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幸運のコイン

真緒達の目の前に突如として現れた魔王軍新四天王エレット。いったい彼女は何を語るのだろうか。

 「エレットさん……どうしてあなたがこんな所に……?」


 「魔王様から頼まれたのよ。あなた達の手助けをしてやって欲しいって……私はあの子達にそんなの入らないだろうって言ったんだけど……どうやら魔王様の言う通り、手助けが必要みたいね」


 「「「「…………」」」」


 「大体、無謀にも程があるんじゃないの? 相手はたった一年で無法地帯だった街をカジノの街に作り替えてしまった男なのよ? かなり頭の切れる人物なのは間違いない。それなのに何の策も無しに正面から突っ込むだなんて……お馬鹿ねぇ」


 「「「「…………」」」」


 「大方、カジノに潜入して合法的にロストマジックアイテムを渡して貰うと思っていたんでしょうけど……まさか本気で素直に渡してくれると思ったの? 自分の人生を薔薇色に変えてくれたアイテムをそんなあっさり手渡す訳が無いでしょ? もうちょっと考えてから行動しましょうよ」


 「で、でも……ギャンブルで勝ったら譲ってくれるって……」


 「そんなの罠に決まってるでしょ。勝負方法がジャンケンというのが良い証拠。つまりあいつは絶対に勝つ自信があったのよ」


 「だがいったいどうやって? 運要素が強いジャンケンで100%勝つ方法なんてあるのか?」


 「さっきそこの魔法使いの子が言ってたじゃない」


 「えっ、私ですか?」


 「あなたさっき『運命を操れる』って冗談っぽく言ってたじゃない……でもそれね、強ち冗談でも無いのよ」


 「ど、どう言う事ですか!?」


 「私はね、あの男が持っているロストマジックアイテム“幸運のコイン”についての情報を手に入れているのよ」


 「それは本当ですか!!?」


 「えぇ、魔王様と一緒に調べたから間違いないわよ」


 「教えて下さいエレットさん」


 「教えるのは良いけど……その前に着替え終わったらどうなの? 前の二人は良いとして、後ろの二人は着替え途中でしょ?」

 

 「「「「……あっ……」」」」

 

 いつの間にか寒さも忘れ、真緒とリーマは半裸状態でエレットの話に釘付けになっていた。


 「す、すみません!! 直ぐに着替えます!!」


 「じゃあ、着替え終わったらカジノの裏通りに集合よ」


 「分かりました!!」


 真緒とリーマが慌てて着替える中、エレットは一人その場を後にした。


 「急いで着替えないと」


 「そうですね……あれ? マオさんこれ……」


 リーマが替えの服を鞄から取り出していると、一個の指輪が飛び出た。地面に転がるその指輪を拾い上げ、真緒に見せる。


 「あっ、それって……」


 それは見覚えのある指輪だった。真紅に輝く宝石が埋め込まれている。真緒が受け取り、眺めていると……。


 「おい、何チンタラしているんだ!! 早く着替えないと置いて行くぞ!!」


 「ご、ごめんなさい!! 今すぐ着替えます!!」


 いつの間にか着替え終わり、ハナコと一緒に待っていたフォルスが怒鳴り声を上げる。二人は慌てて着替えを済ませ、ハナコとフォルスの下に合流する。


 「お待たせしました。遅れてすみません」


 「全員着替え終わったな。カジノの裏通りはこっちだ……急ぐぞ」


 「「「はい!!」」」


 無事に着替え終わった真緒達は、エレットと会う約束をしたカジノの裏通りに向かうのであった。




***




 カジノの裏通りは表の煌びやかな雰囲気と違い、薄暗く陰鬱な雰囲気を漂わせていた。道の隅には生ゴミやネズミの腐った死体、切り落とされ廃棄し忘れたであろう人間の指などが転がっており、かつて無法地帯であった事を表していた。そんな裏通りを通り過ぎた脇道にエレットは隠れる様に立っていた。辺りを警戒しながら、真緒達が来てるかどうか何度も脇道の影から顔を出して確認していた。するとカジノの裏通りに入って来る四人の影が見えた。


