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笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~  作者: マーキ・ヘイト
第四章 冒険編 殺人犯サトウマオ
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アイラ村殺人事件~逃亡~

前回、連行されそうになった真緒。

そんな真緒の逃亡を手助けしたハナコ、リーマ、フォルスの三人。

果たして、無事に逃げ切れるのか!?

そして事件は解決出来るのだろうか!?

 「いたか!?」


 「いや、こっちにはいない!! 他の所を探すぞ!!」


 逃亡した真緒達を追い掛けて来た兵士二人だったが、見失ってしまっていた。


 「くそっ!! いったい何処に隠れたんだ!!」


 「誰か見ていないか……あっ!!」


 目撃者はいないのかと辺りを見回すと、二人の女性が歩いているのを見つけた。


 「すみません!! ちょっとよろしいでしょうか!?」


 「っ!!? な、何でしょうか!?」


 女性の一人は天パで目元が隠れており、もう一人の女性は恰幅の良いおばさんだが、ずっと俯いていて表情は読み取りにくい。しかし額から汗を流しているなど、驚きの表情を浮かべているのは明白だった。何故、そんなにも焦っているのか一瞬疑問を浮かべる兵士だったが、突然鎧を着た人物に声を掛けられたのだ、焦るのも当然かと納得した。


 「実はこの辺りに狂暴な殺人犯が逃げて来た筈なのですが、何か見ていないでしょうか?」


 「さ、殺人犯ですか!? い、いえ……それらしい人影は見ませんでした……」


 「そうですか……ご協力に感謝します!! もし何か見掛けましたら、直ぐ私達に知らせて下さい!!」


 「は、はい……わかりました」


 「それでは……ん? そちらの女性はどうかされたのでしょうか?」


 有益な情報が得られなかった兵士は、その場から離れようとするが、女性の隣にいるもう一人の女性がずっと俯いているのに気が付き、どうしたのか尋ねた。


 「えっ!? あっ、いや、その……は、母は人見知りな性格でして!! 緊張しているんですよ!! ね? そうよね!?」


 「…………」


 天パの女性は母親と称する中年のおばさんに問い掛ける。するとおばさんは無言のまま、首を縦に振る。


 「そうですか……いや、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。これで失礼します!!」


 そう言うと兵士の二人は敬礼をし、その場を足早に去った。


 「「…………」」


 兵士の姿が見えなくなるのを確認した二人の女性は、こそこそと建物の影に身を潜める。


 「ここなら誰もいないかな……もう喋っても大丈夫だよ」


 「はぁー、バレるがど思っでドギドギじだだぁ……」


 二人の女性の正体は、逃亡中の真緒とハナコの二人であった。天パの女性が真緒、中年のおばさんがハナコ。ずっと俯いていた本当の理由は、ハナコの特徴的な喋りを聞かせない為であった。万が一、声を聞かれてしまったら見破られるのは確実であろう。


 「ヘッラアーデ潜入の時にリップから貰った“変化の指輪”のお陰で、何とか凌ぐ事が出来たけど……」


 指に嵌められた指輪を外す。すると天パの女性と中年のおばさんは、真緒とハナコの二人へと瞬く間に戻った。


 「問題はこれからどうするかって事だよね……」


 「…………」


 完全に後手に回ってしまっている。今回はどうにか追っ手から逃れる事には成功したが、いつまでも逃げられるとは考えにくい。真緒の疑いが晴れぬ限り、本当の自由は手に入らない。


 「それに……リーマ、フォルスさんの二人を置いて来てしまった……」


 「二人なら大丈夫だぁ。マオぢゃんはマオぢゃん自身の心配をずるべぎだぁ」


 「…………ねぇ、ハナちゃん」


 「何だぁ?」


 「リーマやフォルスさんにも言える事だけど……どうして助けてくれたの?」


 「…………」


 「これじゃあ私だけじゃなく、皆まで罪を被る事になっちゃうよ」


 「……信じでいるがらだぁ」


 「えっ?」


 「マオぢゃんは、決じで人殺じをずる様な人じゃないだぁ。一年間、ずっど側にいだがらなぁ。リーマやフォルスざんもオラど同じ気持ぢだぁ。オラはマオぢゃんを信じでいる。だがらマオぢゃんもオラ達を信じで欲じいだぁ」


