アイラ村殺人事件~救出~
処刑間近のリューゲ。
果たして真緒達は無事にリューゲを助け出せるのか!?
フォルス、リーマ、舞子の三人が縛られたロープから脱出する数十分前……。
「駄目だ……これと言った情報が手に入らない……」
思わぬ所でエジタスの遺したロストマジックアイテムの情報を手に入れた真緒とハナコの二人は、更なる情報を手に入れる為、村中を駆け回っていた。しかし期待した程の情報は手に入れられなかった。
「マオぢゃん……ぞんな事より、マオぢゃんの無実を証明ずる情報を手に入れだ方が良いど思うだぁ」
「そんな事って何さ!! 私にとってロストマジックアイテムは、師匠を辿る大切な事なんだよ!!」
「で、でも……ごのままじゃマオぢゃん……殺人犯どじで捕らえられでじまうだぁ。ぞれに……マオぢゃんを逃がず為に捕まっだリーマやフォルスざんを助げ出ざないど……」
「っ!! そうだね……私どうかしてた……師匠ばかりに気を取られて……大切な事を見失ってた……ごめん」
「……大丈夫だよ、マオぢゃん。マオぢゃんの無実を証明じで、捕まっでいる皆を助げ出じだ後、一緒にロストマジックアイテムの情報を探ずだぁ」
「ハナちゃん……ありがとう……」
『おい、聞いたか!!?』
「「ん?」」
遠くの方から村人の大きな声が聞こえる。声がした方向に顔を向けると、二人の村人が何やら興奮しながら会話をしていた。
『聞いた聞いた!! リューゲが犯罪の片棒を担いだ罪で“処刑”されるんだろ!!?』
「「!!?」」
『広場で執り行われるみたいだ。見に行くぞ!!』
二人の村人は広場の方へと走り出した。そしてあっという間に見えなくなってしまった。
「「…………」」
先程の会話に真緒とハナコは、呆気に取られていた。目を点にして、驚愕の表情を浮かべ、二人の村人が向かった広場の方面をじっと見つめていた。
「リューゲさんが処刑……?」
「ど、どうじで……」
「考えている暇は無いよ!! 急いで広場に向かって助けないと!!」
すると真緒は、ハナコを置いて一人で広場へと向かってしまった。
「マオぢゃん!!? ぢょっど待っで欲じいだぁ!!」
その後を急いで追い掛けるハナコ。
***
村の中心となる広場。広々とした空間は普段村人達の憩いの場として利用され、待ち合わせや村全体を見回す時など多くの面で活躍して来た。だが、そんな歴史ある広場が処刑の場として利用されそうになっていた。リューゲの処刑を一目見ようと人が集まる中、手足をロープで縛られたリューゲを中心に、その周りをロージェ率いる大勢の兵士達が取り囲み、誰一人として通そうとしない。
「首尾はどうだ?」
「はい、広場一帯を全て封鎖しました。ネズミ一匹入る事は出来ません」
「そうか……よし、では手筈通りに処刑を開始する」
「あ、あの……その事なんですが……」
「何だ?」
「本当に処刑なさるのでしょうか? 犯罪の片棒を担いだと言っても、逃亡を手助けしただけであって……何も処刑しなくても……」
「甘ったれるな!!」
「ひぃ!!?」
「奴は凶悪な殺人犯を野に放ったのだぞ!? それによって罪無き命が失われてしまうかもしれない。将来的な事を考慮すれば、奴の処刑は妥当な判断だと言える……」
「…………」
「……とは言え、一般市民であるのも事実……もし仮にあの殺人犯が情の欠片を持ち合わせているのであれば、この処刑を食い止めに来る筈だ。その為にわざわざ目立つ広場を選んだのだからな」
「そ、そうですね」
「無駄口は済んだか? ならさっさと持ち場に着け!!」
「は、はい!!」
ロージェに怒鳴られ、慌てて持ち場へと走り出した。
「全く腑抜けが……さて、何処からやって来る……“サトウマオ”」
ロージェが真緒達の到着を待つ中、噂の真緒とハナコが広場へと到着した。
「凄い人だかり……」
「あっ、マオぢゃん!! あぞごにいるのっで!!?」
ハナコが指差す方向には、手足がロープで縛られている膝立ちのリューゲがいた。
「リューゲさん……必ず助け出しますから……」
「でもマオぢゃん……あんなに多ぐの兵士が見張っでいるだよぉ。どうやっで助げるづもりだぁ?」
「そ、それは……」
真緒達が今も逃げ仰せているのは、変化の指輪のお陰である。しかし、ここでリューゲを助けに広場へと飛び出そうとすれば、容姿関係無く捕らえられてしまう。また指輪を外して真っ向から戦おうとすれば、リューゲを人質にされてしまい、結局捕らえられてしまう。八方塞がりであった。
「聞け!! 村人達よ!!」
「「!!!」」
二人が突入方法に悩んでいると、ロージェの演説が始まった。
「この男は殺人犯の逃亡を手助けした罪で捕らえている!!」
“殺人犯? マジかよ……”
“あのリューゲさんが……信じられん……”
“俺は元々、胡散臭い奴だと思っていたよ”
“村に不幸を呼びやがって!! この裏切り者!! 恥を知れ!!”
