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寄って集って

ショウの秘密を見破った真緒。

しかし事態は、思わぬ方向へと向かって行く……。

 「お、おい、何だよあれ!? ショウのロングコートが剥ぎ取られたと思ったら、中にショウそっくりな奴が二人も出て来たぞ!?」


 「いや、それよりもあいつら三頭身だぞ!! まさか人間じゃ無かったのか!?」


 一部始終を見ていた周りの人達は、ショウを肩車していた二人の登場に驚きを隠せなかった。


 「小娘が……いつから俺達の秘密に気が付いた?」


 周囲が驚きで困惑する中、肩車していた二人がショウを地面に下ろす。そしてロングコートを剥ぎ取った真緒に、ショウが睨み付けながら問い掛けた。


 「ずっと不思議でした。背丈の合わないロングコート……初めは懐に酒ビンを隠す為かなと思っていましたが、それならわざわざ背丈の合わないロングコートを着る必要は無い」


 「ほぉー、それだけで俺の秘密を見破ったのか?」


 「いえ、それだけではありません。疑問を持った私が、このロングコートを通り過ぎるあなたの真横から剥ぎ取ろうとしたあの時、物理法則を完全に無視した動きを取った。そして更にその行動の後、あなたは何が起こったのか理解出来ていなかった。自分の意思で動いたのなら、理解出来ない訳がありませんからね。以上の点から、私はあなたが実は一人では無く、複数人いるのではないかと考えました」


 「はぁー、やっぱりそこか……“弟達”が機転を利かせてくれたのに……酔ってたせいで、つい口が滑って怒鳴っちまった……」


 「兄ちゃん……ごめん……」


 「俺達がもっと上手く動けていれば……」


 ショウが頭を掻きながら溜め息を付くと、先程まで肩車をしていたショウそっくりな男性二人が、酷く落ち込みながらショウに謝る。


 「気にするな。そろそろ俺も酒を控えないとな。飲み過ぎはいけねぇや」


 そんな二人の男性に、ショウは慰める様に柔らかい言葉を掛け、自分にも非がある事を認めた。すると、そんな三人を見かねたフォルスが口を開く。


 「成る程。その身長に老け顔……お前達は“ドワーフ”だな?」


 「へぇー、あんた詳しいんだな」


 「ドワーフ? フォルスさん、何ですかそれ?」


 「そうか、真緒は知らないか。まぁ、無理も無い。ドワーフは小人族の一種でな、高度な鍛冶や工芸技能を持つとされており、外観は男女共に背丈が低いものの力強く屈強で、特に男性はその多くが長い髭を蓄えている」


 「でもその殆どのドワーフは、背丈が低いという外観にコンプレックスを抱いていて、普段は炭鉱や洞窟なんかに住んでいて、人前には滅多に姿を現さないと言われているんです」


 フォルスの説明に、リーマも一緒に介入して来た。


 「その通り。まぁ、バレちゃ仕方が無い……改めて自己紹介させて貰うぜ。俺はドワーフのショウ、そして後ろにいる二人は俺の可愛い弟、“タール”と“コール”だ」


 名前を呼ばれたタールとコールの二人は、仲良く頭を下げて挨拶をする。


 「へぇー、そうなんですか……あれ、人前には滅多に姿を現さないって言ってましたけど……」


 「堂々と人前に出ているな……」


 「あぁ……まぁ、何だ……色々あってな……」


 「色々?」


 「それは……「おい!!」……?」


 ショウが事情を説明しようとしたその時、周りにいた見物人の一人が大声を上げて、横槍を入れる。


 「いったいどうなってるんだよ!?」


 「どうって……つまり要約するとだな……ここにいるショウはドワーフで、その身長を誤魔化す為に弟のタール、コールの二人と一緒に協力し合っていたって事だ」


 未だ、状況を理解出来ていない周囲の人達に、フォルスが分かりやすく要点だけをまとめて説明した。


 「はぁ!? つまり今までずっと俺達を騙して来たって事か!?」


 「騙して来たって……まぁ、そう言う事になるのかな?」


 少しずつ理解し始める中、見物人の一人が怒りを露にしながら、騙して来たのか問い掛ける。その問いに対して、フォルスは首を傾げるも、見方によれば騙していたのかもしれないと告げる。


 「この嘘つき野郎!! 俺達を騙しやがって!!」


 「そうよ!! よくも私達の信頼を踏みにじってくれたわね!!」


 「この責任、どう片付けるつもりだ!?」


 「あ、あの皆さん……別にそこまで怒らなくても……」


 ショウが皆を騙していた。その事実によって、周囲の人達は罵倒や暴言を吐き始めた。そのあまりの怒りに、真緒が何とか宥めようとする。


 「そこまでだと!? 俺はな、あいつのせいで今まで散々大損して来たんだよ!!」


 「お、大損って……」


 「ショウはね、あたしが大金を賭けた相手を意図も簡単に倒したんだよ!! そのせいであたしは借金まみれ……今まで騙して来たって事は、あの時の勝負も騙していたって事になる。あの時賭けた金を返して貰わないと気が済まないよ!!」


