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笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~  作者: マーキ・ヘイト
第四章 冒険編 殺人犯サトウマオ
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呆気ない幕引き

前回、アージの過去が明らかとなった。

人質に取られた舞子を果たして無事に助け出す事が出来るのだろうか!?

 「“欲望のままに”……そんな……そんなくだらない事で大切な家族を殺めたと言うんですか!!?」


 アージの過去を聞いた一同だったが、そのあまりにも中身の無い内容に呆れていた。真緒に至っては不快感すら感じていた。


 「お前にとってくだらない事でも、俺にとっては重要な事なんだよ!! 何でもかんでも自分を基準に考えるんじゃねぇ!!」


 「だとしても、今の話の何処に母親を……リューゲさんを殺める理由があると言うんですか!!?」


 「だからさっきから言ってるだろ!! 今まで俺は絵描きの家系に生まれたというだけで、兄であるリューゲと比べられて来た!! もううんざりなんだよ!! 抜け出したかったんだよ!! 血筋ばかりを気にする一族から!! そんな時にこの指輪を手に入れた!! これは最早、事を成せという神からの思し召し!! 俺はそれに付き従っただけだ!!」


 「それが……リューゲさんを殺す事だと言うんですか……あなたの事を心の底から心配していた家族に対しての仕打ちだと言うんですか……」


 「元凶が余計なお世話なんだよ!! それに俺の事を心の底から心配していたと言うが、それなら何で行方不明になった母親を探さないで、見知らぬ女を家に招き入れ、あまつさえ結婚までしているんだ!? 本気で家族の事を心配するなら、自分の事は後回しだろうがよ!!」


 「そ、それは……あなたが母親を殺したからじゃありませんか……」


 「だが当時、その事実を知っているのは俺だけだった!! なら家族として探し回るのは当然……しかしあいつは探さなかった。何故ならあいつは前々から、母親には消えて欲しいと思っていたからな!!」


 「そんなまさか!!?」


 「あり得ない話じゃないさ。もし本当に母親の事を探す気があったのなら、村中に声を掛ける筈だ。しかしあいつはそうしなかった。自分に口出しする者がいない方が楽だと思ったからさ」


 「リューゲさんが……」


 「だがあいつも人の子。唯一の肉親である俺を邪険に扱うのは気が引けるとして、表面上は弟の将来を心配する兄を演じて自己満足に浸っていたんだよ!!」


 「それであの時、自己満足を連呼していたのか……」


 フォルスの脳裏に、アージと初めて会った時の出来事が過った。


 「だからって……だからって殺す必要があったんですか!!?」


 しかし真緒は引き下がらない。家族の事を最も大切に思っている真緒には、アージの振る舞いはどうしても納得する事は出来なかった。


 「……元々、殺す気なんて無かったさ……父親は違えど血の繋がった兄弟。この一年、殺すべきかどうか悩んでいた……だけど……」


 「だけど?」


 「あんな“誘い”を受けてしまったら、断る事も出来ないからな。自分の利益を最優先させて貰った」


 「“誘い”? いったい誰に誘いを受けた!!?」


 「欲望のままに生きる……漸くこの俺にもチャンスが巡って来たと思った。この指輪を使えば成功は確実……そう思っていたのに……お前らが余計な事をしたお陰で破綻寸前だ!!」


