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2話

簡潔に書くのって難しいですね…


---夢を見ていた気がする。

ぼんやりとした意識の中、目を覚ました亮介はそんなことを考えていた。


---なんだか懐かしい、そう子供の頃の夢だ。


昔から取り立てて勉強ができるわけではなかったが、なにかと頭の回転はよく要領のいい子供ではあった。

そして何より半端ではなく口が達者な母に育てられたおかげか、よく口が回った。

同級生だけでなく教師とでも議論で負ける気はしなかった。


そうして頭の回転と口のうまさでそれなりに楽しい学生生活をすごし、

天職とも言える今の仕事につき、それなりに成功していた。


そのはずだったのだ。


「いやいや…ありえないだろ。」


ではそんな俺が今どこにいるかといえば、--森。

見渡す限り木々が生い茂り、出口も見えない、控えめに言っても密林と形容できる森の中にいたのである。


「俺、都内を車で走ってたよな…?それで事故に巻き込まれて…その後どうなったんだ?」


事故の影響か記憶がうまく思い出せないが、少なくともあの規模の事故だ、

死んでいないのなら病院の集中治療室にでもいないとおかしい。


「…でも現実問題今俺は森の中、それも人類未踏のジャングルレベルの森にいるわけだ。」


どうしてここにいるのか今考えても仕方がない。ひとまずそれは置いておこう。

そんなことよりもいま必要なのは現状の正確な把握だろう。


改めて自分の格好を見てみる。

事故に遭った時と同じスリーピースのスーツに革靴、そしてビジネスバッグ。

不思議と事故の形跡は全くなく、朝袖を通した時と同じきれいな状態だがそこは無視する。


「明らかにアウトドアに向いている格好ではないよなぁ…」


こんな格好で森に入るのは自殺志願者だけであろう、と言い切れる程にはこの場にそぐわない格好である。


「あとはカバンの中身だが…」


続けて傍らに落ちていたビジネスバッグを開けてみる。

社会に出た際に就職祝いで両親が買ってくれたもので、もう5年以上使っているが、

本革を使用しているだけあってへたらず、むしろ味の出てきたお気に入りのバッグである。

…そんなどうでもいい事をひとり考えながら中身を確認していく。


「書類と眠気覚ましのガムに財布、携帯もあるが…やっぱり電波は入らないか。あとはエチケット用品が数点と…。絶望的に役立つものがないな。」


正直詰んでいる。この装備でこんな深い森を彷徨ったらどう考えても死ぬ。

…まあそもそも今生きているのがまず不思議ではあるのだが。


「ひとまず喫緊の課題は食料と水か…。ここがどのあたりかもわからない以上、救助を待つにしても水場は必須だよな。よし、ひとまず川か池でもないか探してみよう。」


そう一人宣言して俺は森を探索するのだった。


------------


どれくらい歩いただろうか。

高い樹に邪魔され太陽の位置が正確にわからないため、

時間の感覚が掴みづらいが、おそらく2時間近くは経っているだろう。


その間水場は見つけられていないが、一つ分かったことがある。

植生から見て、どう考えてもここが、少なくとも日本ではないということだ。

屋久杉と見紛うばかりの大木が、日本の森にこんなたくさん生えていてたまるか。


「ここが日本ではないとすると、どこの国かはわからないがいよいよまずいな…。救助を待つ選択肢はなくなるわけか…。」


職業柄、比較的常に冷静に物事を考え客観的に事実を見る癖がついていたため、

ここまで取り乱さずにやってこれたが、さすがにこれは限界が近い。


「これ以上歩き回っても余計焦ってしまうだけだな…、一度休憩して方針を考えなおそう…。」


そう言って近くの木の根に腰かけ改めて周囲を見渡してみる。


「やはり何度見ても不思議だよな…。東京のコンクリートジャングルにいたはずが、気づけば本物のジャングルにいるんだもんな……ん?」


そんなくだらない事を一人寂しく呟いていると、どこからか音がしたような気がした。


「今のは…人の声か!?」


そう叫ぶと一目散に声の聞こえてきたと思われる方向へ駆け出した。

普段の俺であればこの状況で人の声がすれば警戒して一旦は様子を見ていただろうが、自分で思っていた以上に精神的に参っていたようである。


「おーい!誰かいるのか!?」


そう叫びながら駆けていく先、聞こえてくる声は大きくなり、もはや人の存在は疑いようもなかった。


「よかった、これで助かるぞ!おーい…え?」


喜び勇んで声の主の下へ飛び出した俺だが、目に飛び込んできたのは想像だにしない光景だった。

確かに人はいた。いたにはいたのだが…なぜ甲冑を着て剣を振っているんだ…?

その後ろではローブを着て杖を持った男が何かを呟いたかと思えば突然火の玉が飛び出している…。

そしてなにより、その二人が相対している相手。大きな体に豚のような顔。あれは…


「どう考えても…、オークだよな…」


とても現実離れした、まるでファンタジー映画のような光景を見てしまい、

俺は今まで考えないようにしていた可能性にたどり着いてしまう。

突然のジャングル、日本では…いや今思えば地球上では見たことのない植生、そして何より目の前の怪物との戦闘。


「俺は、異世界に来ていたのか…!」

ようやく第一異世界人に遭遇できました…!!

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