 「ハナちゃん……そうだね……私弱気になってた。朝起きたら被害者のベッドで寝ていて……次々と証拠が出て来て……もしかしたら、気付かない内に殺ってしまったんじゃないかって……でも、もう自分の意思は曲げない!! 私は殺ってない!! 私がこの事件の真犯人を見つけ出して見せる!!」


 「マオぢゃん、ぞの意気だぁ!!」


 「……とは言ったものの……他に手掛かりとなる物が無いんだよね……」


 「…………」


 絶望的な状況。真緒が犯人という証拠だけが発見され、他の人の証拠は一切見つかっていない。更に真緒達は現場から離れてしまっている為、証拠を集める事すら出来ない。


 『……マジかよ、その話……』


 「「?」」


 その時、近くから誰かの話し声が聞こえて来た。真緒とハナコの二人が建物の影からこっそりと覗くと、そこには二人の男性が会話をしていた。


 「あぁ、何でもリューゲの所にいる弟のアージが何者かに殺されたんだってよ」


 「うわぁ……アージの奴も気の毒に……折角“大金”が手に入ったってのに……」


 「大金? 何の話だろう?」


 「ごごがらじゃ、よぐ聞ごえないだぁ。ぢょっど聞いで見るだぁ」


 「あっ、ちょっと待って。その前に指輪を嵌めないと」


 二人は情報を手に入れる為、再び指輪を嵌めて姿を変化させた。真緒は天パの女性、ハナコは中年のおばさんになった。


 「あのー、すみません……」


 「ん? 何だあんたら?」


 「いや、あの……たまたま聞こえて来たんですけど……アージさんが殺されたって言うのは本当なんですか?」


 「あぁ、本当さ。何でも犯人は狂暴な勇者らしいんだ」


 「そうそう、そして仲間には飲食店を赤字一歩手前まで追い込む超大食いの熊人がいるらしい」


 「へ、へぇ……」


 「…………」


 半分嘘で半分本当の情報に、苦笑いを浮かべる真緒。ハナコは何も言わず俯く。


 「それでさっき大金がどうのって言っていましたけど……」


 「あぁ、正確には大金に勝る物だけどな。一年前位かな? あいつの親父が亡くなって、落ち込んでいるだろうと慰めに行ったら、落ち込む処か満面の笑みで話して来たんだよ。『俺は今日、大金に勝る物を手に入れた』ってな」


 「大金に勝る物……何なんですかそれは?」


 「さぁな、最初は親父の遺産でも手に入ったのかと思ったが……もしそうなら、今頃ゴルド帝国の大豪邸に住んでいる筈だしな」


 「そうそう、それからあいつ急に人が変わった様な態度を取り始めたよな。リューゲとの仲も悪くなっていた様だし、何が起こるか分からないな」


 「リューゲさんとアージさんって、仲が良かったんですか!?」


 「勿論、顔から行動まで瓜二つだって、村中から一目置かれていたんだぜ……あいつの親父が亡くなってからはすっかり変わっちまったけどな」


 「そうだったんですか……」


 「あいつの親父はそこそこ名の売れた画家でな。兄のリューゲには絵の才能があったんだが、弟のアージにはその才能が全く無かったんだ。もしかしらアージは何処かしらリューゲに劣等感を感じていたのかもしれないな。でも兄弟だから仲良くしないといけないと考えていた……それが親父というストッパーが亡くなった事で、抑え込んでいた想いが爆発したのかもな」


 「…………」


 「おっと、何だか暗い雰囲気になっちまったな。それじゃあ俺達はそろそろ行くよ」


 「わざわざ教えて頂き、ありがとうごさいました」


 真緒とハナコは、情報提供してくれた男性二人にお礼を述べ、そのまま見送った。


 「……これは有益な情報が手に入ったかもしれないね」


 「えっ、どう言う事だぁ?」


 「あの人達の話によると、一年前にアージさんは大金に勝る物を手に入れていた。問題なのは一年前というワード、一年前と言えば師匠が亡くなった時期……」


 「ま、まざがぁ!?」


 「そうだよ……もしかしたら、この村にあるのかもしれない……師匠の遺したロストマジックアイテムが!! こうしちゃいられない!! もっと情報を手に入れないと!! 行こうハナちゃん!!」