 フォルスの問い掛けを無視し、アージは舞子に押し当てていたナイフを首に食い込ませる。


 「うっ……」


 「「「「!!!」」」」


 食い込ませた首から出血が起こり、ナイフを伝って地面に流れ落ちる。


 「だが、それもここまでだ。この女を人質に逃げさせて貰うぜ。そして人里離れた所で真・変化の指輪を使い、別の人間になっていつの日か、お前達に復讐してやるからな!!」


 「このままじゃ、逃げられてしまいますよ!!」


 「だからと言って、近付こうとすれば人質の舞子に被害が及ぶ……」


 「どうじだらいいんだぁ……」


 「舞子…………」


 「最後に笑うのはこの俺だ!! あっはっはっはっは!!」


 「……っ!!!」


 アージが高笑いを浮かべる中、舞子が首を絞めていたアージの左腕に向かって思い切り噛み付いた。


 「うぐっ!!? この糞女!!」


 左腕を思い切り噛まれた事に怒りを覚えたアージは、勢い余って首に食い込ませていたナイフを横に引いてしまった。


 「「「「!!!」」」」


 首からは血が止めど無く溢れ出した。そして舞子は力が抜ける様に、その場に崩れ落ちた。


 「舞子!!!」


 「し、しまった!! せっかくの人質が!!」


 「この糞野郎が!! “三連弓”!!」


 フォルスの弓から連続発射された三本の矢は、三本共アージの体に突き刺さった。


 「がはぁ!!?」


 三本の矢に射ぬかれ、膝を地面に付けて崩れ落ちる。その間に真緒達は舞子の側に駆け寄った。


 「舞子!! 舞子!!」


 「…………」


 体を抱き抱え声を掛ける。何か喋ろうとしているが、喉を切り裂かれてしまった為、声が思う様に出せ無かった。そうしている間にも、舞子の顔は見る見る内に青ざめてきた。


 「誰か……お願いします!! 誰か助けて下さい!!」


 真緒が必死に懇願するも、誰一人として動こうとしなかった。


 「お願い……舞子を……舞子を助けて……」


 「…………」


 俯き、大粒の涙を流す真緒。そんな真緒の手を取る舞子。


 「舞子……?」


 喋る事が出来ない舞子は、代わりに真緒の掌に文字を書き始めた。一文字ずつの為、非常にゆっくりとしているが伝え方としては充分だった。


 『……な……か……な……い……で……わ……た……し……は……ま……お……と……と……も……だ……ち……に……な……れ……て……し……あ……わ……せ……だ……っ……た』


 「!!! 私も……舞子と友達になれて幸せだよ……」


 『……あ……り……が……と……う』


 次第に書く力は弱まり、舞子の指は真緒の掌から離れた。そして静かにゆっくりと目を閉じるのであった。


 「……お休み舞子……次に生まれ変わった時も友達になれると良いね……」


 異世界から転移して来た勇者は、遂に真緒一人だけとなってしまった。


 「くそっ!! くそっ!! どうしてこんな事に!!」


 「……あなただけは……あなただけは絶対に許さない!!」


 怒りに燃える真緒はゆっくりと立ち上がり、重症を負っているアージの側に歩み寄ろうとする。


 「ひ、ひぃ!! お、おい!! 早く俺を助けろ!! 約束を破る気……」


 迫り来る真緒に対して恐怖を抱いたアージが、誰かに助けを求めようとしたその瞬間、アージの首が切り飛ばされた。


 「「「「!!?」」」」


 切り飛ばしたのは誰であろうロージェであった。真緒達の肉眼では捉えきれない程の速さで近付き、アージの首を切り飛ばしたのだ。


 「村民を誑かす殺人犯め。その罪、命を持って償うがいい」


 ロージェは剣を鞘に収めると、アージの死体から真・変化の指輪を取り外し、真緒達の方に歩み寄って来た。


 「マオ殿、この度は我々の軽率な考えからご迷惑をお掛けしてしまった。大変申し訳ない」


 頭を深々と下げるロージェ。それに続いて兵士達も次々と頭を下げる。


 「えっ、いや、そんな……誤解が解けて良かったです……」


 「マオ殿が真実を解き明かしてくれなかったら、あの男に騙されてしまう所だった。重ねて礼を申し上げる」


 再び頭を下げるロージェ。それに続いて兵士達も頭を下げる。


 「そ、そんな……お礼を言われる程じゃ……」


 「お詫びとなるかどうか分からないが、あの男が嵌めていた指輪をマオ殿に渡したい。聞いた話によると、君達は特別なマジックアイテムを集めているのだろう?」


 「そ、そうですけど……本当に貰って良いんですか?」


 「あぁ、君達ならば安心して渡す事が出来る。君達ならばきっと“正しく”扱う事が出来るだろう」


 「正しく? それってどう言う……」


 「これにてこの村での殺人事件の調査を終了する!! 死体を処理した後、帰還する!!」


 真緒が聞く前に、ロージェは兵士達の方へと行ってしまった。


 「「「「…………」」」」


 呆然と立ち尽くす真緒達。こうして一人の男の欲望によって引き起こされた事件は、呆気ない幕引きとなった。多くの疑問を残して…………。

手に入れた物が大きいだけに、失った物も大きかった。

事件は解決した。しかし、ある一人の人物は納得していない様子であった。

次回 第四章 殺人犯サトウマオ 完結!!

次回もお楽しみに!!

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