“早く処刑しろ!!”
“死ね!! 死ね!! 死ね!!”
“死ね!! 死ね!! 死ね!!”
“死ね!! 死ね!! 死ね!!”
村人達の興奮はピークに達し、遂にはリューゲに対する死を促すコールが始まってしまった。
「…………静まれ!!」
“死ね!! 死……”
しかし、ロージェの一言で村人達は一斉に口を閉じる。ある程度、静かになった事を確認したロージェは再び演説を始める。
「確かにこの男は許されざる過ちを犯した……しかし、彼もまた人間!! チャンスを与えるべきではないか!? そこで彼には“生け贄”になって貰う事にした!!」
「生け贄……?」
「凶悪な殺人犯に告げる!! 今から十分以内に名乗りでなければ、この男の首が飛ぶ事になる!!」
「「!!!」」
「もし名乗り出て来るのであれば、この男の命は保証しよう!! 忘れるな!! 十分以内だからな!!」
そう言い終わるとロージェは、リューゲの側へと移動し、周囲を警戒し始めるのであった。
「マオぢゃん……どうしよう……」
「名乗り出なければリューゲさんは殺される……私……名乗り出るよ」
「ぞんな駄目だぁ!! ぞんな事をじだらマオぢゃんが殺ざれでじまうだぁ!!」
「でも……『ハナコの言う通りだぞ。マオ』……えっ?」
名乗り出るか出ないか悩んでいると、ロープから脱出したリーマ、フォルス、そして舞子の三人がやって来た。
「リーマ!! フォルスさん!! アイラさん!! 三人とも無事だったんだね!!」
「真緒……私、本当はアイラじゃなくて舞子なんだよ」
「えっ?」
「記憶喪失ってのは嘘なんだよ。騙していてごめん……」
「嘘? えっ? どう言う事?」
「話せば長くなる。取り敢えずその辺の話は後にして、まず優先すべきはリューゲの救出だ」
アイラはやっぱり舞子だった。突然の告白に、真緒は酷く混乱してしまった。そんな中、フォルスが話を纏め上げて全員を落ち着かせた。
「そ、そうですね……でもいったいどうやって……周りは兵士に守られていて一歩も中に入れませんよ?」
「安心しろ。良い作戦がある」
「良い作戦?」
「その前にだ。マオ、どうやらこの村にはロストマジックアイテムがあるらしい」
「あっ、それなら私も聞きました!! 何でも一年前、アージさんが“大金に勝る物を手に入れた”って話していたらしいです」
「アージが? 変だな……俺が聞いた話では“イラ”と呼ばれる人物が、エジタスさんからロストマジックアイテムを受け取ったらしい」
「え? そうなんですか? じゃあ……私のは思い違いだったのかもしれません」
「…………」
「そんな事より、早くリューゲさんを助け出しましょう!!」
「……あ、あぁ……そうだな……それじゃあ作戦を説明するぞ。時間は残り少ないから一回しか説明しない。まず……俺とマオの二人で……」
リューゲの処刑が迫る中、フォルスは広場突入の作戦を説明し始めるのであった。
***
「…………時間切れだな……」
予告した時間が過ぎた。ロージェは村人達の前に歩み出ると、演説を始めた。
「十分過ぎた!! これよりこの男の処刑を始める!! これが最後の警告だ!! 今ならまだ間に合うぞ!!」
しかし、とうとう名乗り出て来る者は現れなかった。
「……ふん、薄情な奴だ……よし、処刑を開始『おい、あれは何だ!!?』……何!!?」
村人の一人が大声を上げ、空を指差す。それに釣られて広場にいる全員が指差した方向に顔を向ける。するとそこには太陽に照らされる黒い影があった。
「あれは……人だ!!」
「いや……鳥だ!!」
「いや……その両方だ!!」
空を舞う黒い影。誰であろう真緒とフォルスの二人だった。真緒は魔法の鎧である“虚空”で空を飛び、その後ろをフォルスが付いて来ていた。
「陽動作戦は上手く行ってるな……このまま降下作戦に移行する!! 暴れてこい!!」
「分かりました!! 真緒、行きます!!」
リューゲがいる位置に到達すると、真緒は虚空の能力を切った。そしてそのまま重力に従って地上へと落下していく。
「しまった!! 貴様ら!! 早くその男を守れ!!」
「!!? 成る程……そう言う事か……」
ロージェの慌てた様子に、フォルスは察した様な表情を浮かべる。
「はぁあああああ!!! スキル“ロストブレイク”!!」
「「「「ぐわぁああああ!!!」」」」
勢い良く地上に落下した真緒は、地上にいる兵士達目掛けてスキル“ロストブレイク”を発動した。凄まじい衝撃波が兵士達を襲い、次々と吹き飛ばされていく。
「えぇい!! 私の前で好き勝手な真似はさせないぞ!! っ!!?」
リューゲの監視をしていた兵士達が次々と吹き飛ばされていく。そんな光景を見て、ロージェは怒りに震えながら真緒の下に駆け寄ろうとした。しかしその直後、ロージェの足下に一本の矢が突き刺さる。
「おっと、悪いがここで立ち止まって貰おうか?」
「鳥人の分際で……嘗めた真似をしてくれるじゃないか……何をやっている!!? 早く援護に向かわないか!!?」
「周りの兵士達に助けを求めても無駄だぜ。今頃、村人達にタコ殴りにされているだろうからな」
「何だと!!?」
ロージェが慌てて周囲を確認すると、周りの兵士達は村人達の暴動の対処に追われていた。
“うぉおおおお!!! アイラちゃんを泣かせる奴は兵士だろうが、王様だろうが容赦しないぜ!!!”
