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小学三年生の夏 不思議な男の子

 突然の声に私の身体がビクッと跳ねる。

 いやまさか、私以外に誰かいるとは思わなかったし、誰かの存在を認めた時初めてその危険さに気が付いた。


 声がしたお堂の脇に目をやると、そこには白いTシャツに短パン姿の同い年位の男の子がいた。

 髪の毛は光沢のある灰色で、顔色もひと夏が過ぎ去ろうという時期なのに、日焼け一つしていない病人のような青白さだった。

 とても、不思議な雰囲気の男の子。それが第一印象だった。


「ねえ、うるさいんだけど。なんでこんなとこで泣いてんの?」


 その子は唖然とする私を見つめてぶっきら棒にそう言った。


「あ、ごめんなさい」


「いや、ごめんなさいじゃなくて。なんでこんなとこで泣いてんのって」


「別に、いいでしょ? ここは……きみだけの場所って訳じゃないんだから」


 その子のつっけんどんな態度に、なんだか私も少しイラッとして言い返す。


「きみは立入禁止の看板が見えなかったのかな?」


「そんなこと言ったら、君だってそうじゃない。言ってることがムジュンしてるわ」


「ぼくはいいんだよ」


「なんでよ」


「ここに住んでいるから」


「ここに?」


 私は改めてお堂を眺めた。襖には幾つもの穴が空いているし、木の柱は所々朽ちている。一切灯りも点っていないし、人が住んでいるとは思えない廃屋のようだった。


「嘘が下手ね。こんな所に住めるわけないじゃない」


「そのお堂にじゃないよ。あっちあっち」


「あっち?」


 男の子が指差した方はお堂の裏手。そちら側は奥がどうなっているのか見通せない一層茂った林だった。見るからに不気味な雰囲気を醸し出しているが、この奥にこの子の家があるということだろうか?


「行ってみるかい?」


「……いい」


「ははっ! 別に怖がることないよ」


「怖がってないわよ!」


 図星を突かれてしまい、つい大きな声で否定してしまう。男の子はわざとらしく耳を塞ぐ仕草をしてみせる。


「まあいいや。君は? どこから来たの?」


「お祭り」

 

 聞き流すような態度の男の子にムッとしながら、私は素っ気なく答えた。


「オマツリ? オマツリって何?」


「君、お祭りも知らないの? 変なの」


 ここぞとばかりに私は反撃を開始する。邪魔者扱いされて、馬鹿にされたままでいられない。

 学校生活でもこのくらい積極的に負けん気を出せばいいのかもしれいけど……。


「知らないんだから仕方ないだろ? オマツリってなんだい?」


「なんだいって……お祭りはお祭りよ。他に言いようがないわ」


「ふーん、でもまあロクな所じゃなさそうだね。そのオマツリってやつで嫌な事あったから泣いてたんだろ?」


 確かに、お祭りで嫌な事があったのは事実だけど、お祭りそのものがロクなものじゃないと決めつけられるのはいい気がしなかった。

 私がイジワルして説明していないせいでもあるけど。


「お祭り自体が悪いわけじゃないわ。お祭りはとても楽しい所よ」


「へぇ~、どう楽しいのか聞かせてよ」


 興味津々といった様子で男の子は聞いてきた。いつの間にか私の隣に腰掛けている。


 私は説明するより実際に行ったほうが早いと思い、提案した。


「じゃあ、まだやってるから一緒に行ってみる? すぐ近くだよ」


「いや、いい」


 あっさり拒否された。私の厚意をあっさり踏みにじった。

 何なの、ワクワクしてるかと思えば冷めた態度で。変な子。


「行くのはいいからさ、楽しい話を聞かせてよ」


「なんで? もしかして、ここから出ちゃいけないの?」


「まあ、そんなとこかな」


 何だか急にこの男の子が可愛そうに思えてきた。行きたいけれど行ってはいけない理由があるんだ。だからせめて楽しい話を聞きたい。


 あ、そうだ。


「ちょっと待っててくれる? すぐ戻ってくるから」


「え? あ、うん」


 私は返事も聞かずに駆け出して、行々神社を後にした。

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