、そうだ……この甘ったるい言い方をする人物は他にいない。

 わたしは目の前の人物――夜魅をこの目と脳で認識すると、弱々しく微笑む。

「元気かどうかはさておき……久しぶりね、夜魅」

 光と闇の邂逅――その言葉こそ、ふさわしいものだった。

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