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魔王軍新四天王

お待たせしました。

今回、ヘッラアーデ13支部の脱出に成功した真緒達の視点に戻ります。

 見事、ヘッラアーデ13支部からの脱出に成功した真緒達は、安全に話せる場所を求めて、昔フォルスが真緒達と出会う前、独り暮らしをしていた古い一軒家に避難していた。


 「……ここなら、しばらくの間は大丈夫だろう」


 そう言いながらフォルスは、窓から外の様子を伺っていた。周りには真緒、ハナコ、リーマ、サタニア、そしてエレットの全員が揃っていた。


 「外から見れば、ここは古ぼけた廃屋だ。まさか、こんな所に身を隠しているだなんて、誰も思わない」


 フォルスの自信に満ちた発言に、その場の全員が安堵の表情を浮かべる。


 「あのサタニアさん、改めて御礼を言わせて下さい。私達を助けて頂いて……」


 「何度も言うけど、御礼ならエレットに言ってよ。エレットがいなかったら、今頃は全身鎧のあいつに殺られていたと思うよ」


 「そんな大袈裟よ。私は、魔王軍の新四天王としての役割を果たしただけ……だから、御礼なんか言わなくていいから、私そう言うの嫌いなの」


 「えっ、あ、はい……すみません……」


 「謝ってどうするのよ」


 「す、すみません……あっ」


 永遠と続くループ会話に、呆れた様子を見せるエレット。そんなエレットをじっと見つめるフォルス。


 「うん? フォルスざん、どうじだだぁ?」


 「いや……“サキュバス”なんて初めて見るから、物珍しさでつい……な……」


 「あら、そうなの? それじゃあ、後でお姉さんと二人っきりで、“楽しい”事をしない?」


 サキュバス。夢魔とも呼ばれる女性型の悪魔であり、種族、年齢問わず男性を誘惑するのを生き甲斐としている。また、対象の男性が最も望む姿になる事が出来る。素の姿でもかなり美しく、その人間離れした魅惑の体は多くの男性を虜にした。特に人間の男性達からは絶大な人気を誇っている。しかし人間に好かれている事が災いし、魔族の中では肩身の狭い想いをしていると噂されている。


 「悪いな。そう言う行為は、心から愛する人だけって決めているんだ」


 「大丈夫よ。私と一晩過ごすだけで、心から愛する様になるから」


 そう言うとエレットは、フォルスに向けて胸を強調する姿勢を取り、誘惑し始めた。


 「そうか……だとしても、俺は同族としか恋愛はしないと決めているんだ」


 積極的に迫るエレットに対して、フォルスは冷静に素っ気ない態度を取って見せる。


 「ふーん、そうなんだ。私好みの顔だったんだけど……残念」


 そんなフォルスの素っ気ない態度に、本気だったかどうか分からないが、エレットは残念そうに話を切り上げた。


 「そろそろ本題に入らせてくれ。何故お前達が、このカルド王国にいるんだ? 建設途中の新しい魔王城はどうした?」


 「あぁ、それなら大丈夫。新しい魔王城の建設は、クロウトの指揮で順調に進んでいるよ。僕達がこのカルド王国に来たのは、亡くなったエジタスを信仰する宗教団体について、情報を手に入れる為だよ」


 「そっか、やっぱりサタニアも師匠の事を信仰するヘッラアーデの事が気になっていたんだね」


 「うん、僕達がヘッラアーデの存在を知ったのは約半年前、新しい魔王城に向けて建設を進めていると、“ヘッラアーデに入会しないか”って、突然勧誘を受けたんだ」


 「勧誘に来たのは同じ魔族だったわ。同じ種族なら誘いを受けると思ったのかしらね」


 「勿論、僕は断ったよ。エジタスの事を信仰するのは同意だけど、そのやり方が気に食わない。国を乗っ取るヘッラアーデのやり方じゃ、エジタスが望んだ“笑顔の絶えない世界”は訪れない。だけどそれ以前に、僕も知らないエジタスの一面をヘッラアーデの奴等は知っていると思うと、無償に腹が立つ……」


 「サ、サタニア……」


 ヘッラアーデのやり方が気に食わないというのは建前、その本音はエジタスの事をもっと知りたいという欲望から来る物だった。


 「それで僕達は、出来る限りの人材を使ってヘッラアーデに関する情報を掻き集める事にしたんだ。カルド王国に来たのも、ヘッラアーデの情報収集の為だよ」


 「でもまさか、その途中でマオ達を見掛けるとは思わなかったよ。マオ達が指輪を嵌めたと思ったら、急に容姿が変化してびっくりしたよ。そうしたらそのまま、ヘッラアーデが潜伏していると考えていた教会に入って行くから、急いでエレットと合流して、後を追い掛けたんだ」