 「そうだ!! 金を返せ!!」


 「返せ!! 返せ!! 返せ!!」


 「「「返せ!! 返せ!! 返せ!!」」」


 「「「…………」」」


 鳴り響く“返せ”の声。騙して来たのは事実である為にショウ、タール、コールの三人は何も言い返せず、黙り込んでしまった。


 「責任取って死ねよ!!」


 「「「!!?」」」


 見物人の一人が、とんでも無い事を言い出した。ショウ達も思わず驚きの表情を浮かべる。


 「おぉ、そうだ!! 死んで償え!!」


 「死ーね、死ーね、死ーね」


 「「「死ーね、死ーね、死ーね」」」


 「「「…………」」」


 “返せ”の声から“死ね”の声。周囲の人達は、手拍子をしながらショウ達に向けて繰り返し要求する。


 「おいおい……どんどんエスカレートして行ってるぞ!?」


 「ど、どうしましょうマオさん……マオさん?」


 「…………」


 最早、手の付けられない事態に陥り、困惑するリーマとフォルス。そんな中、真緒だけが無言で騒ぎ立てる人達の下へと向かう。そして…………。


 「死ーね、死ーね、しー……へぶっ!!?」


 “死ね”と騒ぎ立てる切っ掛けを作った見物人の一人を殴り飛ばした。真緒に殴り飛ばされ、空中を二回転した後、重力に従って地面に勢い良く落ちた。


 「「「…………」」」


 突然の出来事に、周囲の人達は固まってしまった。それにより“死ね”の声は止まり、静寂が流れる。


 「……いい加減にして下さい!!」


 そんな静寂の中、真緒は声を荒げる。


 「皆で寄って集って虐めて……恥ずかしく無いんですか!?」


 「マオ……」


 「マオさん……」


 久し振りに見せる真緒の怒りに、フォルスとリーマは一年前、聖一達に見せた時の事を思い出していた。


 「い、虐めるって……俺達は只、正義の裁きを……」


 「正義!? これの何処が正義なんですか!? 何も言い返せない相手に対して、大人数で罵倒して暴言を吐く……こんなの正義でも何でもありません!!」


 「で、でもそいつらは私達を騙して、賭けたお金を奪ったのよ!!」


 「だったら、素直に返せと言えば良いじゃないですか!! どうして大人数で言う必要があるんですか!!?」


 「そ、それは…………」


 「それにお金を返して欲しいだけなら、どうして“死ね”なんて酷い言葉が出るんですか!!? 全く関係がありませんよね!!」


 「だ、だからその責任を取って貰おうと……」


 「死ぬ事が責任を取る事なんですか!!? 死んだら終わりなんですよ!! それ以上は何も無い!! あなた達がやっているのは正義でも何でも無い!! 言葉による刃物で傷付ける“殺人”だ!!!」


 「……嬢ちゃん……」


 真緒は、涙を流しながら訴え掛ける。そんな必死な訴えに、ショウ達の心に暖かな光が宿る。


 「マオ……」


 「フォルスさん……」


 「よく頑張った。後は任せてくれ」


 泣き疲れてしまったのか。フォルスが側に寄った途端、真緒はフォルスの胸にもたれ掛かる様に眠ってしまった。そんな真緒を、フォルスはギュッと強く抱き締める。


 「お前達の言い分はよく分かった。確かにショウの嘘で騙された人もいるだろう。そこでどうだ? お前達が騙されて失った金をショウ達に支払わせるという事で、今まで騙した責任を取るというのは?」


 「…………ま、まぁ……俺は賭けた金さえ戻ってくれば……なぁ?」


 「え、えぇ……別に本気で死んで欲しいなんて思っていなかったわ……本当よ」


 フォルスの提案により、周囲の人達は納得する様に頷き始める。


 「お前達も、それで良いか?」


 「あぁ、死ぬよりは全財産失った方がマシだ……それにしても、この嬢ちゃんには大きな借りが出来ちまったな……ちゃんと返せるかな……」


 「大丈夫さ。ここにいる連中よりは、ずっと良心的な筈だ」


 「そうだな……嬢ちゃん……ありがとうな……俺達を救ってくれて……」


 ショウ、タール、コールの三人は、寝息を立てている真緒の手を確りと握り締め、お礼を言うのであった。















 「あぁ、それと言い忘れていたが……もし万が一、騙されてもいないのに金を要求して来る奴がいたら……容赦無く、この俺が叩き潰すからな」


 「「「「「…………」」」」」


 フォルスの脅し文句が利いたのか、騙されたとして金の要求に集まっていた3/4の人間が、その場から急ぎ足で立ち去って行った。

真緒の怒りに救われたショウ達。

次回 真緒に救われたショウ達の口から、ある事実が伝えられる。

次回もお楽しみに!!

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