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笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~  作者: マーキ・ヘイト
第四章 冒険編 殺人犯サトウマオ
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アイラ村殺人事件~罪悪感~

前回、アイラはやっぱり舞子だった!?

記憶喪失だった筈のアイラから語られる衝撃の事実!!

 「フォルスさん!! いったいどう言う事ですか!?」


 「アイラ……いや、マイコが記憶喪失じゃないと最初に思ったのは、リューゲが語ってくれた想い出話の時だ」


 「想い出……リューゲさんがマイコさんに会った時の話ですね」


 「あぁ……その話の中でリューゲが誤って指を切ってしまい、アイラに回復魔法で治して貰ったと聞いた俺は、ふと疑問に思った」


 「何にですか?」


 「もし仮に記憶喪失だとしてだ。何故回復魔法を扱う事が出来たのか」


 「でもそれはリューゲさんだって言っていたじゃありませんか。“必死に祈ったら出来た”って」


 「じゃあリーマ、お前も必死に祈れば回復魔法を扱える様になるのか?」


 「い、いや……それは……」


 「魔法は奇跡じゃない。天性の才能と並々ならぬ努力によって、初めて扱える代物だ。しかし、ここにいるアイラは記憶喪失で自分が誰なのか分からず混乱する中、的確に魔法を唱えて見せた」


 「でもそれだけでアイラさんが記憶喪失じゃ無かったとは!!」


 「その通り、俺もこの時は半信半疑の状態だった。想い出話の途中まではな」


 「途中まで……?」


 「リューゲの話……長かったな」


 「えぇ、惚気話も入っていたので軽く三十分は掛かったと思いますけど……」


 「この村はそこまで広くは無い。卵数個を買うのに果たして、何分掛かるだろうな?」


 「それって……まさか!!?」


 「あぁ、恐らく何処かで一緒に話を聞いていたと思う」


 「そんな……」


 「だがこれら全ては俺の憶測に過ぎ無かった。アイラがイシダマイコという事実を受け入れるまではな」


 「成る程……鎌を掛けられた訳ね……情けない話ね。一年前だったら、意地でも突き通したのに……」


 そう言いながら天井を見上げ、遠い目をする。


 「平和ボケしちゃったのかな……」


 「話してくれるか?」


 「えぇ、言われなくても全部話すつもりよ」


 軽く溜め息を吐き、見上げていた視線を下に下ろす。


 「全ての始まりは“あの道化師”に連れて来られた事だった」




***




 あの日、あなた達に負けて……目の前で聖一さんが愛子の首を斬り飛ばして……訳が分からなくなってた。これは夢だ。そう思いたくなる程、悲しかった。そんな中、あの道化師がカルド王国まで送る事になった。


 「それでは、行ってきます」

 

