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理想郷の主

遂に理想郷の真実を知った真緒達、果たして理想郷の主が誰なのか突き止められるのだろうか!?

 「……戻って来たね」


 アレリテとの話を終え、真緒達は再び奇妙な館に戻って来た。


 「まさかまた、この館に足を踏み入れる事になるだなんて……」


 「オラ……何だが怖いだぁ……」


 「そんな弱音を吐いている暇は無いぞ。明日までにこの理想郷を作り出した主を探し出さなければ、お前はこの世界に取り込まれ、永遠に元の世界には帰って来られなくなってしまう」


 「わ、分がっでいるだぁ……理想郷の主を探じ出じで、ぞの給水袋に入っでいる水を掛げれば、オラは元の世界に帰れるんだぁ」


 「給水袋に入っている水の量は約二杯分……つまり最低でも一回しか間違えれない。何とか、一回目で理想郷の主を探し出せれば良いんだけど……」


 「理想郷の主……やっぱりあの家族の内の誰かなのでしょうか?」


 真緒達が思い浮かべる理想郷の主と思える人物は三人。長女の“ソーニョ”、次女の“メユ”、母親の“ソンジュ”。


 「やっぱり、一番怪しいのは長女の“ソーニョ”さんじゃないでしょうか?」


 「オラもぞう思うだぁ。あの人だげ、祖母である“レーヴ”ざんの所に行ぐのを躊躇っでいだだぁ」


 「でもそれは、私達を部屋に残さない為のマナーじゃない?」


 「うっ……確がにぞうだげど……」


 「それじゃあマオさんは、誰が一番怪しいと思うんですか?」


 「うーん…………」


 真緒は顎に手を当てると、考え込んだ。


 「(この理想郷を作り出した原因……恐らく師匠の遺したロストマジックアイテムだと思う。問題は、それを誰が持っているのか……リーマやハナちゃんの言い分を取り入れるのであれば、一番怪しいのは長女であるソーニョさんになる……でも、その妹であるメユちゃんの“舌打ち”……あれは明らかな敵意だった。そうなると一番怪しいのはメユちゃん?)」


 真緒の頭の中では、メユの舌打ちがフラッシュバックしていた。




 「マオおねーちゃんって……本当にエジタスの事が好きだったの?」


 「ねぇ、本当に好きだったの?」


 「えっと…………う、うん……大好き……今でも師匠の事を考えると、胸が苦しくなる……」


 「ふーん………………チッ」




 「(……でもあんな小さな子が本当に理想郷の主なのだろうか? もしかしたら、誰かに命令されて動いているだけなのかもしれない。そうなると一番怪しいのは母親である“ソンジュ”……駄目だ、考えがまとまらない!!)」


 誰もかれもが怪しく思える。情報が少ない現段階で、理想郷の主を完全に特定する事は出来なかった。


 「……現状では何とも言えないかな……フォルスさんはどう思いますか? 誰が一番怪しいと思いますか?」


 「俺か? 俺は……祖母の“レーヴ”が一番怪しいと思っている」


 「「「えっ……えぇえええええ!!?」」」


 フォルスが疑う意外な人物に、三人は思わず驚きの声を上げる。


 「何だ? 何をそんなに驚いている?」


 「いやいや、絶対にあり得ませんよ!!」


 「何故だ?」


 「何故って……あのお婆ちゃんですよ? 寝たきりで……意識も無い……部屋の中には殆ど何も置かれていなかった。そんな人が理想郷の主だとは考えにくいです!!」


 「そうですよ!!」


 「マオぢゃんの言う通りだぁ!!」


 「ふっ……まだまだお前達は頭が固いな」


 「「「えっ?」」」


 レーヴという四人目の存在に対して全否定するマオ、ハナコ、リーマの三人。しかしフォルスは、そんな三人を鼻で笑った。


 「いいか、視点を変えて見るんだ。理想郷の主が望むのは何だ?」


 「それは勿論……自分が幸せになれる世界ですよ」


 「そうだ。そうなると、必然的に理想郷の主は元の世界及び自分自身に不満を抱いている。そうだろう?」


 「そうですよ。だから今この世界で最も幸せに暮らしているあの三人の内、誰かに絞られるんじゃないですか!?」


 「それは真実を隠す為のまやかしだ」


 「どう言う意味ですか?」


 「寝たきりだから違う。意識が無いから違う。部屋には殆ど何も置かれていないから違う。そうした偏見があるからこそ、お前達は他の三人が理想郷の主に違いないと思った。しかし、もしもその寝たきりや意識が無いのが“嘘”だったら?」