 意を決して、ヘッラアーデに潜入しようとしたあの時、その後ろで真緒達の事を見つめていた影の正体は、サタニアだった。


 「そうだったのか。これで何故、カルド王国にいるのか納得出来たよ」


 「それは良かった。そうだ皆にも、これまで集めた情報を教えるよ」


 サタニア達が集めた情報。それは大まかに三つに分かれる情報だった。




 1.ヘッラアーデは裏の顔。その表にはボランティア団体のレッマイルの存在が必ずある。


 2.ヘッラアーデには大司教のエイリスの他、それを下で支える幹部と呼ばれる存在が三人いる。


 3.ヘッラアーデは、生前にエジタスが遺したとされるロストマジックアイテムを集めようとしている。




 「……まぁ、取り敢えずはこんな所かな。もっと情報を掻き集めたかったけど、思った以上にガードが厳しくて……特に、大司教エイリスの情報は全くと言って手に入らなかった」


 「大司教エイリス……いったい何者何でしょうか?」


 「分からない……でも、これだけは言える。大司教エイリスは、エジタスの関係者……もしくは……」


 「“もしくは”?」


 「……いや、忘れて。あくまで僕の予想だから、証拠がある訳じゃ無い。結局の所、まだまだ情報不足なんだよね」


 何かを言い掛けるサタニアだったが、予想の段階と言って口を閉ざした。


 「それともう一つ、聞きたい事がある」


 「ん、何かな?」


 「ヘッラアーデ13支部を脱出した時、エレットが言っていたが、魔王軍の“新”四天王とはいったい何だ?」


 「あぁ、それか……あの戦いで、魔王軍は壊滅状態……四天王もシーラとゴルガの二人だけになっちゃった……でもだからって、いつまでも四天王の席を二つも空けておく訳にはいかない。それでせめて一つだけでも入れようと……」


 「私が空いた四天王の席に収まったって訳よ」


 「成る程、指揮を高めるという意味でも、上に立つ人間を一人でも増やしておこうという事か」


 「ざっくり言うとそうなるね。エレットは、魔族の中でもかなり個性が強くて、ユニーク魔法として“雷魔法”が扱えるんだ」


 「へぇー、ユニーク魔法……ちょっと鑑定しても良いですか?」


 「えぇ、良いわよ。でも初めてだから、優しくしてね」


 「分かりました。スキル“鑑定”」


 エレットの許可を貰い、真緒はエレットに向けて鑑定のスキルを発動した。



 

エレット Lv48


種族 サキュバス

年齢 秘密❤️

性別 女

職業 夢魔


HP 1200/1200

MP 850/850


STR 140

DEX 300

VIT 240

AGI 1600

INT 480

MND 450

LUK 100


スキル

誘惑


魔法

雷魔法


称号

男を手玉に取る女




 「これは……中々強いステータスですね。特にAGI、俊敏性がかなり高いです」


 「当然よ。これでも四天王を名乗っているんだから、それなりの強さを持ってないと、他の魔族から笑い者にされちゃうわ」


 「一つだけでも……って言っていましたけど、残り一つは空席のままなんですか?」


 「うん、本当は二つとも入れちゃおうと思っていたんだけど……やっぱりどうしても、あの席は“アルシア”の者だって……そう思ってしまうんだ……」


 「サタニア……」


 失うのは辛い事だ。それは人でも物でも同じ事が言える。どれだけ長く接していたかで、失った時の悲しみは決まる。サタニアにとってアルシアは、大切な家族の一人だった。それを失った悲しみは、一年程度では癒せない。

 

 「ご、ごめん。こんな話しちゃって……取り敢えず夜が明けたら僕達は、魔王城の方に戻るよ。エジタスの事は一秒でも早く知りたいけど、魔王城の再建も重要だからね」


 「そっか……うん、それなら私達も夜が明けたら、今までの出来事をリリヤ女王に報告しに行くよ」


 「マオ……これは僕の個人的な考えだけど、ヘッラアーデがエジタスのロストマジックアイテムを集めようとしているのは、この世界を“笑顔の絶えない世界”にする為じゃ無い気がする」


 「どう言う事?」


 言葉の意図が読み取れず、真緒はサタニアに聞き返した。


 「つまり、ヘッラアーデがエジタスのロストマジックアイテムを集めようとしているのは、この世界を“笑顔の絶えない世界”にする為じゃ無く、もっと別の為の様な気がするんだ……」


 「別の為……」


 「まぁ、ハッキリとした証拠がある訳じゃ無い。あくまで僕の個人的な考えだから、あまり深くは受け取らないで」


 ヘッラアーデ、エイリス、エジタスのロストマジックアイテム。様々な情報が飛び交う現状に、多くの考えが浮かび上がる。しかし、それが結果的に謎を深めるのであった。

今までの出来事と、サタニアから得た情報をリリヤ女王に伝える為、真緒達はカルド城に戻る。

次回、第一章 新たなる旅立ち 完結となります。

次回もお楽しみに!!

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