 「はい、分かりました。師匠、気をつけて行って来て下さい」


 道化師に肩を触れられた次の瞬間、あの森の中に転移していた。


 「あああああ……あ、あれ? ここは……?」


 「おやおや、正気を取り戻しましたか……」


 「さっきまで……あれ? どうして?」


 「細かい事を気にしたって仕方が無いでしょ。大切なのはこれからどうするか……そうだろう?」


 「えっ?」


 突然の状況変化に混乱していると、道化師は片手で私の顔を掴んで来た。


 「な、何!? い、痛い!! 痛い痛いよ!! 止めてよ!! 痛いって!!」


 道化師の指圧が頭蓋骨に伝わって来る。ミシミシと音を立てて、今にも砕けてしまいそうだった。


 「あなたが発狂したままなら、森の中に置き去りにしようと思っていたんですけど……正気を取り戻したのなら話は別です。このまま頭蓋骨を割って殺してしまいましょう」


 「そんな!? お願い!! 殺さないで!! 何でもするから!!」


 「ん~、普通ならここで『ん? 今何でもするって言った?』って言うのかもしれませんけど……私から言わせれば死亡フラグでしかないんですよね~」


 指が食い込む。手袋をしている為、爪は刺さらず血も出ない。だけど細胞が死滅していくのは感じた。


 「いや……いや……いやぁあああああああああああああああああ!!!」


 「………な~んちゃって!!」


 「…………へ?」


 道化師は、食い込ませていた指を突然離した。


 「驚きましたか~? 寿命は縮まりました?」


 「え? え?」


 「安心して下さい。殺したりしませんよ。これからこの世界を“笑顔の絶えない世界”にするのに、無益な殺生をしたら勿体無いですからね~」


 「た、助かるの?」


 「勿論……ただし、お願いを聞いてくれたらですけどね~」


 「お願い……?」


 「実はこの近くに小さな村があるんですけど……その村に住む“イラ”という人物にあるアイテムを渡したんですよ~」


 「“イラ”?」


 「はい、いつもだったらイラの方から報告の手紙を送って来るんですけど……今年は全然来なくて~」


 「は、はぁ……」


 「だから何かあったのか、村に入って調査して来て下さい」


 「ど、どうして自分で行かないの?」


 「そうしたいのは山々なんですけど~、私これから殺されないといけないんですよ~」


 「えっ? 殺さ……えっ?」


 「頼みましたよ。もし断るのであれば……分かっていますよね?」


 そう言うと道化師は、私の顔を掴んでいた指をわきわきと動かした。


 「…………」


 私は震えながら頷いた。もし断れば、今度こそ殺されると思った。恐怖から涙目になり、何ともみっともない姿だったと思う。


 「それじゃあ、後はお願いしますよ~。あぁ、それとマイコという名前は捨てた方が懸命ですよ。あなたの名前は偽勇者一行として有名過ぎますから」


 「わ、分かりました」


 その答えを聞く前に、道化師は指をパチンと鳴らし、その場から姿を消した。


 「…………」


 まるで嵐が過ぎ去ったかの様に、森は静寂に包まれていた。目の前で友人が友人の首を斬り落とし、道化師には約束を守らなければ殺すと脅された。この数十分間、生きた心地が全くしなかった。


 「もう……駄目……」


 ホッと一安心したのも束の間、どっと押し寄せる疲れに、私の意識は遠退いた。次に目が覚めると、目の前には見知らぬ男性が立っていた。




***




 「……その後はあなた達が知っている展開通り……」


 「それじゃあ、マイコさんはその“イラ”という人を探す様にエジタスさんから言われたって事ですか?」


 「そう言う事よ……因みにリューゲと結婚したのは、この村で住みやすくする為……」


 「それで肝心の“イラ”は見つかったのか?」


 「…………」


 フォルスの問い掛けに首を横に振る。


 「全く……村に住んでいたのは確からしいけど……ある日突然姿を消してしまったらしいわ」


 「そうか……(そのイラという人物が貰ったアイテムは、十中八九エジタスさんの遺したロストマジックアイテムだろう。だが、これ以上の情報は得られそうにないか……)」


 「この村で住みやすくする為って……リューゲさんの事を愛してはいないんですか?」


 「……初めはそうだった。使える男だと思って……ずっと隠れ蓑として利用していた……私だって人間……死にたく無いわ。でも、一緒に住んでいく内にいつしかリューゲが心の拠り所になっていた」


 「「…………」」


 舞子は語る。リューゲに馳せる想いを。


 「記憶喪失という言葉を鵜呑みにして、素性が知れない私に愛情を注いでくれた……今なら言える……今だからこそ言える……私はリューゲの事を心の底から愛している」


 「マイコさん……」


 「ならどうして、マオの前で知らない振りをしたんだ」


 「…………」


 「た、確かに……どうしてなんですか?」


 「…………」


 先程とは打って変わって、全く口を開かない舞子。


 「答えろ」


 「…………今さら……」


 「「?」」


 「今さらどの面下げて会えば良いのよ……私は元いた世界でマオを……あいつを虐めていた……」


 「でもそれはもう謝って解決したじゃないですか……」


 「それじゃ駄目なのよ!!」


 「「…………」」


 「例え謝ったとしても……虐められた者が負った心の傷は永遠に残り続ける……そして虐めた事を後悔した者は……謝った後も罪悪感が永遠に心を縛り続ける……真緒が許したとしても、私の心がそれを許さない……この気持ちは死ぬまで残り続ける……私も……愛子の様に自分勝手な性格だったら良かったのに……」


 「それなら尚更、お前はマオに会って話すべきだ」


 「何ですって……?」


 「お前の心の拠り所がリューゲである様に、マオの心の拠り所はお前なんだ」


 「私が真緒の心の拠り所……? 冗談も休み休み言ってよ」


 「マオは元の世界には未練は無いと言っていた。だが、口ではそうは言ったが心もそうとは限らない。心の何処かでは、元いた世界に思う所があるのかもしれない。現にお前と再会した時、マオはいつも以上に喜んでいた」