 「エレットさん!! お待たせしました!!」


 影の正体は勿論真緒達であった。真緒は大きく手を振り、大声でエレットに来た事を知らせる。それを見たエレットは慌てて真緒達の側に駆け寄り、真緒の口を手で塞いだ。


 「大声出すんじゃないよ。ここはカジノの裏通り……関係者以外は立ち入り禁止になってる。そんな所で大声を上げたら見つかってしまうよ」


 「す、すみませ……っ!!?」


 その時、ガチャガチャと裏口の扉が音を立てる。


 「まずい……急いで隠れるよ」


 そう言うとエレットは、真緒達と一緒に先程までいた脇道に慌てて隠れる。それと同時に裏口の扉が開かれ、中からディーラーらしき男が顔を覗かせ、辺りを見回す。


 「おかしいな……声が聞こえたと思ったんだが……気のせいか」


 杞憂だと判断した男は再びカジノの中へと消え、裏口の扉を閉めた。


 「「「「「…………ふぅー」」」」」


 何とかやり過ごせた一同は、ホッと溜め息を漏らす。


 「エレットさん、迷惑を掛けてしまってごめんなさい」


 「何度も謝らなくて良いよ。私は、何度も謝る奴が嫌いなんだ」


 「そう言えばそうでしたね」


 エレットと初めて会った時の事を思い出しながら、苦笑いを浮かべる真緒。


 「それで早速本題なんですが、エレットさんはロストマジックアイテムである“幸運のコイン”について情報を手に入れているんですよね?」


 「あぁ、そうだよ。まず、ハッキリ言って“幸運のコイン”は『全ての物事に対して確実な勝利をもたらす』能力を秘めている」


 「それって……いったいどう言う事ですか?」


 「あのギャブラーって男、幸運のコインをこう……親指で弾いて手の甲に乗せて、表か裏か言い当てるコイントスをしていなかった?」


 「…………あっ、そう言えば私がイカサマの疑いを掛けられている時、そんな事をしていました」


 真緒は思い出した。イカサマの疑いを掛けられたあの時、興味無さそうに幸運のコインを弾いて表か裏かを言い当てていたギャブラーの姿をハッキリ見ていた。


 「やっぱりね……あなたがジャンケンで負けたのはその時のコイントスによる物だよ」


 「「「「!!?」」」」


 「幸運のコインの能力を発動させる為には幸運のコインでコイントスを行い、表か裏かを言い当てる必要がある。それを見事言い当てる事が出来れば、その後行う物事は絶対に勝つ事が出来るのよ」


 「そうか……だからジャンケンなんて運要素が強いゲームをあんな自信満々にする事が出来たのか……だが、もしそれを言い当てられなかった場合どうなるんだ?」


 「もし言い当てる事が出来なかった場合……その後行う物事は絶対に負ける事になるわ」


 「成る程……何ともリスキーな能力だな」


 「ほんと……でも使い方によっては世界を手に入れる事だって出来るわよ」


 「そうなんですか?」


 「エレットが言ってたじゃないか。幸運のコインの能力は『全ての物事に対して確実な勝利をもたらす』事だって、全ての物事……例えば戦争……最早敗戦は明白だという状況に対して、幸運のコインでコイントスを言い当てる事が出来れば、一発逆転する事だって出来るのさ」


 「……改めて思いますけど……そんな一国を支配出来る程のアイテムを持っているにも関わらず、どうして世界を支配しようとか考えないんでしょうか?」


 それは真緒にとって純粋な疑問であった。人間誰しも強大な力を手に入れれば、それを行使したいと思うのは必然であろう。人間が欲深い生き物である限り、避けられない物事。しかし真緒達がこれまで会って来た守護者は皆、アイテムの能力に対してスケールの小さい事しか行っていない。


 「それはやっぱり……エジタスさんが選んだ人達だからじゃないのか? あの人が自分の素顔を見せてまでロストマジックアイテムを託したって事は……世界をめちゃくちゃにする事は無いと思ったからじゃないのか?」


 「成る程……さすがは師匠です」


 「ねぇねぇ、そのエジタスってどんな人なの?」


 真緒達がエジタスの名前を出すと、エレットが興味を示した。


 「どうしてそんな事を聞くんですか?」


 「いつも魔王様が独り言で呟いているのよ。『エジタスだったらこんな時……エジタスだったらどうするかって……』私は会った事が無いからどんな人だったか気になるのよ」


 「……すみません、師匠の事は私達だけの思い出なんです。そう簡単に教える訳にはいきません」


 「「「…………」」」


 ハナコ、リーマ、フォルスの三人は驚いていた。いつもならエジタスの事を聞かれたら小一時間は語り続ける真緒が、この時初めて語るのを断った。


 「ふーん、まぁ良いわよ。それよりあなた達、これからどうするつもりなのよ?」


 「どうするって……勿論、奪われたお金や武器防具を取り返します」


 「それなら良い方法があるわよ……ちょっと耳を貸しなさい」


 「「「「……?」」」」


 言われた通り、エレットに耳を貸す真緒達。エレットが何やら耳打ちをすると、驚きの表情を浮かべる真緒達。エレットはまるでイタズラを考えた小悪魔の様な笑みを浮かべる。


 「さぁ、作戦開始よ」

エレットが考えた作戦とは!?

真緒達はギャブラーから奪われた物を取り返せるのだろうか!?

次回もお楽しみに!!

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