 「ま、まさか!?」


 「祖母が寝たきりなんて言う話は全て嘘。本当は起きれる上に意識もハッキリとしている。この理想郷を作り出した主なのさ!!」


 「「「!!!」」」


 一見すると無茶苦茶なフォルスの意見だが、証拠が全く無い現段階で大きな可能性として浮上した。


 「……これで理想郷の主と思われる人物候補は四人に増えた訳ですが……結局の所、誰が理想郷の主なのか全く分からない……」


 「ここまで来たら、直接会って対話して見る他無いな」


 「そうですね……それと無く話を振れば、もしかしたら何か情報が手に入るかもしれませんね」


 「……つまりはこの館に足を踏み入れないと、何も始まらないという事だね」


 「うぅ……緊張じで来だだぁ……」


 上手く探し出せれば、無事に元の世界に帰れる。しかし二回とも間違えてしまえば、元の世界には永遠に帰れない。真緒達の命懸けの戦いが始まろうとしていた。


 「……よし、行くよ」


 意を決して真緒達は、奇妙な館の扉を勢い良く開けるのであった。




***




 「…………静かですね……」


 真緒達が勢い良く扉を開けたが、一向に出迎えが来る気配は無かった。館内は静寂に包まれており、物音一つしなかった。


 「……あのー、すみませーん」


 真緒の声に対して誰も答えず、空しく館内に響き渡る。


 「……留守……なんでしょうか?」


 「いや、それなら扉に鍵が掛けてある筈だろう」


 「!!?」


 その時、真緒の脳裏に嫌な予感が浮かび上がる。


 「…………ちょっと待って……私達、何の躊躇いも無く扉を開けて入ったけど……よく考えたら、普通玄関には鍵を掛けるよね?」


 「「「…………」」」


 真緒の言葉に、一同顔を真っ青にする。


 「それなのに、扉は問題無く開いた……つまりこれは……」


 「「「「罠!!!」」」」


 その瞬間、真緒達が入って来た玄関の扉が独りでに勢い良く閉まった。


 「し、しまった!!」


 事の重大性に気が付いた真緒達だったが、気付くのが遅過ぎた。慌てて閉まった扉を開けようと試みる。


 「駄目だ!! 開かない!!」


 「そんな!!? 私達、閉じ込められてしまったんですか!!?」


 扉は押しても引いても、全く動かなかった。


 「ぢょっど離れでぐれだぁ、オラが破壊ずるだぁ!!」


 マオ、リーマ、フォルスの三人はハナコに言われた通り、少し距離を置く。離れたのを確認したハナコは、脇を閉めて両腕を引く。


 「はぁあああああ!! スキル“インパクト・ベア”!!」


 ハナコが放った渾身の一撃は、扉に見事命中した。その時の衝撃波が、激しい地響きとして真緒達の足まで伝わる。


 「……どうだぁ?」


 しかし、扉は傷一つ付いていなかった。


 「ぞ、ぞんなぁ……」


 「くそっ……どうやら俺達は、まんまと敵の策に嵌まってしまった様だ」


 「なぁに? 今さら気付いたの?」


 「「「「!!?」」」」


 それは四人ではない別の声。真緒達は慌てて声のした方向に顔を向ける。


 「思った通り、鳥人族は鳥頭のおバカさんだった様ね。おーほっほっほっ!!!」


 二階へと続く階段上。そこには高飛車な笑い声を上げる“メユ”の姿があった。手には横長な一冊の本が握られていた。


 「メユちゃん!!? これはいったいどう言う事!?」


 「どう言う事も何も、私はこの館に不法侵入して来た者達を逃がさない様に、閉じ込めただけよ?」


 「勝手に入った事は謝罪します!! だからお願いです、私達をここから出して下さい!!」


 「それは無理な相談ね」


 「どうして!?」


 「だって私……あなた達の事が……大嫌いだからよ!!」


 「「「「!!!」」」」


 この時、真緒達が感じたのは殺意。純粋であり、酷く歪んだ感情。そんな殺意が、メユから強く感じられた。


 「あんた達は私の大切な人を殺した!! そんなあんた達を殺せる絶好の機会、逃す訳が無いでしょう!!?」


 「それじゃあまさか……メユちゃん……あなたが……」


 「えぇそうよ……私が……私こそが、この理想郷の主よ!!!」


 メユはハッキリと、自分が理想郷の主であると言った。真緒達とメユの間に張り詰めた空気が流れる。


 「そうですか……それでメユちゃん……あなたも持っているの? 師匠から……エジタスから手渡されたロストマジックアイテムを……」


 「……気安く……」


 「?」


 「気安く呼び捨てにしてんじゃねぇよぉおおおおおおおおお!!!」


 「「「「!!!」」」」


 「あいつの事を呼び捨てにして良いのは私だけ!! お前みたいなブスじゃねぇんだよぉおおおおおおおお!!!」


 怒り。声を張り上げ、歯を食い縛り、鼻息を荒くしながら、真緒に対して怒りを露にする。


 「あいつを愛しているのは私だけ!! 私だけがあいつの事を心の底から愛しているんだ!! お前みたいな軽い女があいつの事を呼び捨てにするんじゃねぇよ!!!」


 呼吸が激しく乱れる。先程までの可愛らしい少女とは思えない程、血走った眼で真緒を睨み付ける。


 「あいつ……それは師匠の事ですね」


 「はぁ……はぁ……はぁ……えぇ、そうよ。エジタス……あれ程までに素晴らしい男は他にいないわ……当然、私は恋に落ちた。そしてその愛が届いたのか、エジタスは私にこの……“夢の絵本”を渡してくれたの」


 怒り狂うメユだったが、エジタスの話をし始めた途端、まるで清らかで誠実な乙女の様に優しい眼差しと口調に一変した。そして持っていた絵本を丁寧に、そして優しく撫でる。


 「それが……師匠の遺したロストマジックアイテム……」


 「えぇそうよ。この絵本のお陰で、私は私の理想郷を作り出す事が出来た……でも、まだ足りない……」


 そう言うとメユは、静かに夢の絵本を開いた。


 「私の理想とする世界にはまだ程遠い!! あなた達も私の世界に取り込んであげるわ!!」


 「そうはいきません。私達はあなたを倒し、その絵本を回収します!!」


 「うふふ、威勢がいいのね。でも勝てるかしら? あなた達たった四人で、私の理想郷に」


 「やってみないと分かりません」


 「……いいわ、それなら望み通り……ここで始末してあげる!!」


 「皆、メユちゃんを倒して絵本を回収するよ!!」


 「「「おぉ!!!」」」


 そうして、戦いの火蓋が切って落とされるのであった。

理想郷の主はメユだった!?

エジタスの遺したロストマジックアイテム“夢の絵本”

果たしてその能力とは!?

次回、メユとの激しい戦いが繰り広げられます!!

次回もお楽しみに!!

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