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炭鉱内に潜む者

今回 真緒達は炭鉱内に潜む“何か”と遭遇する事となります!!

果たして、炭鉱内に潜む“何か”とはいったい!?

 ショウの後に続き、疫病を含んだ深い霧を晴らした村の中へと、足を踏み入れた真緒達。


 「こ、これは……」


 そこで目にした光景は、この世の物とは思えない程に惨たらしかった。村人と思われる人々が倒れており、全身真っ黒に変色していた。


 「酷過ぎます……」


 全身真っ黒に変色している村人達は、各々が悲痛の表情を浮かべており、ある者は、死から逃れようとしたのか、喉に掻きむしった後が生々しく残っている。またある者は最後の時を悟ったのか、恋人と思われる人物と強く抱き締め合いながら生き絶えている。そしてある者は子供だけでも守ろうとしたのか、体全体を使って包み込む様にして、庇う努力をしたのが見受けられた。


 「……こいつらも不運だったな……いつも通りの生活を送っていただけなのに……まさか死ぬ事になるだなんてな……」


 「不運どころの話じゃありませんよ。悲劇ですよ……こんなの……」


 奥へと進むにつれ、村人の数は多くなっていく。数が多くなる中で、いくつかの共通点が見受けられた。一つ目は、皆死ぬ直前に悲痛の表情を浮かべている。二つ目は、死後何日も経過しているのにも関わらず、死体はどれも腐っていない。三つ目は、村人達は皆余す所無く全身真っ黒に変色しており、口の中や歯など細かい所まで黒く変色していた。


 「しかし……どうしてここまで黒く変色しているんだ?」


 純粋な疑問を抱いたフォルスは、近くにあった死体を念入りに調べようと、手を伸ばす。


 「おい、下手に触らない方が良いぞ。空気中の疫病は一時的に消毒出来たが、死体に染み込んだ疫病までは消毒仕切れていない。少しでも触れれば、あっという間に感染するぜ」


 「!!!」


 ショウの警告に、慌てて伸ばしていた手を引っ込め、慌てて死体から遠ざかる。


 「それにしても、まさか炎が弱点だったなんて……思いもしませんでしたよ」


 「単純過ぎると思ったか? 難しく考えるのも良いが、物事って言うのは元を辿れば単純明快な物が多い。例えばこの世界、今でこそ多種多様な種族が存在しているが、元を辿れば人間という種族と、魔族という種族の二種類しかいなかった……それが、より個性を強調するとして多くの種族に分けられる様になった……全く、その個性の強調のせいで俺達“ドワーフ”は、蔑まされているって言うのによ……」


 「…………」


 ドワーフは、主に炭鉱で石炭や鉱石などを掘り出し、それらを加工して武器や防具を生み出している。しかし周囲の者達からすれば、暗い穴蔵に住む薄気味悪い連中という印象しか抱かれず、他の種族と比べても決して良いとは言い切れない。そんな個性の偏見に対して、真緒はエジタスの言葉を思い返していた。それはいつだったか、まだエジタスが真緒達と供に旅をしていた頃の話。




***



 

 『マオさん……私はね、個性という物に疑問を抱いているんですよ~』


 『疑問……ですか?』


 『力が強い、足が速い、頭が良いなど……こうしたプラスの個性に対して、人々は良い印象を抱きます。しかし一方で目が見えない、耳が聞こえない、喋れないなど……こうしたマイナスの個性に対して、人々は悪い印象を抱きます。蔑み、同情、偏見……他の人と少し異なるだけで、何故否定されなければいけないのか……もしかしたら、その人にしか出来ない特別な何かがあるかもしれない……しかし残念ながら人は、一度定着した固定概念を捨てる事が出来ません。例えその人にしか出来ない何かを見つけたとしても、それは“常人と比べれば凄い”という見方であり、結果的にその人を蔑み、同情し、偏見の眼差しで見ていたという事になります。人は、一度定着した固定概念を破壊しない限り、永遠に個性を認めないでしょう……』


 『…………』


 『……な~んて、そう言う私自身が固定概念に縛られているんですけどね~。マオさんも、固定概念に縛られない様に気を付けて下さいね~』


 『あ、あはは……分かりました……』




***



 

 「……ん? 何だあれ?」


 「どうかしましたか?」


 しばらくの間、真緒達は村の中を歩いていたが、不意にショウが何かを発見し、小走りで向かって行く。そんなショウに対して、真緒達は後を追い掛ける。そしてショウは、ある死体の前で立ち止まった。


 「おい、これ見て見ろ」


 そう言って指差した死体は、他の村人達の死体とは少し異なっていた。黒く変色していたが、見るからに高価そうな全身鎧に身を包み、側で散乱していた剣や盾には見た事の無い紋章が刻み込まれていた。紋章には不気味な笑みを浮かべている仮面が縦半分、もう片方には骸骨が描かれていた。


 「前来た時には、こんな死体は無かった。つまりここ最近、誰かが出入りしていたという事だ」


 「マオさん、この紋章って……」


 「うん、恐らくは“ヘッラアーデ”の関係者だと思う」


 「何だ? あんたらこれが誰だか知っているのか?」


 「いえ、直接的な知り合いでは無いんですが……まぁ、その……ちょっと訳ありでして……」


 「ふーん……まぁ、あんた達は俺達の命の恩人だ。これ以上、余計な詮索はしない。先を急ごう、問題の炭鉱はもうすぐだ」


 何かしら事情があるのだなと、深くは追及せず、ショウは真緒達を炭鉱前まで案内するのであった。




***




 「……着いたぜ、ここが俺達の仕事場だった炭鉱だ」


 ショウの案内の下、真緒達は目的の炭鉱前に辿り着いた。大きく広がった入口に、炭鉱内は村に充満していた霧よりも、更に濃い霧で満たされており、まともに先が見えなかった。また入口付近では、先程のヘッラアーデと思われる死体と同じ死体が転がっていた。


