1話
初めまして。jiroと申します。
初めての投稿ですので読みづらい点も多いと思いますが、
何卒お付き合いくださいませ。
「あー、これは助からないよな」
薄れ行く意識の中、そう呟いた言葉がどこか他人事のように聞こえる。
俺、一之瀬亮介はきっとこのまま死ぬのだろう。
「まったく…まぁ、これも運命か…」
---30分前---
「おいおい…急いでるのに渋滞かよ…」
都内の人材会社で転職コンサルタント、世間で言うところのヘッドハンターをしている俺は、
長い時間かけて口説き落とした候補者との打ち合わせに向かうため車を走らせていた。
この案件を決めれば今月も売上成績1位、ひいては年間通算12回目の1位である。
この仕事をする以上、1位と2位には大きな差がある。ハンドルを握る手に自然と力が入るのも仕方ない事だろう。
だがそんな気持ちと裏腹に道路は渋滞し、なかなか前に進めずにいた。
「まずいな…間に合うかこれ…」
そんな事を呟いている間にも後ろにさらに1台車は増え、渋滞をより長いものにしていた。
「今日は絶対遅刻できな…うぉ!?」
苛立ちを独り言で紛らわそうとまた口を開いた瞬間、凄まじい衝撃が俺を襲った。
一瞬何が起こったか理解できなかったが、十分車間距離を取っていたはずの前方車両が視界を塞ぎ、状況が嫌でも理解できた。
後ろの車両が突っ込んできたのだ。
所謂、玉突き事故である。
---そして現在---
事故の衝撃を物語るかのように、車のフロント部分は大破し俺の足を押し潰していた。
ぐしゃぐしゃになった足からはもう痛みはなく、ただ止めどなく真っ赤な血が流れ続けていた。
「運命とはいえ…死にたくねえよな…お袋、先に逝っちまってごめんな…」
誰も聞くものはいないが、初めて自然と弱音が口をついた。
そんな最期の言葉すらかき消すようにどこかで爆発音が聞こえる。
大方どこかの車のガソリンが漏れ出てそれに引火したのだろう。
「ああ…来世って本当にあるのかな…。あるとしたら…そうだな、どうせなら自分で会社を作ろう…。それで俺がヘッドハントしてきた最高のメンバーだけで一旗揚げるんだ…そうしよう…それがいい…」
誰に言うわけでもなく、意識ももうはっきりとしていないが漠然とした夢が口をつく。
どうせ死ぬならもっとはやく実行しておけばよかった…まあもう遅い訳だが…
---その願い、聞き届けましょう---
ふと、どこからか声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
ただ、もし本当に誰か聞いててくれたなら…頼む…俺にもう一度チャンスを…
そんな事を心の中で呟いた直後、目の前が何も見えなくなるほどの光と熱、そして爆音…。
俺は吹き付ける熱風の中、意識を手放した。