“俺達の聖女を虐めるお前らを絶対に許さない!!”
“アイラさんはお爺ちゃんの怪我を治してくれた……他にも数え切れない程の恩があるわ……なら今度は私達がその恩を返す番よ!!”
“村人の力……嘗めるなよ!!”
一般市民に手を出す事が出来ない兵士達は、村人達にやられ放題であった。
「た、隊長!! 我々はいったいどうすれば!!?」
「スキル“インパクト・ベア”!!」
「ぐわぁあああああ!!!」
「!!!」
ロージェに助けを求めた兵士も、ハナコのスキルによって吹き飛ばされてしまった。
「“ウォーターキャノン”!!」
「「ぐわぁあああああ!!!」」
更にリーマの魔法により、複数の兵士達が倒され……
「皆さん……ありがとう……私なんかの為に……ありがとう……ありがとう……ふふっ」
聖女(舞子)の涙に騙され、躍起になる村人達に大半の兵士達が倒される。フォルスの作戦が見事に成功していた。
「この勝負……俺達の勝ちだな」
「貴様ら……調子に乗るなよ……」
「何を言って……っ!!?」
勝利を確信したフォルスだったが次の瞬間、ロージェは人間離れした跳躍力で一瞬の内に真緒の側に近付いた。
「マオ!! 気を付けろ!!」
「えっ!!?」
「死ね!!!」
フォルスの声掛けにより、ギリギリ気が付く事が出来た真緒。真緒の剣とロージェの剣が激しくぶつかり合い、火花を散らす。
「お前さえ……お前さえいなくなれば……!!!」
「つ、強い!!? でもそれだけじゃない……何……この凄まじい殺意は!!?」
「死ねぇえええええ!!!」
「しまった!!!」
集中力を切らしてしまい、真緒は剣を弾かれてしまった。手元に武器が無い真緒はロージェの攻撃を防ぐ事が出来ない。ロージェの剣が真緒の体を貫こうとしたその瞬間!!
「そこまでだ!!」
「「!!?」」
地上に降りたフォルスが真緒の剣を拾い上げ、何故かリューゲに向けていた。
「ちょ、えっ!!? 何やっているんですかフォルスさん!!?」
「フォ、フォルスさん……?」
「な、何がどうなっでいるだぁ!!?」
「ちょっとあんた!!? 私の夫に何で刃物を押し当てているのよ!!?」
「……何のつもりだ……そいつを殺したら困るのはお前らの方だろう?」
救助対象であるリューゲに刃物を向けるフォルスの異常行動によって、その場にいる全員の動きが止まった。そしてそれまで騒がしかった広場は静寂に包まれていた。
「へへっ、惚けるなよ……こいつを殺されて困るのはお前らの方だろう? いや、正確にはお前だけか……」
「何の話をしているのかさっぱりだ」
「そうか……じゃあここで殺す事にしよう」
「「「「「止めろ!!!」」」」」
フォルスがリューゲを殺そうとしたその時、真緒、ハナコ、リーマ、舞子の四人だけでは無く、何故かロージェまでもが止めに入ろうとした。
「やっぱりな……」
「どう言う事ですか? どうしてロージェが止めに入ったんですか?」
「簡単さ、このリューゲを殺されると困るのは俺達だけじゃないって話だ」
「それってつまり……」
「つまり元々、こいつにリューゲを殺す気は無かったって事さ……」
「…………ちぃ!!」
分かりやすく舌打ちを鳴らす。それがより一層殺す気が無い事を裏付ける。
「で、でもいったいどうして……?」
「それは……この事件の真実に関係しているからだろう」
「真実?」
「……今から皆に俺の推理を聞かせる!! この事件の真相を!! そして誰が本当の罪人なのかを!!」
今、フォルスの口から事件の真相が語られる。しかしそれはあまりにも信じがたい内容であった。
遂に事件の真相が暴かれる!!
果たして真犯人は誰なのか!?
あなたはこの謎を解き明かす事が出来ましたか?
謎を解き明かすヒントは既に全て揃っています。
次回もお楽しみに!!
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