 「ここまで辿り着いていたのか……」


 「でも、何だか入って行くというよりは、逃げ出している様に見えるんですが?」


 リーマの言う通り、炭鉱の入口付近で転がっている死体の殆どは、村の入口に向けて必死に手を伸ばしている者が、多く見受けられた。


 「この霧に対して逃げ出したのか……それとも……」


 「さてと、この霧も手早く消毒するとするかな」


 「あっ、私も手伝います!! こう見えても私、魔法が扱えるんです。勿論、炎属性の魔法も扱えますよ」


 明確な答えが見つからないまま、ショウが炭鉱内に充満している疫病を含んだ濃い霧を消し飛ばそうとする。そんなショウを少しでも手伝おうと、リーマが手伝いを申し出る。


 「そうだったのか。それじゃあ、一緒に手伝ってくれ」


 そう言うとリーマとショウの二人は、深い霧が充満している炭鉱の入口前に立ち、ショウは酒ビン、リーマは魔導書を取り出した。


 「タイミングが重要だからな。確り合わせてくれよ?」


 「分かりました。いつでも準備万端です」


 「よし行くぞ……せーの!!」


 「“ファイアーブレス”!!」


 「“フレイムテンペスト”!!」


 ショウの魔法とリーマの魔法が、炭鉱内に充満している疫病を含んだ霧を消し飛ばした。


 「ふぅ……こんなにMPを使ったのは久し振りだ……もうこれ以上は出せそうに無いな……手伝ってくれてありがとうな。お陰で助かった」


 「いえ、私も役に立てて嬉しいです」


 深い霧を消し飛ばした真緒達は、意気揚々と炭鉱内へと突き進んで行く。




***




 「……段々と暗くなって来ましたね……」


 奥へと進むにつれ、光が失われ闇が広がっていく。自身の足音が、炭鉱内に反響して響き渡る。


 「……この先だ……この先で俺達は、あの奇妙な現象に襲われたんだ……」


 そう言いながら、ショウが指差す方向には何もおらず、闇だけが広がっていた。


 「なぁ、教えてくれ。お前達はかなり早い段階で、あの疫病を消毒する方法を見つけていた。それなのに何故、未だにピッケルを回収出来ていないんだ?」


 「……そうだな、もう話すべきだな。あんたの言う通り、俺達はかなり早い段階で、疫病を消毒する方法を見つけた。勿論、直ぐ様この炭鉱内に入って行ったさ……だが、そこで俺達は見ちまったんだ……」


 「見た? いったい何「……グォオオオオオ」……!!?」


 その時、ここにいる全員がハッキリと耳にした。何者かの唸り声を。


 「な、何だ今のは!?」


 「き、来たぞ!!」


 「「「「!!?」」」」


 真緒達の目の前に現れたのは、二つの黄色い球体だった。球体には黒い円状の線が描かれており、その中央には黒い点があった。それぞれ球体は不規則に動いており、まるで意思を持った生き物の様だった。


 「な、何ですかあれ!!?」


 「あれだ!! 俺達が話した不気味な奴だ!!」


 「うぅ、ギョロギョロ動いで気持ぢ悪いだぁ」


 「くそっ!! こう真っ暗だと、完全な姿を確認する事が出来ない!! せめてもう少し明るければ……!!」


 「それなら、私に任せて下さい!! “ライト”!!」


 そう言うと真緒は、手を前に突き出して魔法を唱える。すると掌から小さく輝く光の玉が作り出された。それにより、炭鉱内が全体的に明るくなり、奥の暗闇で蠢いていた者の存在が明らかとなった。


 「ぞ、ぞんな……あれは……まざが!?」


 「今日という日ほど、自分の目を疑いたくなりましたよ……」


 「おい……嘘だろ……これで“四度目”だぞ……」


 四つん這いの姿勢、しかしそれはあまりにも不自然な姿勢であり、漢字で表すと“土”という様な姿勢をしていた。体よりも細長い手足、かくばった肘が頭よりも高い箇所に存在していた。鱗は無く、伸びきったダルンダルンの皮膚。尻尾も見当たらない。目はまるでカメレオンの様に突き出ており、口からは細長い舌と疫病を含んでいるであろう霧状の息を吐いていた。頭に生えている角に付けられた金色の腕輪。その腕輪の中央に取り付けられている赤いひし形の宝石が妖しく光輝き、非常に良く目立つ。全く条件に当て嵌まらないその容姿だが、その存在が放つ圧倒的威圧感は、真緒達の感覚を強く刺激して、忌まわしき記憶を甦らせる。忘れたくても忘れられない。その生物は紛れも無い…………。


 「“ドラゴン”だ…………」


 「キシャラブラァアアアアア!!!」


 真緒達は再び、あの時と同じ恐怖と絶望を味わう事となった。

炭鉱内に潜む者……それは紛れも無い“ドラゴン”だった。

次回 真緒パーティー VS 厄災龍(前編)

次回もお楽しみに!!

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