 「…………」


 「ちょっと羨ましいですよ。マオさんを心の底から喜ばす事が出来るのは、あなただけなんですから……」


 「だけど……私は……」


 「マイコ……もっと素直になれ」


 「…………えっ?」


 「どうして一人で抱え込む? 辛いのなら言え。罪悪感に押し潰されそうなら相談しろ。マオや俺達は決してお前を見捨てたりしない」


 「……うっ……うぅ……」


 目から涙が落ちる。手足を縛られている為、涙を拭く事が出来ない。顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。しかし、不思議と汚いとは思わなかった。


 「私……会いたい……真緒に会って……話したい……今までの事……そしてこれからの事を……」


 「あぁ、必ず会おう」


 「その為には、何とかしてこのロープを外さないといけませんね」


 「それなんだが、俺に良いアイデアが…………ん?」


 会話の途中で突然口を閉じるフォルス。


 「どうかしましたか?」


 「何だか……外が騒がしくないか?」


 「「えっ?」」


 外が騒がしいと言うフォルス。リーマと舞子は口を閉じて、耳を澄ます。


 『おい、聞いたか!!?』


 『聞いた聞いた!! リューゲが犯罪の片棒を担いだ罪で“処刑”されるんだろ!!?』


 「「「“しょ、処刑”!!?」」」


 『広場で執り行われるみたいだ。見に行くぞ!!』


 「「「…………」」」


 信じられない言葉を耳にした一同。驚きの声を上げ、互いに目を合わせる。


 「ど、どうしましょう!!?」


 「そんなリューゲが……そんな……」


 「一旦、落ち着け!! 今は兎に角、このロープから脱出するんだ!!」


 「でもいったいどうやって!!?」


 「リーマ、俺の前に来てくれないか?」


 「え? 前にですか?」


 「いいから早くしろ!!」


 「わ、分かりました!!」


 リーマは這いつくばりながらも、フォルスの前に移動する。するとフォルスは仰向けに倒れ、鋭い鉤爪を出した。


 「あっ、そうか!! フォルスは鳥人!! 鉤爪がありましたね!!」


 「ふっ、能ある鷹は爪を隠すって所だな。さぁ、縛られている部分をこっちに寄せるんだ」


 「分かりました!!」


 後ろ向きになりながら、フォルスの鉤爪に縛られている手首の部分を近付ける。


 「よし、動くなよ……」


 「フォルスさん……間違って手首を斬らないで下さいね……」


 「任せろ…………斬れたぞ!!」


 「あっ、やった!!」


 鉤爪を何度も動かし、見事リーマの手首を縛っていたロープを切断した。


 「後は自分で何とかなるな?」


 「はい!!」


 そう言うとリーマは自分の足首に縛られていたロープを取り外した。


 「ふぅ、これでやっと自由に動けます」


 「良いぞ!! その調子で俺達のロープも外してくれ!!」


 「分かりました!!」


 自由の身になったリーマは、続けてフォルスと舞子のロープを取り外した。


 「……ありがとう」


 「マオさんに会うんです。置いて行ける訳がありません」


 「よし、全員自由に動けるな。急いで広場に向かうぞ!!」


 「「はい!!」」


 「あっと……その前に済ませたい用事があったんだ。悪いが先に行っててくれないか? 必ず追い掛ける」


 「……分かりました。そう言う事なら私達は先に広場へと向かいます。行きましょう」


 「だ、大丈夫なの?」


 「フォルスさんには何か考えがあるんでしょう。私達は信じて先を急ぐ他ありません」


 「そう……なら、お言葉に甘えて先に行かせて貰うわよ」


 「フォルスさん、気を付けて下さい」


 「お前達もな……」


 フォルスを残して一足先に広場へと向かう二人。


 「さて……マオが寝ていたベッドを調べるか……」


 一人残ったフォルスは、マオが寝ていたベッドを調べるのであった。

謎が謎を呼ぶ展開。

新たに上がった人物“イラ”

今後このイラが物語にどう関わっていくのか。

そして、リューゲの処刑を食い止める事が出来るのだろうか!? そして事件の真相は!?

次回もお楽しみに!!

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