 「ぢょ、ぢょっど待っでぐれだぁ!!」


 思わぬ所でロストマジックアイテムの情報を手に入れた真緒達。逃亡中という事を忘れ、村中を駆け巡るのであった。



 

***




 一方、リューゲの家ではロージェが眉間にシワを寄せながら、アージの部屋の中を落ち着きが無い様子で歩き回っていた。


 「おい!! まだ見つからないのか!?」


 「も、申し訳ありません!! 兵士を総動員させてはいるのですが……何故か一向に見つからなくて……」


 「奴等は煙じゃ無いんだ!! 必ずこの村の何処かにいる!! 民家の中も徹底的に調べ上げるんだ!!」


 「はっ!!」


 ロージェの命令を受け、兵士は部屋を後にする。


 「くそっ!! もっと早く兵士を派遣出来ていれば、こんな事態にはならなかった……それもこれも……貴様らが逃亡の手助けをしなければな!!」


 目線の先にはロープで縛り上げられたリーマ、フォルス、アイラ、リューゲの四人がいた。


 「俺達は仲間だ……仲間が無実の罪で連行されるのを黙って見過ごす事は出来ない」


 「仲間か……お前達の言い分は少なからず理解出来る……だがまさか、この家の家主まで手助けをするとは思わなかったぞ」


 リューゲとアイラの二人を睨み付ける。


 「大切なお客様を無実の罪で連行させる訳にはいかない。それに……たった一日ですが、マオさんが人を殺すだなんてどうしても考えられません」


 「…………そうか、そんなに殺人犯の肩を持つのか。なら、そのたった一日の絆がどれだけの代物か、確かめさせて貰おうか。おい、連れて行け」


 「「はっ!!」」


 「な、何をするんだ!?」


 廊下にいた兵士二人が部屋へと入り、リューゲを連れて行ってしまう。


 「あなた!! あなた!!」


 「俺なら大丈夫だアイラ!! 直ぐに戻る!! 心配するな!!」


 「あなた!! あなた!! 夫を何処に連れて行くつもりですか!?」


 「……有効活用させて貰う……」


 「そんな……あなた!! あなた!!」


 「心配するな!! 大丈夫だ!! 必ず戻る!!」


 そう言いながらリューゲは何処かに連れて行かれてしまった。そしてその後に続く形で、ロージェも部屋を後にする。部屋にはリーマ、フォルス、アイラの三人だけが残された。


 「あなた……あなた……」


 「アイラさん……大丈夫、きっと無事に帰って来ますよ」


 「どうしてそんな事が言い切れるのよ!!」


 「いや……それは……ごめんなさい……」


 「!!! 私の方こそごめんなさい……」


 気まずい雰囲気が流れる。真緒とハナコがいなくなり、更にはリューゲまでいなくなってしまった。これからどうなるのか、後先の不安に苛まれる。


 「…………」


 そんな中、アイラは縛られながらも指に嵌められた青い宝石が嵌められた指輪を指先で優しく撫でていた。


 「綺麗な指輪ですね……」


 「えっ、あっ、はい……これは夫との結婚指輪なんです……」


 「結婚指輪だったんですか……羨ましい……リューゲさんも同じ指輪を?」


 「はい、ペアルックなんて恥ずかしいって言ったんですけど……どうしても一緒にしたいって聞かなくて……」


 「リューゲさんは良い旦那さんなんですね」


 「はい……とっても……私には勿体無い位です……」


 「なぁ、ちょっと聞いても良いか?」


 アイラが想い出話に花咲かせていると、フォルスが突然声を掛けて来た。


 「何でしょうか?」


 「こんな状況で聞くのも何だが……嘘偽り無く、正直に答えてくれ……お前は“アイラ”か? それとも“マイコ”か?」


 「…………」


 「フォルスさん、それはもう済んだ話ですよ。アイラさんは「大丈夫です」……アイラさん?」


 「リーマさん、私なら大丈夫です」


 その時、アイラは全てを悟った様な表情を浮かべる。そして縛られながらも、リーマとフォルスの方に体の向きを変える。


 「私は……私は“石田舞子”……真緒と同じ……異世界からやって来た」


 「!!?」

自分の事を石田舞子と名乗るアイラ。

いったい何がどうなっているのか。

次回、舞子から語られる衝撃の事実!!

次回もお楽しみに!!

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